これはルネッサンスが『お伽噺』を発表後の1977年10月14日、ロンドンはロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴであり、ロイヤル・フィルとの共演を収めたものである。どうやらこのホールは8000人を収容できる会場らしい。セットリストは以下の通り。 ①Prologue (orchestral instrumental by Royal Philharmonic Orchestra) ②Can You Understand ③Carpet Of The Sun ④Can You Hear Me ⑤Song Of Scheherazade ⑥Running Hard ⑦Midas Man ⑧Mother Russia ⑨Touching Once (Is So Hard To Keep) ⑩Ashes Are Burning まずはオーケストラのみによる「Prologue」が演奏される。ちなみにこのロイヤル・フィルは1946年に創立され、ケンペ、ドラティ、プレヴィン、アシュケナージなどが首席指揮者・音楽監督を歴任している。ロンドン五大オーケストラの一つであり、クラシックだけでなくポップスや映画音楽も手がける一流の名門オーケストラである。 が!!!、 ここでの演奏はちょっと微妙だぞ!。ちょっと~、あんた何やってんのよ!!!、と言いたくなるぐらいどっちつかずな演奏なのだ。もしかしたらこれはアレンジが悪いのかもしれない。勢いはないし、迫力はないし、オーケストレーションも悪い。酷いとまでは言わないが、オリジナルの方が100倍良いぞ(ピアノがあればもう少し良かったと思うが・・・)。 そんな感じで始まったライヴだが、つづいて本物のルネッサンスが出てくると出だしの転倒も何のその、神聖なる素晴らしいショウの幕が切って落とされる。「Can You Understand」の銅鑼とピアノが聴こえて来るともう興奮でいても立ってもいられなくなる!。そういう意味では先のオーケストラのオープニングは「期待を助長させる」という点で効果はあるのかもしれない(笑)。でもそれを抜きにしてもこの演奏は素晴らしい。特にアニーさんの喉がこの日は絶好調である。アニーさんが良いということは、料理で言えば水が良いということである。綺麗な水で作った料理は自然とおいしい。艶があり、透き通るようで、飲んでみるとほのかに甘い。そんな清流のような声である。 ここで音質についてだが、なかなか良いと思う。カーネギー盤に比べるとかなり近いところで演奏している感じがするし、BBC盤と比べても迫力が勝る。さすがキング・ビスケットである。ただ・・チリチリ・・ジー・・というノイズが一貫して入っている。これはMCやピアノ一本のなどの静かな部分で目立つ。 閑話休題、次は「Carpet Of The Sun」だ。いつも通りほのぼのとした暖かい演奏だ。コケティッシュなアニーさんの歌唱が冴える。オーケストラもでしゃばらず無難に演奏していて良し。続く「Can You Hear Me」もいい演奏だ。ただキャンプが中間部で遊びすぎか?(笑)。 そして前半部の締めくくりは大作の「Song Of Scheherazade」。オケが入っているだけあってアルバムの再現が出来ている・・・と思いきや、またもやこいつらがトチる。あるはずのメロディーを奏でないのだ!!!。特に9分5秒あたりからの金管のメロディーを省いたのは頂けない。ふさぎこむようなピアノから一転、ここが中盤で一番美しく盛り上がるところなのに・・・ちょっとあんたたち、ちゃんと演奏しなさいよ!!!、と言いたくなる。だがそれ以外は良い演奏だ。特にアニーさんの最後の高音が凄い。凄すぎる。高すぎ。血管ブチ切れるんじゃないかと、こっちが心配するほどだ。 続いてCD2枚目に入りまず「Running Hard」。素晴らしく勢いがあります。そ~りゃ!!おめぇらもっと飛ばせ飛ばせ~!!パラリラパラリラ~♪、とリズム隊が獅子奮迅。楽しげでよろしい!。「Midas Man」はアニーさんの曲紹介の後ろで既にストロークを始めているダンフォードがニクイ。「Mother Russia」はいつも通りの演奏かなぁ。無論良い演奏ですが。 儲けものは次の「Touching Once」。ここではオケが意外に良い仕事をしている。クライマックスには原曲にはないトランペット(だと思う)のソロがあったりして、もともと少し冗長で退屈感のあるこの曲に華を添えている。それにしてもこの日のアニーさんは俄然調子が良い。完璧と言っても良いのでは。どうやらライナーにもあるようにこのホールで演奏することは彼等の夢だったようだし、意気込みも半端じゃなかったのだろう。後にアニーさんはこの日をルネッサンス最高のライヴと評している。 そして最後、さぁ来ました「Ashes Are Burning」!!!。 今回は28分にも及びます。This is a title track from our second album・・・とアニーさんが言った瞬間に会場からは大歓声。くおーーっ!!!。アドレナリンがぁぁぁああ!!!。 出だしはアルバムよりは軽快な感じで始まり、2コーラス終えるとすぐさま恒例のジャム大会へ。タウト→サリヴァン→アニーさん→キャンプの順にソロを取っていく。ダンフォードは目立ったソロは取らないが、粋な感じでアルペジオやフラメンコ風のジャガジャ~ン!を差し込む。ダンフォードの親父!、あんた最高にイカしてるぜ!。 そして曲に戻った後、演奏は全休止・・・。 そう、あの感動のクライマックスが始まるのだ。 聴こえて来るのはタウトのキーボードだが、いつものチャーチオルガンの音色ではなくちょっとシンセっぽいのが惜しい。しかしアニーさんのヴォーカルが入ればもうそんなことはどうでも良い!。アニーさんの御声はいつにも増して清々しく、透明で、大きな悲しみと燃え上がるような希望を抱いている。意識を吸い取るが如く、酩酊感が全身を駆け巡る。それは吹きすさぶ風のようであり、同時に一輪の可憐な野花のようである。あぁ・・、もうどうなってしまっても良い。ここにいて、あなたのお声が聞けるのなら・・・
・・というわけでショウのクライマックスは実に感動的でありました。 全体的に言ってもこの日のパフォーマンスは文句ないし、音質も迫力があって良い。ブックレットもライナーが付いていて、未発表写真も僅かながら掲載されている。特にお姉風アニーさんの笑顔とドラムを叩くサリヴァンの写真が良い。サリヴァンってこんなに男前だったんだね。何故あなたが『燃ゆる灰』の表ジャケに写っているのかが今やっと理解できました(笑)。とにかくこれはカーネギーと並ぶ彼らの代表的ライヴ作品としてこれからもずっと評価され続けていくことだろう。 因みにこの後、「Prologue」の別の日のライヴと「You」という未発表曲が収録されています。が、この「Prologue」、実は流れてくるのは「A Song For All Seasons」のライヴなのだ!。何故かと思って調べてみると、どうやら初版はミスか何かがあったようで間違ってこの曲が収録された模様。第2版からはちゃんと「Prologue」が収録されているようだ。でも『DAY OF THE DREAMER』を持っていないおいらにとってはちょっと嬉しい(笑)。「You」は癒しの楽曲。雪山の裾野を飛んでいるような気持の良い楽曲だ。