2003年発表の4th。David BottrillとJagori Tannaがプロデュース。 『水銀、肉、夢』。何とも謎めいたタイトルである。バンドによると"とくに意味はない"そうだが、 これらの単語には"Quicksilver=移り気(な人)"、"Meat=内容、実質"という意味もあるようだ。 また、"meat world"で"現実の世界"という意味になるらしい。そうすると、本作のタイトルは"移り気(な人)、現実、夢"となり、 1つの言葉と考えると"移り気な現実の夢"となる。 サウンドは、前作以上に打ち込みが多用されている。また、曲調がガラリと変わった。 ニュー・メタル/へヴィ・ロックが全盛であること、そしてメイン・ソングライターであるJ.TannaのFavorite Bandが Toolであることがサウンドに色濃く反映されている。Davidをプロデューサーに起用したのもその為だろう。 おかげでサウンドは分厚くへヴィになった。しかし、彼らのトレードマークであったラテン・パーカッションが 完全に姿を消し、曲調は全体的にへヴィなリフを中心に静と動のコントラストで統一され、Tool×Rushという印象だ。 それは4曲目「God Rocket (Into The Heart Of Las Vegas)」、初の組曲形式である9曲目「Meat Dreams」に象徴される。 ただ、シングル・カットされた「Like The Sun」、「No Coma」のようなキャッチーな曲もある。 前作まで弾きまくりだったギターは、あくまで曲を構成する一要素に止まっており、ソロも減った。 バンド・アンサンブルもプログレ・メタル的。これはライヴでの自由度の違いに現れており、本作の曲はライヴでもほぼCD通りに演奏されている。 Brianの歌唱力は、前作と比べて飛躍的に向上しており、本作に大きく貢献している。なお、本編終了後、シークレット・トラック「A Moment Of Exteme Violence」が始まる。"曲"というより"ギター・プレイ"という感じだ。 歌詞は、前作までと比較すると分かりやすくなっているが、やはり難解だ。本作を代表する曲である「God Rocket (Into The Heart Of Las Vegas)」は 反戦ソングともとれる内容で、抽象的な世界を描いてきた彼らにしては珍しい。しかし、世界観が全く変わってしまったわけではない。 「Like The Sun」は"死"を連想させるが、1st「Levitate」、2nd「One More Astronaut」に通じる面もある。 そのつながりで考えれば、「No Coma」やラストの「Passenger」は3rdの「When Did You Get Back From Mars?」に通じるともとれる。 また、彼らのバンド名の変遷("I am me"→"IME"→"I Mother Earth")の噂(あくまでも、噂)を知っているファンなら、 3曲目「I Is Us」に注目せざるを得ないだろう。もちろん"アイ・イズ・アス"="アイ・マザー・アース"である。 歌詞の内容から一部で"セックス・ソングだ"と言われたが、彼らと音楽の関係を歌ったものだろう。 以上のことから、彼らの歌詞の世界は基本的に変わっていないと考えることも出来る。 本作は、これまでの彼らのスタイルとは明らかに違うが、力強く迫力ある曲調は説得力十分。 とくに「Like The Sun」は日本のHR/HMファンに幅広くアピールするはずだ。