"Spirit of the Air…Remember" 眼に見えぬ大気への願いから始まるこの曲は、アイスキュロスのギリシア悲劇「オレステイア」において、夫(アガメムノン)殺害の罪で実の息子(オレステス)に殺されたアルゴスの王妃、クリュタイムネストラの「魂魄の叫び」です。 死後もなお休まることなき王妃の霊が憑依したような歪みがVO.にあり、少しとっつき悪くも感じられますが、それでも隠れた名曲です。 "Hear Me Cry!(聴け私の叫びを!)"の後すぐさまクリーンなハイトーンが大気の中を荒れ狂うという怒涛の展開にまず殺られ、更に5分~5分30秒経過時点でのピアノの転調は、「哀愁」よりも「哀切」の方が相応しく、ここでもう一度殺られます。 そのピアノをバックに、一転のびやかなデイヴィッド・ディフェイの"Glide down the Stars!"と叫びかける声は、叶えられることのない希求にも思えてくるのです。 (※直訳すると「あの星を引きずり落とせ」になるのですがこれでいいんでしょうか?こんな時国内盤が出ていないのは辛いところです) 「絶対的に正しきヒーロー」の存在しないエピック・メタルを造り上げられたのは、やはり作曲・編曲能力の賜物でしょうか。 壮絶に切ない7分48秒に出会えたことに感謝しています。 ※ゴリャートキンさんの「オレステイア」の御解説は本当に参考になりました。ありがとうございます! 自分もちくま文庫でこの間購入したのですが今日(2010年5月2日)現在、未だ未読状態です(泣)。