コアなTYGERS OF PAN TANGファンや、NWOBHMファンにこのアルバムがいいって言ったら怒られそうなポップなアルバム。TYGERS OF PAN TANGじゃないと思って聞いたほうがいいかも。当時(80年代中ごろ)のイギリスのハードロックバンドって、TOKYO BLADE除いてみんなポップで、かつ、みんな成功しなかったけど、そんななかの1枚。ちょっとキーボードがうるさいけど、WOMAN IN CAGESとか、タイトルトラックとか結構かっこいい。でもまあ、探し出して買うほどのアルバムでもないけど。
スミマセン、探して買いました。というのも、ずっと以前にSONY MUSIC TVでこの頃のTOPのライヴを観て、タイトル曲と「DESERT OF NO LOVE」がいい曲だな~と思ってたので。確かにポップではあるけど、Ranzzyさんのおっしゃる通り別のバンドですね。でも、ジョン・サイクスに頼っていた頃に比べると楽曲で勝負しようという姿勢が好感度大です。「SPELLBOUND」という名盤を出した後に一気に魅力を失ったTOPの姿を捨てて生まれ変わろうとしたんでしょうね。あの当時の魅力≒ジョン・サイクスみたいなものだったことを考えると、マイケル・シェンカーを失った後のUFOとダブるものがあります。
かつて短期間ではあるがジョン・サイクスが在籍していたことでライトリスナーから注目を浴びたバンド。特にサイクスがWHITESNAKEで成功したあとは、逆輸入状態でこのバンドも再注目を浴びた。しかし、ジョンがいた期間はNWOBHM最盛期、その時期に作られたアルバムがいかにもNWOBHM的な魅力に富んでおり、その立役者がジョンと言われた分けですが、実際、ジョンはバンドに発言権はなくイニシアチブをとれるような立場ではなかった。ましてや、加入直前まで活動していたSTREETFIGHTERではヴォーカル兼ギターで活躍、THIN LIZZY丸出しのローカルバンドで、フィルにソックリな歌い方でリジー節を炸裂していた男、TYGERS OF PAN TANGではゲイリー・ムーア直系のプレイを披露、確かにスピーディーなソロワークには目を見張るが、個性に乏しくギターヒーローとしてはこれからの有望株だったでしょう。 このバンドの首謀者はギターのロブ・ウィアーであり、主導権は彼の手にあった。ジョンは助っ人でありメインソングライターではありません。WHITESNAKEで売れたが為に、再評価された辺りからジョン・サイクスがどうのこうのと言われ出しましたが、嘘ではないが正解ではない。何をしてTYGERS OF PAN TANGなのかで見方は変わりますが、名盤『SPELLBOUND』の方向性はプロデューサーのクリスによる影響も大きいでしょう。サイクスではありません。
1984年にバンドは一旦活動停止。そして今作はレコード会社もアメリカのMCAレコードからイギリスのMusic for Nationsへと変わりました。なにより参加メンバーが大幅に変更、オリジナルドラマーのブライン・ディック、ヴォーカルのジョン・デヴァリルの二人はいるのだが、ベースはサポート、そしてギターは新生コンビに生まれ変わります。しかもメインソングライターがサポートベースのスティーブ・トンプソン(初期NEATレコード関連に携わる人物、RAVENのプロデューサーも務めています)、前作にあたる『THE CAGE』でも顔を出し、バンドを支えていた人物です。ある意味、ポップ化するバンドの手助けをしたわけですが、今作でも彼のコンポーズを頼りに唄モノ路線を強化、主役はシンガーのジョンの歌声であり、彼はポップスからバラードにハードな曲まで難なく歌いこなし、その存在感をより強いモノにしています。バンドとしての顔が益々イケメンのジョン・デヴァリルに移行していますが、新生ギターチームもコンパクトながら印象的なプレイを持ちいり、このメロディアスかつポップなハードサウンドの中でギラリと光を放ちます。