88年10月発表の4th。 このアルバムは「曰くつき」である。マネージメントからLAメタル的な売れ線になるよう圧力を掛けられながら、スタジオで8か月も缶詰にさせられたアルバム。 事実、出てきた内容はメロディ面が強化されていて、発売当初は批判が強かったようだ。 デヴィッド自身も、過去を振り返って前作3rdを持ち上げることはあってもこの4thを自負するような事はない。 …だが現在はファンの間で人気があるようなのだ。 この捻じれの理由はハッキリしていて、再発に際して曲順を大幅に入れ替えると同時に、新曲をボーナストラックとして、しかもアルバム中盤に配したからだろう。 その結果、ソフトな曲が出現するのはアルバム後半からとなり、リスナーが「売れ線になったなぁ」と断じることのないような工夫になっている。 しかし音楽的には素晴らしい内容だ。 確かにキャッチーかつポップになった部分もあるのだが質は高いし、キーボードがキラキラ・プレイもするようになったお陰で表現に幅も出ている。 ボーカルもここに来てほぼ完成された模様で、下手などとは全く思わない。本作から入門するのもアリなのではないだろうか? なんといっても1曲目「The Burning of Rome」はバンド史の中でもトップクラスの名曲。2曲目「Let it Roar」は唯一アグレッシヴな曲で前作に通じる。 儚く、かつ華麗に疾走する「Lion in Winter」も1曲目に肉薄する名曲だ。 キャッチー系の曲では「On the Wings of the Night」「Chains of Fire」が特に素晴らしいと思う。 ちなみにベースのジョー・オライリーが病気だったということで、デヴィッドがキーボード・ベースを使用、エドワードも一部でベースを弾いている。 さて、オリジナルの曲順は 1. On the Wings of the Night 2. Seventeen 3. Tragedy 4. Stay on Top (URIAH HEEPのカヴァー) 5. Chains of Fire 6. The Burning of Rome 7. Let It Roar 8. Lion in Winter (前奏として「Prelude to Evening」後奏として「Stranger at the Gate」が収録されるもマネージメントの介入により不表記 ) 9. Cry Forever 10. We Are Eternal A面がキャッチー志向で、B面の頭3曲がメタル、次がバラードでラストは遠大なムードのメロディアス・ロックだ。 97年の再発では新録の4曲が追加された。「Perfect Mantions」はデヴィッド大のお気に入りの、壮大なバラード。 ダークなSE「Coils of the Surpent」に続く「Serpent's Kiss」は中盤の加速パートは素晴らしいものの、メインのミドルテンポの部分はやや退屈だ。 そして残り1曲はJUDAS PRIESTの「Desert Plains」のカヴァー。 2008年の再発にはさらに2曲追加。1曲は96年のJUDAS PRIESTのトリビュート・アルバムにも提供した「Screaming for Vengeance」のカヴァーだが、同じテイクかは不明。 もう1曲は80年代に女性スラッシュバンドORIGINAL SINに提供した「The Curse」のリメイク。暴力的なまでのスピード感が良い。
前作の手応えを受け手なのか今作は音楽性をより大衆的なものに寄せてきた。とは言え、このバンドらしい情緒のあるパワフルなメロディは健在。前半と後半でイメージの変更を図るなど工夫を凝らしている。④はユーライアヒープも取り上げた曲があるのが、その証拠だろう。デヴィッド・デファイスがシンガーとして一本立ちしたと言える安定したパフォーマンスも功を奏し、非常にバランスの良いサウンドへと変換している。 自動登録にはないが私が知っているヴァージョンは6曲目にThe Burning of Rome (Cry for Pompeii)という楽曲があり、これが実にメロディックかつパワフルなナンバーであり、このバンドの代名詞のようなワクワクドキドキとさせる勇壮さのあるドラマティックな一曲であり、これがあるとないとで大違いだ。 今作は実にややこやしい一枚として知られる。それは90年代に再発されたものは、大幅に楽曲を追加収録、曲順も大胆に変えオリジナル盤とはガラリと試聴感が変る。どれを知っているかで評価も大きく変るだろうが、欧州風味も取り入れたアメリカンパワーメタラーの実力の程に驚かされる。 誰かの批評を永遠に上書きできない偏屈野郎の意見など、もはやイチミリも介入できないクオリティ。一瞬にして溶岩の餌食となったポンペイの悲劇を歌い上げるThe Burning of Rome (Cry for Pompeii)、パワフルな疾走ナンバー Let It Roarという流れに、今作の真の姿を垣間見るだろう。 楽曲のバラエティが広がっているので守備範囲は広い。1988年という時代をタップリと楽しめる一枚になっているだろう。 ワタクシは欠点よりも長所を愛でるタイプなので、今作は今でも年一は通して聴く一枚ですね。