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中山七里
さよならドビュッシー
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1.
Usher-to-the-ETHER
★★★
(2014-08-22 23:50:24)
2010年にハードカバー、翌年に文庫版で発売されたミステリー小説。
中山七里さんの作品はどれも素晴らしいんですが、漫画や映画にもなっているこの作品が一番有名でしょうか。彼の作品ってどれも読者を楽しませることを第一義に置いているかのような、エンターテイメント精神に溢れている事が特徴だと思うんですが、この作品は最も有名にして、最も良くその特徴が表われた本だと思います。
まず第一に特筆したいのは、漫画やライトノベル並に登場人物が「キャラ立ち」していること。大きな壁を乗り越えていく様が胸を打つ主人公を始め、万能に見えて、実はある苦悩を背負っている岬洋介、スピンオフ作品では主人公も張るカミナリ爺さん香月玄太郎、これはどう見てもツンデレな医師の新条など、キャラが良い意味で漫画っぽい。変にリアルに人を描く事でキャラが凡庸になるよりも、思い切った性格付けをしてる辺り、若い作家なのかと思いましたが、実は文壇デビューは48歳のときなのだとか。この瑞々しいエンタメ性と、若い作家にはない小説などを長く読み続けてきた経験が合わされば正に鬼に金棒というやつですね。
そしてストーリーも素晴らしい。なにが素晴らしいかって、この作家の作品の多くは話の中である「どんでん返し」がある事も特徴として挙げられますが、この作品はその「どんでん返し」の内容が、(ネタバレになるので書けませんが)一言で説明できるほどシンプルで分かりやすいことですね。勘の良い人なら読んでる途中で気付きそうですけど、もし気付いたとしてもそこに至るまでのサスペンスなどで十分楽しめます。また、ストーリーにおいて音楽が重要な位置を占めるんですが、その描写と、その描写を通じてのキャラの「凄さ」の描き方が、また良いんですよね。読んでると岬洋介は超人に思えてくるし、何やら凄まじい演奏が繰り広げられている気になってきますもん。ハッタリの利かせ方も随一だと思う。
私はこの人、東野圭吾さんと同じくらい、エンターテイメント作家として優れた人だと思うんですよね。この作品は後にシリーズキャラクターになる登場人物も多いですし、彼の作品の入門編としても良いんじゃないでしょうか。
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