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IMINDAIN - And the Living Shall Envy the Dead... ★★★ (2020-08-24 02:06:59)

英国産デスドゥーム2007年作
ギターの質感、ヘヴィさ、適度なテンポ、構築的な楽曲など、ど真ん中のデスドゥーム路線で、音響的にとても聴き応えのあるサウンド。
上手いとは言い切れないが、デスヴォイス、低音クリーンヴォイス、ブラックメタル的ガナリ声などを使い分けるヴォーカルスタイルが
この盤の最大の魅力と言っても過言ではない。素っ頓狂なスクリームヴォイスも登場し、その個性を存分に発揮している。
ザックリ歪んだ重厚なギターでありながら、それに掻き消されることのないタイトなドラムとの対比は素晴らしく、録音状態が素晴らしい。
この作品以降、他バンドとのスプリットやCDr作品などは出ていたが、基本スプリットとCDrはよほど気に入らないとゲットしないので未聴だが
2017年にEPをリリースし、一応ゲットしている。完成度の高い音響とオーソドックスな世界観が魅力的なので、フルレングスアルバムを作ってほしい。


IMINDAIN - The Enemy of Fetters and the Dweller in the Woods ★★★ (2020-08-24 02:27:00)

英国産デスドゥーム2017年作
日本のWeird TruthプロダクションからリリースされたEP。3曲のオリジナル曲とDisembowelmentのカヴァー曲が収録されている。
どちらかというとブラックメタル寄りなギター&ヴォーカルの質感で、仄かにオルガンが入っているところや、適度な湿度が絶妙だ。
重厚な歪みを持つギターだが、録音バランスが素晴らしく、ドラムがクリーンかつタイトに聴こえてくるから、無駄な疲労を伴わない。
基本は淡々としている曲調でありながら、ワリと起伏に富む曲展開をする。淡白さで没入感を誘う類いのサウンドとは一線を画す。
濃い世界観を描き出すモノクロジャケも優秀だ。朽ち果てた石造りっぽい建物の前で髭面の男が黒装束を纏って立っている。
もうね、バランス感覚が絶妙というか、過剰な演出が無くオーソドックスに聴こえるのに、色々な聴かせどころがさりげなく存在するんだよ。
音響的にも楽曲にしても非の打ち所がなく、素晴らしいの一言。
これだけのポテンシャルがあるんだから、フルレングスアルバムを作ってほしいんだが・・・正直EPでは物足りない。


IMMOLATION (2021-09-06 21:34:53)

〉悪い悪魔さん

こんばんわ。そのランキング
初期3作品、最新作、中期の最も邪悪な盤で5位までを占めて、Kingdom of Conspiracyが最下位という
ものすごーぐシックリくる妥当なランキングだと思うよ。
近年のIncantationやMajesty and Decayあたりの濃さは、もうボクにはしんどくてクタクタになるからあまり聴こうとは思わないが
Immolationの作品で、らしさがあって、オールドファンのノスタルジーを抜きにして、上質のクオリティの盤をチョイスするなら
AtonementとMajesty and Decayだと思うよ。


IMMOLATION - Atonement ★★★ (2021-07-17 00:49:49)

米国産デスメタル2017年作
デスメタル全盛期頃にサタニックデス路線を追いかけていると必ず出会うバンド、特にINCANTATIONにハマったボクとしては、そのホンモノ感には一歩足らないが
閉塞的な質感のギターサウンド自体はINCANTATIONに劣らずといった感じで、無機質なこのギターの音像はこの時代では双璧といった印象を持っている。
とはいえ、そもそも米国産はあまりゲットしないので、初期作品以外は所持していない。また、何故か評判のいいKINGDOM OF CONSPIRACY (2013年)は
ボクには全くフィットしない。初期の閉塞感が薄れて、煌びやかになり過ぎな印象で、米国産デスメタルのボク的ランキングはかなり下がってしまった。
が、この作品は、煌びやかな感じが残されているところは仕方ないにしても、初期に感じた魔性・無機質なスタイルが蘇った好盤である。
このバンドはギタリストのRobert Vigna色が強いので、もう一人のギタリストがチェンジしているところがどれほどの影響があるのかわかりづらいが
少なくとも米産デスメタルに疎いボクがこの盤リリース当時に注目せざるを得なかった点は、ギタリストにAlex Bouksが名を連ねているところである。
この人は一時期INCANTATIONを支えたギタリストでもあるが、その固有の魅力が大御所バンドで際立っていたかというと微妙ではある。
このギタリストはGOREAPHOBIAというバンドの創始者であり、ダサさとホンモノ感が紙一重にあったそのB級スタイルにデスメタル愛を注いだ過去がある。
GOREAPHOBIAの底辺の世界観を色濃く感じるTOMBを経て、更にRUINOUS(隠れたオススメ盤)といった古学校愛を強く感じさせるバンドを経て、このIMMOLATIONに
参加しているところは、B級デスメタルフリークとしては、一体どんな音楽性になっているんだろうと興味津々、とてもワクワクするのだ。
アツく語ってみたが、このギタリスト加入で音楽性がAlex Bouks色に変化したかというと、メインのRobert Vignaのアクが強すぎて何とも言えない感じではある。
INCANTATION時代同様に、影の支え役のポジションなのかも知れないが、前作に比べマイナーチェンジ&過去作に若干回帰したスタイルの一旦を担っていると
感じるところがある。このサウンドは初期作品に真性さが加わったと思わせる感触があり、初期IMMOLATIONというよりは初期INCANTATIONのスタイルがツボだった
人のストライクゾーンじゃないかなと思う。


