これ凄いです。 何処かの宣伝文句に「奇跡の大名作」と称されてましたけど、真しく奇跡の大名作です。 ドイツのブラックメタルNargarothのおそらく3rd。 歌詞カードに書かれている年表を見る限りでは、 90年代初期中期あたりからにかけて製作されている曲が多い様です。 タイトルを直訳すると「ブラックメタルは戦争」ですか? このアルバムの前に出ているデモ音源「Fuck Off Nowadays Black Metal」, 今回の収録曲「The Day Burzum Killed Mayhem」,「Possessed By Black Fucking Metal」, 多く含まれるカバー曲が90年代初期のバンド(Azhubham Haani,Lord Foul,Root,Moonblood)の 曲である事からしても、現在(当時)のブラックメタルへの痛烈な風刺を込めた作品なんでしょうね。 悲鳴とハウリングのノイズの中から「Black Metal Ist Krieg!」と絶叫し疾走する時点で既に真っ黒な雰囲気。
簡単に分類するならジリジリとした音質の比較的メロディック&オールドスクールな曲が揃った プリミティブブラックと言った所でしょうか。Voはいつも通りの邪悪ながなり絶叫系なのですが叙情的な 曲では付加的に前に出し過ぎず、また逆に、邪悪な疾走チューンでは喚き散らすが如く歌い上げてます。 プリミティブとは言え各々の曲はジリジリなギターリフが目立つ比較的硬質なサウンドのものから、 薄ら籠り気味に内に響く感じのもの等多少ながらも音質が違うのですが、それも曲の雰囲気を活かす 為に配慮されてあるものだと思います。楽曲としては2nd以前のJudas Iscariot風味な禁欲的スタイルの 曲をほぼ中心として、次回作Rx Part IIあたりからの雰囲気を仄かに匂わす曲も織り込まれています。 Nargarothと言えば4thで完成させた、一つのリフでゆっくり延々と…のイメージがあるんですが、 今回はアジテーションなリフでファストに突っ走る曲、ミドルで淡々と頑なに突き進む曲、 スローにじっくりと叙情味を伝えにくる曲、とバリエーション豊富です。 メロディックな曲と頑固なオールドスクールの曲がアルバムの中で良く調和しているので 聴いていてクドさが無く、その辺りのバランス感覚は秀でているのですが、トレモロリフが しっかり主張している曲を取り入れている所はやはりNargarothと言った感じですね。 また、今回もSEの使い方が上手いです。Euronymous殺傷事件のニュース音源まで使っている様子。 このアルバムの展開の多様性に実に貢献してます。NargarothはSEによる雰囲気作りが巧いです。 そして名盤たるからに当然の事ですが、曲が素晴らしいです。ファストな曲もスローな曲も良いです。 特に15分にも及ぶ名曲「Seven Tears Are Flowing To The River」はこの後のNargarothの 音楽性に繋がっていく上でも、このアルバムの大幹を成す点でも最も重要な曲ではないでしょうか。 悲壮感漂う逞しげなメロディの反復が実に心地良いので冗長にはなりません。 もちろんファストな曲も実に魅力的。真っ黒な空気が充満した#2,6は後のNargarothの作品からは感じ得ない、 叙情味を伴った狂気が傲然と放たれてます。と思いきやダラダラと安っぽいオールドスクールな楽曲群も素晴しい。 豊富な曲調によってアルバム全体が起伏を持っているので聴いていて面白く、実に味わい深い作りです。