メロディラインがTOP100などのチャートものの流れを汲んでいるので大衆向けの作品になったなというのが第一印象。多少気になっていた軽薄なシンセはあまり感じられない反面楽曲に占める割合が増えたこと、メタリックな部分を減らしポップでキャッチーな部分を強調したことの二点も本作のポイントと言えるだろう。スクリーマーの交代はそんなに気にならなかったが、大衆向けに走るとヤワになるというこれまで危惧していた部分が露呈しまった。特にDrop Dead CynicalのPVを観たときには痛切に感じた。作品全体について述べるとかつてあったメロデス的な部分は感じられず、ギターソロも全曲にあるわけではないのでやや不満を抱いた。本人曰くこれが新しいAmarantheみたいだが個人的には受け入れられない。マンネリ化防止にはいいが彼らには売れ線ポップスの要素を楽曲に組み込んでほしくないため別の道を探ってもらいたい。
In Flamesもそうだったがこちらも惜しみなく北欧民謡フレーズを惜しみなく使っている。メロデスという言葉や定義がなかった当時、流行に乗らず自らの音楽性を追求した姿勢はチャレンジャーといか言いようがない。デスメタルにしては遅くどちらかと言えばドゥームで、ボーカルはデスとクリーンの両方があり、しかもメロディアスで哀愁たっぷりだ。さらに題材がカレワラなのでますますとっつきにくい。そんな作風だから当然論争も起きたと思う。しかし異色中の異色だからこそ他の追随を許さない孤高の存在となれたのだろう。また2ndで冷たく重い雰囲気を表現できている点も評価すべきだ。
Moi Dix Moisをそのままシンフォブラック化した②でやられた。最初に聴いたアルバムがThornographyだったのでCradle=メロデスという誤った認識があったが本作ではゴシック、メロデスの要素がありながらも基本的にはシンフォブラックなのでこれで初めて彼らの本領を知ることとなった。ダニの声は幅広くかつ病的なので聴いてるだけで気味が悪い。しかしそこが彼らの魅力でありホラーな演出に一役買っている。また曲によっては女性Voも取り入れているので聴き易い仕上がりになっている。
また反省しなければいけないアルバムが増えてしまった。事前にこれはPunish My Heavenのような名曲もなく、中期以降のようにシンセを多用していないという情報を得ていたので中古があっても購入を見送っていた。最近安くなっていたので購入したが、何度でもリピートしたくなった。初期のIn Flames同様トラッドをふんだんに取り入れた美しくも哀しいメロデスが聴ける。とにかく激しさの中の悲しみがひしひしと伝わり、胸が締め付けられそうだ。どの曲も一切の無駄を削りキラーチューンが選べないほど駄作がない。私の中では北欧叙情メロデスの最重要名盤の一枚となりそうだ。ホント誤った判断をしないですんだなと思うばかりです。