IMMOLATION - Here in After ★★★ (2021-09-05 23:52:53)

米国産デスメタル1996年作
同時期の気持ち悪い旋律を武器に表舞台で活躍するデスメタルと比べて、かなり地味に聴こえるのは、一本調子で展開下手な固有のスタイルのせいだろう。
このサウンドは、印象に残るメロディやキャッチーでドラマチックな展開とか絶妙なギターワークとか、そういった次元で語るサウンドではない。
そういうコマーシャルな茶目っ気を排除したところが大きな魅力で、真っ黒な、閉塞的なギターの重低音とドラム乱打の塊が渦となって襲い掛かる様を
堪能するためのデスメタルだ。濃いアングラ臭を漂わせ、黒い塊となって暴れ回る音像からハーモニクスが飛び道具のように突き刺す、濃厚な魔性が魅力だ。
その作風に惹かれるが、そもそもそういう一本調子な音楽性であるが故に、この作品以降の類似した作風が受け入れられず、また、キャッチーさが加わると
尚更敬遠したくなる。ボクにとっては同時期の同路線INCANTATIONは、より凄みを増して進化していった分、溝を開けられたという印象を持ってしまい
この盤までは愛聴盤だったが、それ以降は離れてしまった。


IN LOVING MEMORY - Negation of Life ★★★ (2020-05-13 02:43:51)

スペイン産ドゥーム寄りHM2011年作
ジャケが微妙で、展開下手な側面が若干あり、卓越した演奏技術でもなく、速弾きのような際立ったギターソロも無いサウンドでありながら
ここ数年、通勤途中のマイカーで一番多く愛聴したのはきっとこの盤だと思う。
ゆったりしたテンポで聴かせるヘヴィメタルにデスヴォイスが乗っかるサウンドなんだけど、最大の魅力はザックリ感が心地よいギターの音である。
SEと空間系エフェクトが素晴らしく、冷たい張り詰めた空気、ヒリヒリした緊張感、そこに響き渡るギターのリフが、かなーりカッコいいのだ。
ザクザクリフと単音ギター、アコギが織りなすサウンドからは、哀愁がほんのり漂う感じで、デスヴォイスがブラッディな感触を思わせる、割と多彩な楽曲群なんだけど
いかんせんコード進行の巧みさがなく展開下手なのが残念。
将来ココが改善されればきっと凄いバンドになると思うんだけど、果たして今も活動してるのかどうか、無名バンドだけにわからないのだ。
ちょっとダメ出ししたが、この音はボクのストライクゾーンど真ん中で、きっとこれからもずっと愛聴するだろうと思う。


IN LOVING MEMORY - The Withering ★★★ (2023-08-12 00:15:41)

スペイン産ドゥーム寄り様式美HM2022作
NEGATION OF LIFE(2011年)から10年、結局この前作の愛聴度は高く10年間頻繁に聴いてきた。
展開下手だなぁと思いつつも、結局その完成された音響の魅力の虜になってしまったワケでして・・。
際立ったハイテクニックや曲展開ではなく、オーソドックスな造りから外れない。とはいえ聴けば一発でこのバンド固有の音だとわかる。
もはや生活の一部と化したこのサウンド、昨年新作が出て狂喜したんですが、デジタルDLは簡単にできても
CDを手に入れるのには相当苦労した。だいたいこのバンド名は検索に引っ掛かりにくく、売ってるショップを探すのが一苦労。
うまく検索したら売ってる場所が見つかるんでしょうが、全世界あらゆるショップを探して、日本に空輸してくれるお店は
カザフスタンのショップ1つだけしか発見できず。初めてカザフスタンのショップで買い物したよ。。。ケースなしで届いたけど。
さて、前作から何が変わった?と言われると、音像そのままに曲の構成がちょっと変わっただけ。芯がぶれないというか、ホント変わらない。
音響は既に完成の領域にあり、変に雰囲気が変わるような音作りをする必要もなく、これでいい。前作と何が違うん?とか思うかもしれないが
ボクとしては100点満点、変に新しい挑戦をせず、延長線上の音楽性でいい。このまま路線変更せず熟練の域に行ってくれればいいんです。
鈍重でジャリジャリの金属が擦れるような重低音、ゆったりとしたテンポ、冷たい湿った空気を漂わせる残響とSE。
聴きようによってはゴシックメタルにも聴こえるしドゥームにも聴こえる丁度中間点を突く適度な陰鬱さを備えてて
真性な根暗サウンドではないところがいい。そして、ゴシックメタルあるあるの仰々しさや女声といったコマーシャル的なものも皆無。
こういう硬派で真面目な、様式美に寄ったミドルテンポメタルは希少価値があるとボクは思うんだよね。ホント無いんだよこういう音。
超オススメですが、デジタルでしかもう発見できません。


IN THE WOODS - Cease the Day ★★★ (2020-05-28 23:12:25)

ノルウェー産ブラック2018年作
初期作のコンピレーションアルバムA Return to the Isle of Menの雰囲気ある作品にハマった当時は
既にバンドは解散しており、特に他の作品を追いかけることもなく、この盤だけが愛聴盤だったが
再結成していることを知り、最近の作品をゲット。ブラックとは言っても、真性な高密度ブラックメタルではなく
ブラックメタル的な要素を含むメタルサウンドといった内容にシフトしている。また、当時も感じられたヴァイキング的
な雰囲気も感じられ、この鹿ジャケのイメージがバッチリとハマる音楽性だ。
クリーンな声とブラック的ガナリ声を使い分け、落ち着いた雰囲気で味のあるサウンドを聴かせてくれる好盤だ。
こういう情緒のある作風がボク自身のツボということなので、刺激の強いブラック派にはオススメしない。


