"WOLF'S LAIR ABYSS"で、強力極まりない新生MAYHEMに狂喜したものの、次のアレで肩すかしを食らった感がある。しかし本作はまさしく"WOLF'S~"のフルアルバム完成形とも言える内容であり、Euronymous生存時に迫る名作だと思う。 轟音一直線だった"WOLF'S~"に比べれば、ギターのフレーズが随分と動きを見せるようになり、Euronymousとは違うスタイルながら、メタリックな側面を取り戻したように感じる。その上で、特に前半部、尋常ではないテンションの高さを見せ付ける。クリアトーンのギターのキメが非常に印象的な"Whore"は新たな代表曲だと思うし、ティンパニ(?)が不可思議な荘厳さを醸しだす"You Must Fall"なども強烈に耳に残る。気だるくも重々しいスローナンバーも、この異形の世界をさらに不気味に見せることに一役買っている。 正直、後半ややダレる感があるのが残念だが、それでも、ようやく納得の行くアルバムを作ってくれた。その感慨深さは変わらない。現在のMAYHEMを終わったバンド扱いする向きもやや見受けられるが、僕は断固支持する。
De Mystellies~の頃と比べて邪悪度、悪魔度は減ったが、このアルバムでは病的な世界観、陰鬱な雰囲気が強い、という印象がある。どこかのインタビューでこのアルバムができるまでの経緯を見たが、メンバー間の確執、薬物依存との戦いなどを経てようやく出来上がった作品のようだ。 その薬物依存による戦いの最中に作られた、ということはまずアートワークに表れている。これはキマイラを描写したものだろうが、薬物による幻覚が生み出した怪物をそのままアートワーク化したものとも思える。アルバムの雰囲気を如実に伝える秀逸なジャケである。 サウンドは名作と名高い1stとは違う。しかし、ここのアルバムに表れているサウンドは紛うことなきMAYHEMのそれである。危険で聴き手を圧倒するサウンド、ブラックメタルの真価をまざまざとみせつけるかの質の高い楽曲は1stに勝るとも劣らない。ただ表現方法が違うというだけなのだが。 肝心の楽曲の方は、1曲目のWHOREからやってくれたな、と思った。イントロからヘルハマーの超絶ドラムが炸裂し、邪悪極まりないギターのリフがそこにのる。聴き手を一気に弱悪な世界へとひきずりこみ、MANIACの激烈なデスボイスが炸裂する。これぞMAYHEMである。いきなり魅了された。4曲目のMY DEATHの重く陰鬱な感じや5曲目のYou must fallの厭世的で荘厳かつ悪魔的なサウンドも好きだ。後半少しだけだれるが、アルバム一枚聞き終えたときの満足感は最近のブラックメタルにはなかったものだと確信できる。 あと、このアルバムのサウンドには前々作にはなかった、アジアの密教系の雰囲気も感じられる。特に5曲目の間奏部分とか。 ・・・・まあ個人的には1stの方がすきなのだが、そのアルバムとほぼ同じくらい自分の中でもヘビロテになっている。ブラックメタルファンはマストバイ!