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1. Usher-to-the-ETHER ★★ (2014-08-22 23:48:27)

つい先日(今週の頭)発売されたSF小説。

同作者の「地球移動作戦」の前日譚に当たる話で、宇宙技術に革新をもたらした装置「ピアノ・ドライブ」の製作者である、結城ぴあのという人物の物語。ちなみに「地球~」のストーリーを踏まえていないと意味不明になる箇所とかは特にないので、そちらを読んでなくても問題なく楽しめます。新刊と繋がりがあるという事で「地球~」を同時購入した人は、むしろ先にこっちを読むのもアリかも。「地球~」の冒頭はある意味盛大な(そして公然の)ネタバレですし。

…実は私は、どうもガチのSF小説って苦手なんですよね。宇宙が舞台となるSFって、例えば宇宙船だとか宇宙ステーションだとかの描写だったり、宇宙の航行を可能にするための理論だったりに文章を割いてる事が多くて、ぶっちゃけ読んでて面倒臭くなっちゃう。映像ならともかく、小説ならもっとドラマ的なものが読みたいな…って感じで。その点、この作品は私でも楽しめるSFでした。そういうガジェットの描写も(大いに)あるんですが、基本的に結城ぴあのがどういう人物で、どのような人生を生きたか、という物語なので。

この作者は、例えば「アイの物語」「去年はいい年になるだろう」のアンドロイドの思考様式だったり、「神は沈黙せず」の超常現象の理由など、一般とは異なる価値観を提供したり、既存の価値観を引っ繰り返す事でセンス・オブ・ワンダーを提供するのが上手いという印象なんですが、この作品でもそれは存分に発揮されてますね。

特に「人間とは異質の考え方をする突然変異体」だと割り切って描かれたという「変なヒロイン」結城ぴあのの他キャラとの対話のシーンはかなり面白かったです。語り手である昴との会話における全く共感できない倫理観だとか、同期アイドルとのボケと突っ込みみたいな会話だとか。トーク番組出演時の「穴に入れるのが目的だ」は危うく吹き出しそうになりましたもん(笑)。あとラストの昴との絡みも好きですね。ああいう行為で心変わりする展開がどれだけ多いか、そしてどれだけ萎えるか…。そのお約束への萎え感情を作者は心底理解していて、アンチテーゼとしてああいうシーンを入れたんじゃないでしょうか。

この小説、作中で展開される理論が難解(東野圭吾氏の「超理系殺人事件」を思い出した)なんですけど、高校の物理や数学で躓いていた私にでも読めるような配慮が成されているのが良いですね。科学的説明の部分を読み飛ばしても支障なく楽しめるように書かれているというか、極端な話、「天才なヒロインが物理法則を覆すような発明をして技術革新を起こした」くらいの認識でも大丈夫な感じ。文章はむしろ読みやすく書かれてますし、理論的な部分が書かれてる事で、分からない人間にも「なんとなく凄そう」というのは伝わりますし(笑)。上手い事ハク付けになってると思う。

…と言っても、話が大きく動き、結城ぴあのが持っている「価値観」の描写が少なくなり、本格的にSF的になる後半部は(自分の好み的に)ちょっと辛い部分があるので、☆は2つ。それにしても、この作者の作品でアイドルを扱うと、毎回ヴァーチャルアイドルがリアルアイドルを駆逐する描写がある気がするなぁ…。そしてヴァーチャルのリアルへの優位性の描き方は毎回なんかズレてると思う。



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