INCANTATION - Profane Nexus ★★★ (2020-05-27 12:44:57)

米国産デスメタル2017年作
最初にこのバンドをココに登録した頃は、濃厚なアングラ臭・クオリティの高さ・知名度の低さで、どことなく自身の独占欲と優越感を感じつつ
濃厚な魔性・背徳感を楽しんでいた。それももう17年前ですか。恐らく今は日本でも超有名バンドになっているんだろう。
デスメタルバンドの知名度が上がってくると、録音のクオリティがアップし、ローファイ感が抜けてしまい、真性さが半減しがちだが
Incantationに限っては、音質向上しようが、有名になろうが、全く動じることなく濃厚なアンダーグラウンド臭が漂う真性さを維持しているから凄い。
昔はギターソロのようなメロディアス・コマーシャルなモノを一切許さず、ブルータルさを前面に出す激しさと、濃厚なドス黒いドロドロ感に圧倒されたが
そのテイストは長きに渡って保たれており、今作ではブルータル一辺倒ではなく、ドゥーミーテイストも盛り込み、より深みを増した印象だ。
よくMorbid Angelと比較されるが、濃さではIncantationに軍配。ただ、ボクはブルータルに攻められるサウンドは近年はかなり疲れるので
あまり聴くことが無くなった。世界観に関しては、Incantationから分裂した、ここのサイトではあまり比較されることがなかったProfanaticaが双璧
と思っており、音響的にはIncantationの方が圧倒的にクオリティが高いが、まだまだ知名度が低く、濃い世界観で、不器用なProfanaticaの方へ
気持ちが傾いているのが正直なところだ。ただ、ドゥーミーな要素が徐々に増えつつあるIncantationもまだまだ追いかけようと思っている。


INCANTATION - Profane Nexus - Incorporeal Despair ★★★ (2020-05-27 12:51:29)

このバンドにしては珍しく、超スローなドゥーム作品で、濃厚な瘴気・腐臭・絶望感が宿っている。
中間にこの曲があることで、作品全体が引き締まり、他のブルータルな作品がより引き立っていると思う。


INCANTATION - Sect of Vile Divinities ★★★ (2020-09-23 01:28:30)

米国産デスメタル2020年作
ボクとしてはもはやこのブルータル度高めのデスメタルはしんどいんですが、近年ドゥーミーなパートを積極的に取り入れていることもあり
一応ゲットしてみたが、手数の多いドラムと真性なデスヴォイス、重厚なギターの怒涛のような真っ黒でドロドロなサウンドに圧倒された。
過去作品よりもドゥーミーなスローパートが増えた分、随分聴き易くはなっているが、アングラ臭のキツい特有の濃さは相変わらず健在だ。
彼らのサウンドは初期は圧倒的な音数とメロディを感じさせない無表情のギターを攻撃的に奏でるところに真性さがあり、更に独特の不協和が
背徳感を醸し出していた。その路線は大きくは変わらないが、近年作品や今作は後者の不協和の魅力をドゥームパートで聴かせるスタイルが
不穏で禁忌に触れたような感触をより強く引き出している。この不協和を生み出すギターの音像が同路線ブルデスに比べてワンランク上の高品質だ。
流石に長年アンダーグラウンドデスの帝王の位置づけにあるバンドだけある。凄まじい負のエネルギーが宿っているね。
しかし、やっぱりボクにはしんどい。疲れてクタクタになる。森林ブラックのブラストはOKでも、デスメタルのブラストはボクには重すぎる。
たぶんボクは頻繁に聴く盤にはならないだろう。しかしデスメタルフリークには猛プッシュしたいハイクオリティなサウンドだ。


INCANTATION - Unholy Deification ★★★ (2023-08-28 12:20:49)

米国産デスメタル2023年作
3年ぶりの新譜、このバンドは既に完成の域にあってもはやゲットしなくても中身がわかる(笑)気がしていたがジャケがいい感じなのでゲット。
相変わらず高い完成度、有名老舗デスメタルで、妥協の時代が無く方向性がブレずに突き進むバンドはコレだけじゃないかな。
ドロリとしたドゥーミー要素、アングラ臭漂う黒い感じは健在。近年は無駄にギターソロを奏でる割合がほんの少し増えた感じはするが許容範囲。
一般デスメタルファンであれば、この盤があればもう、他は無くてもいいんじゃないか、と言っても過言ではない程の安定のクオリティだ。
とはいえ、近作から少しずつ気持ちが離れているのは確かだ。まあバンド発祥ルーツを辿った時、分裂したもう一方のバンドProfanaticaの方が
圧倒的に狂気に満ちており、初期からずっと聴いているボクとしては、どうしてもProfanaticaが比較対象になってしまうからだろう。
音響的にも楽曲的にも完全にIncantationの方が上でデスメタルを純粋に楽しむにはこっちなんだよ?
しかしながら、音響的には圧倒的に溝を開けられた感があるにも関わらず、完全に狂気の世界に身を投じてしまったProfanaticaの存在感が故に
魂が欠ける商業音楽に思えてしまう錯覚に陥ってしまう。実際はそんなことはない、入魂のデスメタルなんだが、ボク的にはそう感じてしまう。
元々米国産にあまり趣きを感じず、オールドスクールデスに一定の無骨さやローファイ録音を求めてしまうボクの性癖も手伝って
恐らくこの盤を聴き続けることは無くなるかなぁ、という予感はしているが・・・。
とダメ出しをしてしまったが、コレはあくまでボク個人的な感じ方なので。ここまでスゴイ完成度を誇るデスメタルはそうそうありません。
なんにしても発売直後にゲットしているんだから、ボクもいろいろ文句を言いながらも結局はこのバンドはチェックしてるんだよ(笑)。


