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Scoring a Liminal Phase - Ten Strategies for Postmodern Mysticism

2009年発表の1st。

活動期間は長いものの、フルとしては初の作品みたいですね。
自主制作盤らしいですが、メジャーレーベルからリリースされてるような作品と比較しても全く劣らない、素晴らしいアルバムだと思います。アウトレット品で安価だったのと、アルバムタイトルがなんかお洒落でかっこよかったのでなんとなくレジに持って行ったんですが、本当に大正解でした。

路線は簡単に言うなら、サイバー/インダストリアル要素を含む、知的なアヴァンギャルド・ブラックで、オーケストラルなパートやノイズ/アンビエント、ジャズなどの要素も一部垣間見せる、練り込まれた音…という所ですが、出している雰囲気というか風格が半端ないです。まるで「Antithesis」以降のSECRETS OF THE MOONの威風ある邪悪さと、「Generator」期のABORYMの不穏で頽廃的なムードを足し、後期EMPERORに通じる知性を加えた感じ…というと近いでしょうか。

前述したように楽曲に様々な要素をぶち込んで来るタイプの作風なんですが、根幹のブラックメタルとしての部分がまず素晴らしい。頽廃的なネガティブさがどす黒く、美しく練り込まれたトレモロリフはそれだけで凄みを感じさせるし、音質もしっかり質量感が感じられる、整ったものになっていることもあって、ただ邪悪なだけではない、精神を蝕むかのような存在感のある音になってるんですよね。

展開も打ち込みのリズムを邪悪なリフと合わせたり、サックスも用いたジャジーなパートやエキゾチックなキーボードを挿入したり、唐突に思える部分もありますが、全体を通じて頽廃的な空気感が支配していて、雰囲気が破綻する事はまずありません。むしろブラック特有のどす黒いムードに打ち込みリズムを合わせている所なんかは、まるで破滅し終焉を迎えつつある機械文明を思わせ、雰囲気や頽廃性としてはむしろ濃厚になっていると思う。…この完成度と凝り具合、相当時間を掛けてアルバムを制作したんじゃないでしょうか…。

という訳で、一刻も早くジャンル内で有力なレーベルと契約して、ブラック好きの間にその名を轟かせて欲しいと切に思ってしまう、そんな素晴らしい作品でした。SECRETS OF THE MOONやPORTA NIGRA辺りの知的で頽廃的なブラックが好きであればまず買い。そうでなくても、まずは試してみてほしいところですね。ほんと良いアルバムなので。

Usher-to-the-ETHER ★★★ (2013-07-22 20:52:15)