INQUISITION - Ominous Doctrines of the Perpetual Mystical Macrocosm ★★★ (2020-07-31 23:46:24)

米国産ブラックメタル2011年作
当時は何の予備知識も無く、ジャケ背景が宇宙だからという理由のみでゲットした作品だが、かなり面白い盤で結構な回数聴いた。
一応米国産としたが、故郷コロンビアでGuillotina(ギロチン)というスラッシュメタルをやっていたが、米国に移住し現バンド名に改名。
そういう経緯があるが、あまり南米的な異国情緒は感じられない。録音状態が良く音響的にアングラ臭が感じられないものの
長い曲タイトルが示す宗教色の濃い悪魔崇拝的な思想と、バンド名(異端審問)のイメージ通りの珍しいヴォーカルスタイルに真性な濃さがある。
演奏様式はブラックメタルと言えるサウンドだが、ブラストはするものの、シンバルの響きが目立つからか、ブラックメタル的なブラストではなく
デスメタル的に聴こえるのが特徴。また、激しく疾走するところと、じっくりとミドルテンポで聴かせる緩急がある。
一般的には2音で構成するギターリフ部分を、重厚に音を積み重ねて演奏するところが、このサウンドの気持ち悪さを際立たせる。
とても内容の濃いブラックメタルだが、何故か一般的なブラックメタルに聴こえない特殊な、一線を画す音楽性が大きな魅力だ。


INTAGLIO - Ⅱ ★★★ (2022-01-03 00:30:40)

ロシア産メランコリックドゥーム2021年作
恐らく現地で爆発的にコロナウイルスが拡大したことでリリースが1年延期になったんだろう。一昨年には今作に収録されている「The Memory Of Death」が
先行シングルとして発表されたが、それからのスパンが長く随分待たされた感がある。「The Memory Of Death」が結構良作だっただけに、今作は待望の1枚だった。
一昨年はコレではなく処女作のリメイク盤がリリースされ、なんで新作じゃないの?と憤りすら感じた時期はあったが、まあ、リメイク盤で1年間お茶を濁し
やっと昨秋この新作をゲットできた感じだ。前作から実に15年ぶりの新作、セカンドアルバムでシンプルに「Ⅱ」というタイトルである。
フューネラルドゥームに分類されるんだろうが、処女作は重さは控えめで、どちらかというとメランコリーと冷たい空気感を淡々と楽しむ作風だったが、
そのテイストは引き継がれている。楽曲の雰囲気自体は、前作の延長上で劇的な変化は無いが、彼らに求めるサウンドのハードルは余裕でクリアしている。
前作の延長上と感じさせる大きな理由としては、コードワークに特有の癖があり、一聴しただけでINTAGLIOだと判るカラーがあるからだろう。
無駄な音が無く無音との対比を楽しむ感触は、前作同様である。今作は楽曲構成ではなく、バンド編成に大きな変化があり、とても挑戦的だ。
フルート・チェロ・女声が大々的に導入され、元々そんなにヘヴィではなかったギターは更に歪みと残響が浅めになっている。そういう演奏様式だから
チェンバーロックとドゥームの融合といった印象が強く、クラシカル要素が若干増した感じだ。また、前作とリメイク版のモノクロジャケイメージから一転して
色彩豊かな幽玄なジャケに変貌したことで、メランコリーにファンタジーがプラスされた感じがかなりツボにハマる。とりあえずヘヴィさを求めるリスナーには全く不向き。
旋律がキャッチーだがコマーシャルなところが無い。重厚に音が重なることが少なく、必要最小限のハーモニーだが、単純なコード進行をしないので聴き応えがある。
雨の日に薄暗い部屋で、ちょっとメランコリーに浸りたい時に聴きたいサウンドだ。聴いてて全く疲れないのにしっかりドゥームしているところがイイ。オススメ。


INTAGLIO - Intaglio 15th Anniversary Remix ★★★ (2020-12-29 01:45:46)

ロシア産フューネラルドゥーム2020年作
2005年発表の「Intaglio」の再録。原盤は15年前の作品でありながら、フューネラルドゥーム作品中、ボクの順位付けはかなり上位に位置する。
メランコリーを前面に出し、ギタートーンの減衰部分は、ギターの存在感と共にむしろ無音の存在感を感じさせる独創的な作風だ。
スローかつ音を詰め込み過ぎない楽曲のバランスが素晴らしい。また、単調にならない独特なコードワークも魅力、このハーモニーにハマる。
そんな作品の焼き直しだが、ギターの歪み、ドラムのリフなど、若干粗削りだった部分が改善され、間奏部分の尺が変化していたりと
より聴き易くなっている。が、原盤から大きな変化は殆ど無く、15年間聴き続けてきたボクでさえ、よく聴かないと気付かない微妙な変化もある。
何故今更この盤の焼き直しなのかは不明だが、Solitude Productionがこのバンドに力を入れていることは伝わってくる。ちなみに今年は
レーベルの通販サイトで買い物をすると、もれなくこの原盤がオマケでついてくるキャンペーン中で、買い物の度にオマケがついてきて、
ウチには3枚目が届き、15年前にゲットしたものを含め同じ盤が4枚ある。売れ残ってばら撒いているというよりは、タダで配布してでも
聴いてもらいたいという心意気がヒシヒシと伝わってくる。
聴き易く加工したリミックス盤はとても魅力的に聴こえる。しかし、若干無骨さのある原盤もまた魅力的であり、両方ともオススメだ。
ただ、今年は新作を発表するというアナウンスがあったワリに、先行シングル発表後はこのリミックス盤のみで音沙汰が無いのは拍子抜けだ。
ポテンシャルの高いバンドで、ボクのツボど真ん中だけに、リミックスとかは求めてないから、フルレングスの新作を発表して欲しい。


IRON VOID - Doomsday ★★★ (2023-11-13 19:54:50)

英国産ドゥーム2015年作
BlackSabbath初期作品の音像を好む人にはワリとツボなんではないかと感じるオーソドックスなヴィンテージドゥームだ。
厚みのあるギターの単音によるリフがゴリゴリでブラッディな温もりを感じさせる。余計な音が一切無いので聴きやすい反面
このテのバンド自体が数多いので、無個性なヴィンテージサウンドに、何かひとつ物足りない感じも若干ある。
現時点の彼らの4作品のうち、最もヴィンテージ臭が高い作品であり、このジャンルのど真ん中の音楽性だ。
ボクにとってはEXCALIBUR (2018年)が抜きん出た名盤であり、その下地を築いた作品という見方をしているね。
最近は週1回ペースで異常気象のオーロラ観測のニュースを目にするが、このジャケにもオーロラが描かれる。
それで「Doomsday」というタイトルだから、なんだか気持ち悪さがある盤とも言える。


IRON VOID - Excalibur ★★★ (2021-04-05 01:43:54)

英国産ドゥームメタル2018年作
前作Dooms Day(2015年)は、ヴィンテージドゥーム寄りのオーソドックスかつイーヴルな良作だったが、今作はヴィンテージ度がやや下がり
エピックドゥーム色をより強めた世界観が付加された。音響的には前作の方がドゥーム度は高いのかも知れないが、ボクはこちらの盤の方が好み。
エクスカリバーが描かれるシンプルジャケと、ドゥーミーな音像でありながら無駄を削ぎ落した飾りっ気のない楽曲のバランス感覚が素晴らしい。
速弾きなどのトリッキーなモノが極力排除された、聴きようによっては単調とも言えるリフで構成されるサウンドに何故か惹き込まれ
前作では殆ど感じられなかったエピックワールドが眼前に広がるかのような錯覚に陥る。濃厚になり過ぎないドゥーミーさがむしろ良い。
最近は作り込まれて凝った作品よりも、こういう超シンプルな作品の方がボクのツボにハマる。ミドルテンポ以下のゆったりした演奏で
落ち着いた雰囲気、過剰演出のない適度なイーヴルさを備え、魅力的な世界観を持つこういう感じのバンドは、意外に少なく希少価値を感じる。


IRON VOID - Excalibur - Dragon's Breath ★★★ (2021-09-20 20:12:06)

近年のエピックドゥーム作品では最もお気に入りだ。通勤途中のBGM率が相当高い。
過剰なエフェクトを避けた適度な歪みで、早すぎず遅すぎずのミドルテンポで、無駄な演出を排除しつつも聴かせどころが多い。
イーヴルなギターをバックに朗々と歌い上げ、男臭いコーラスがハモると、まるで自分が勇者にでもなって戦いに向かっているかのような気分になる。
仕事前にマイカーで聴くと、適度にテンションが上がって、なんだかやる気が出てくる。こういうサウンドをもっと蒐集したいんですが
なかなかコレに匹敵する良作には出会えない。


IRON VOID - IV ★★★ (2023-11-13 20:29:14)

英国産ドゥーム2023年作
個人的に神盤認定している前作「EXCALIBUR」 (2018年)から約5年を経て待ちに待った新作が今年初頭にリリースされた。
前作では、水彩画調の木と剣が描かれるジャケ、エピックファンタジーを前面に出した土着的浪漫を感じさせる音楽性で
ハートを鷲掴みされてしまったが、今作は「Ⅳ」のロゴが描かれるシンプルなジャケで、前々作のヴィンテージドゥーム色に
少し回帰した音楽性になった印象。過去2作品の良いところ取りという感じだ。
前作では、演奏のラフさが程よい味わいになっていて、作品全体に漂う土着要素や物語性を引き立てていたが、今作は演奏の
レベルも上がり、録音状態が向上している分、前作の味わいは若干薄められてしまった。より聴きやすく加工されて
やや型にハマった演奏に聴こえ、特にギターソロ部分が浮き出て聴こえるところなどは、ボクとしては残念に感じる部分である。
それでも、演奏の安定感や貫禄、イーヴルなギターの音像は特筆するところ。また、ギターがユニゾンでWytchHazel的にハモる
ところや、アコギのしっとり感など、聴きどころの多い盤である。
前作はジャケの印象に助けられていた感がある分、世界観がスッと入ってきたが、ヴィンテージ色を強める今作は
一聴しただけではスッと入ってこないかも知れない。もしかしたらこのバンドを追い続けてきたファンにしか楽しめない作品かも
知れないが、この作品には、世に乱立するヴィンテージドゥームサウンドには無いエピックファンタジーの味わいがあるんだよ。


ISIS - Panopticon ★★★ (2020-08-24 23:09:28)

米国産ポストロック2004年作
ギターの質感、ヴォーカルスタイルから、ハードコア的なカオスが色濃いが、シューゲイザー、オルタネイティヴロック的にも聴ける翳りがあり
激しさと愁いの対比がとても魅力的なサウンドだ。非常に尖った、突き刺さるような歪みを持つギターだが、突っ走らないので疲労感が無い。
ブラックメタル的なトレモロリフも、クランチトーンが強い硬質なギターの質感から、ブラックメタルには聴こえない。
まとめると、ゆったりとしたテンポで、クランチーなハードコア的カオティックさを含ませた、シューゲイザー的サウンド、という異色作だ。
カオティックな音ながら、ブルーな地味なジャケの印象からも、内省的な世界観を感じ、落ち着いて聴ける作品だ。


IVAN - Silver Screens ★★★ (2020-09-06 21:03:54)

オーストラリア産デス・ポストドゥーム2020年作
油絵タッチのパープルを基調とした、ヒーリング系やアカデミックなジャズ系のような非メタルジャケ。ホントにドゥームなのか不安になったが
タイトル曲である1曲目が、かなり濃いドゥームで安心した。調性が全くわからないアヴァンギャルドなドゥームから始まり、徐々にシンセが登場する。
音叉のような振幅があるビブラフォンや弦楽を主としたシンセサウンドが融合され、メランコリック&エモーショナルなポストドゥームに変貌していく。
そういう音楽性でありながら、元々の曲構成や演奏スタイルが相当濃いドゥームなので、そのデスドゥームな世界から逸脱することがない。
真性なドゥームは1曲目だけだが、その濃いサウンドの余韻に浸りつつ、後続のシンセ中心の楽曲もシットリと堪能することができる。
このサウンドを聴き終えると、この非メタルジャケがものすごーくシックリくる。とりあえずここまで進化したポストドゥームは聴いたことがナイ。
暗黒や魔性、人生残念感を描いた一般的ドゥーム作品とは一線を画し、耽美なサウンドというのも若干肌色が違う、質の高い異端作品だ。


IVAN - Silver Screens - Silver Screens ★★★ (2020-09-06 21:08:46)

このアルバム最大の聴きどころは、この1曲目だ。
音叉のような振幅を持つ金属音、ビブラフォン、ミニマルに変化するシンセ自体のクオリティが高く
調性が判らない変則リフの濃いドゥームサウンドにそのシンセが徐々に融合されていく。
その様は、アートロック的ジャンルのサウンド、SpiritualizedやSupersilentあたりを彷彿とさせる瞬間がある。
こんなポストドゥームは聴いたことがない。素晴らしいの一言。


IVAN - Silver Screens - The Winds Will Scream ★★★ (2020-09-06 21:11:33)

定番な鈍重なドゥームサウンドに、弦楽系のシンセが絡む。
1曲目の濃いサウンドの余韻に浸りながら落ち着いて聴けるところがいい。


IZAH - Sistere ★★★ (2020-05-25 00:12:42)

オランダ産ポストロック2015年作
ジャケに描かれる林、ジャケ裏の密林、空や小路が板の木目のような画風、多分ボクが所持してるのはスウェーデン盤だが
硬めの材質の紙を使用した紙ジャケが、紙ではなく薄い板のように感じられ、異様に木の質感を前面に出したデザインが優秀だ。
歌詞カードがないので曲のタイトルが意図するところは判らないが、少なくとも一般的なドゥームやメタルの世界観とは明らかに異なり
知的で、内向的で、印象的なテーマがあるのだろう、と思わせる。10分超の3曲の後、アルバムタイトル曲が30分超という大作主義だ。
ブラックメタル、ドゥーム、スラッジ、シューゲイザーなどの演奏様式を組み合わせ、時に激しく、時に静寂を感じさせ、時に叙情的に、
いろいろな感覚を呼び起こさせる起伏に富んだ楽曲、細部にまでこだわっているアレンジは、かなりレベルが高い。
チリチリしたブラック的ギターは多くの倍音を含み、深めの残響音がエモーショナルな感覚を引き起こす。また、激しい時には
まるでハードコアサウンドのように激しい。一口では言い表せない様々な表現方法で、ドラマチックに聴かせる一大叙事詩だ。
3曲目まででも結構な大作で、相当テンションが上がるが、それがラストのタイトル曲への伏線となり、30分超のクライマックスに感動する。
就寝の時によくコレを聴きながら眠りに着くんだけど、のめり込んでしまって1時間超眠れずラストまで聴いてしまうことがよくある。
ジャンル分けが難しいから「ポストロック」としたが、ブラックメタル的要素はあるものの、ブラックメタルファンには向かないし
濃厚なドゥーマーにも向かない、ちょっとターゲットが判らない音楽性だが、ボクはかなりのお気に入りだ。


JAMES BYRD - James Byrd's Atlantis Rising ★★ (2020-05-11 11:30:09)

米国産様式美HM1991年作。
頻繁に聴く盤ではなかったが、なかなかカッコいいなと思い愛聴した時期がある。
Fifth Angelの処女作でギターをやっていた人の作品ということを後から知り、ナルホド、と線が全部繋がった感じだ。
米国産なワリにほんのりと北欧情緒があるな、とは思っていた。普通気付くだろ!というツッコミはナシで。
Fifth Angel時代と同様に密度高めに詰め込んだ作風のワリには、意外とライトに聴けるところがイイ。


JASON MRAZ - Mr. A-Z - Wordplay ★★★ (2020-09-15 22:19:04)

Jason Mrazのシンガーとしてのセンスと実力をこれでもかと思い知らされた曲だ。
この曲を歌いたくて一生懸命練習するも、早口言葉のような歌詞についていけず、早々に諦めた。
イージーにギターを奏でながら、複雑怪奇なヴォーカルラインをいとも簡単に平然と歌う様にショックを受けた。


JASON MRAZ - We Sing. We Dance. We Steal Things. ★★★ (2020-09-15 21:59:50)

米産ポップロック2008年作
男性シンガーでツボに入ったのはこの人だ。やや乾いた質感の声で、自然体でクールに歌う様がとてもカッコいい。
Mr. A-Z(2005年作)のWordplayという曲を初めて聴いた時には、歌うことに対する醍醐味を感じ、かなりの衝撃を受けたが
この作品においても、英単語のイントネーションを複雑なリズムに乗せるこの人独特の歌いまわしに醍醐味がある。
基本はフォークやカントリー風の夏を感じさせるイージーに聴けるポップスだが、ジャズやヒップホップのテイストが色濃い
サウンドアレンジが登場し、多彩な楽曲群に圧倒されるが、やっぱり最大の魅力はヴォーカルの歌唱力だ。
この盤で聴ける独特なリズム感で歌うスタイルは、以降の作品であまり聴かれなくなったのが残念。ボクはこの盤が最も好きだ。


JASON MRAZ - We Sing. We Dance. We Steal Things. - Butterfly ★★★ (2020-09-15 22:14:29)

ホーンセクションから始まるソウルフルなサウンドは、Earth Wind And Fireあたりを好むリスナーのツボにハマりそうだ。
しかしながら、最大の魅力は、やはり独特なリズム感で歌い上げるヴォーカルだ。ホントカッコいい。
発売当時はカラオケにもこの曲があったが、最近は削除されてしまったようで残念。機種によっては残ってるかも知れないが。


JASON MRAZ - We Sing. We Dance. We Steal Things. - I’m Yours ★★★ (2020-09-15 22:06:14)

トロピカルな雰囲気が、ボクのようなダークサイドな人間には全く合わないのは承知しているが
この盤発売当時には、この曲を歌うためにカラオケ店に通った。
フォーク調のイージーなバッキングは、独特なリズム感のあるヴォーカルラインを際立たせる。
歌うことが楽しいと思わせるこの人固有のイントネーションが魅力的だ。


JEAN SIBELIUS ★★★ (2020-04-26 21:18:37)

フィンランド作品は特にボクのツボに入りまくるので、我が家にはフィンランド産メタルやドゥーム作品は多い。
基本、針葉樹の生える国の音楽はボクのツボなんだろうと思う。というワケで、シベリウスは特に好きなクラシック作曲家だ。
一般にはピアノ作品より交響曲などが有名なんでしょうが、ボクはピアノ作品のみコレクションしている。
シベリウスのピアノ曲の特徴は、まず難易度がそんなに高くない。最小限の音数でありながら曲によっては豪華に聴こえる。
要は、無駄な打鍵が無く音響効果が大きいということだ。なので、ピアノを嗜む人にはシベリウスは超オススメである。
特に好きな楽曲は「樹の組曲」作品75で、たぶんピアノ曲としては最も有名なんじゃないかなと思う。
雪を連想させる北欧情緒溢れる作品で、第2番「孤独な松の木」は初めて聴いた時には、2ページ足らずの短い曲ながら
静寂を感じさせながらも大木の雄大さを連想させる楽曲に圧倒された。第5番「樅の木」の叙情も捨てがたい。
しかし最も好きな曲は、あまり弾かれていない無名な曲だが「故郷にて」である。郷愁を感じさせる美しい曲で、よく弾く曲だ。
演奏家は、フィンランド作品を世に広めた館野泉の演奏が聴きやすくて定番だ。
ただ個人的にはマリア・ビータサロの演奏がかなりツボにハマる。


JEX THOTH - Blood Moon Rise ★★★ (2020-04-29 23:40:43)

米国産女性ヴォーカル・サイケデリック・ヴィンテージ・ドゥーム2013年作。
ヴィンテージドゥーム作品ではここ10年ではコレを凌ぐインパクトを持つ作品には出会っていない気がする。
ヴィンテージとは言っても、ローファイ志向でロックをやっている類のサウンドではなく
あくまで、ギターサウンドがいかにもヴィンテージ臭が漂う音作りであり、全体的に残響音が深めの録音状態に仕上がっている。
どんよりと超スローな楽曲が多く、控えめな癖に存在感のあるギターに細かく揺れるシンセがサイケデリックに絡む。
ジャケからもわかるように、死臭がプンプン漂っているというのに、フューネラルドゥームのような根暗感が無く
仄かなストーナー臭とギターのヴィンテージ臭のためか、むしろサイケデリック職人気質が前面に出ている。
そういう濃いサウンドでありながら、女声ヴォーカルの「歌」を最も聴かせるバランス感覚がスゴイ。
アトモスフェアな感じとストーナー感覚が、まるで自分が埋葬されていくかのような錯覚を引き起こす。
感じさせる温度は非常に冷たいが、凍りつく感じではなく、冷たい水の感覚だ。
一聴して、この特異な感覚を是非体験してみて欲しい。


KASSAD - London Orbital ★★★ (2020-08-06 00:58:27)

英国産シューゲイザー・ポストブラック2020年作
白黒のモノトーン、現代の朽ちた建物のジャケが印象的な独りポストブラック。際立って凄いサウンドというワケではないが
今年コレをゲットしてから、結構な回数聴いている。ライトに楽しめる内容でありながら、とても惹きつけられる魅力がある。
ポストブラックと言っても、ワリとブラックメタルのスタイルを崩すことはない。それでいて、シューゲイザー臭がほんのりと
漂っている感じがステキなサウンドだ。コレたぶんジャケが森林だったら、森林崇拝ブラックに聴こえるんだろうと思えるくらい
残響音とギターの質感がそのテのサウンドに近い。ガナリ声ヴォーカルがたまに登場するが、サウンドへの溶け込み方も絶妙だ。
ジャケの印象の違いで、音響的には森林崇拝系ブラックなのに、聴こえ方が全く変わってくるから不思議だ。
ドラムはナマ音なのかリズムマシンなのかわからないが、割と機械的に聴こえて、それがむしろモダンに感じられるのが良い。
空気のような風のようなシンセの音作りが密かに優秀。それも手伝ってか、現代的で、日常的な空気を感じることができる。
真性ブラックメタラーには向かないかも知れないが、森林崇拝系ブラックの音響がツボなリスナーはツボにハマるかも知れない。


KAYO DOT - Blasphemy ★★★ (2020-05-28 01:12:16)

米国産エクスペリメンタル・アヴァンロック2019年作
Maudlin of the WellのToby Driverのプロジェクト。深い霧のジャケのようにアトモスフェアなシンセが印象的なサウンド。
前衛的な手法が当然のように様々に用いられながらも、ごく自然に聴かせるところには、この人の職人気質を感じるところだ。
過去作はもっと禍々しいギターが入っていたと思うが、今作はそうでもない。しかし、聴きどころは卓越したギターセンスだ。
また、独特なリズムを刻むドラムが、霧に霞む自然の雄大さをイメージさせ、とても良い仕事をしている。
ストーリーを感じさせる楽曲からは、神秘、美しさ、時に醜悪さを感じ取ることができ、ラストのタイトル曲で最高潮を迎える。
壮大なファンタジーの世界が非常に素晴らしい作品で、過去作やMaudlin~にハマったことがある人はマストだ。


KHANATE - Clean Hands Go Foul ★★★ (2020-05-07 13:43:15)

米産アンビエント・ドローン2009年作(遺作)。
既に解散後に発売、発売から数年後に見つけて、若干今更感を胸に秘めつつもゲットした作品。
しかし、当時Khanateの音楽性に衝撃を受けたリスナーは必ずゲットすべき盤だ。
とはいえ、アンビエントな音空間が占める割合は結構多く、もはやドゥームやスラッジの範疇で語りきれる音楽性ではなく完全にドローン化した作品だ。
ありがちなモノクロの石床ジャケが示す通り、冷たい石床にいる孤独感、空気は冷たく、ヒリヒリとした緊張感が張り詰めている。
そういうアンビエント空間で不安を煽りつつ、絶叫ヴォイスと暴虐的なギターから発せられる重圧と様々な倍音が聴き手を圧し潰す。
たまたまなんだろうが、「遺作」というのもこの冷たい音楽性を際立たせる一因になっている。
真冬にちょっと湿気た重めの冬用掛布団を数枚重ねて聴いてみたい、圧死必至の作品である。


KHANATE - To Be Cruel ★★★ (2023-11-04 20:39:32)

米産アンビエント・ドローン2023年作
解散後、忘れた頃に「遺作」として登場した前作から、更に10年以上経った今、突然リリースされたこの作品。
もはや活動終了したんだろうと思っていたが、地道に活動していたのか、再結成なのか・・・。
ヘヴィさ、というよりは、音響と作風から感じられる圧迫感の強さという点では、ずば抜けたヘヴィさを誇るバンド。
To Be Cruelというアルバムタイトルが示すように、絶叫とタメを利かせた音圧のコラボは、凄惨な残虐性が色濃い。
今作でやっていることは、過去作品の類似作品、延長上の音楽であり、過去作を堪能した人にとっては一聴しただけでは
目新しさはさほど感じない内容だろうと思うが、アンビエントかつ超スローという音楽性で緊張を維持し続ける工夫は
随分とレベルアップした、と感じさせる。そもそも圧の高いアンビエントドローン的ドゥーム作品自体が稀少なワケでして
そっち方面のマニアックなファンは、必ずゲットしなければいけない盤だ。
KHANATEの持ち味は、歪んだ図太い重低音ベース&破壊力抜群のギター&じっくり力を溜めたドラム、この三者の同時ストローク
により、巨大な重量級の石で圧し潰されるような感覚に陥るところと、石を落とされるまでの無音・タメ部分のヒリヒリとした
緊張感である。また、そもそも即興演奏ではないだろうが、コード進行やハーモニーが全く排除された感じから、まるで
即興的にやっているように聴こえるところも魅力のひとつだ。
大作主義でありながら、没入度は高い。その上、昔、KHANATEにハマった時期のノスタルジーが蘇る。このバンド登場時期は
重量感は圧倒的にナンバーワンで、ボクにとってはレジェンドなバンドである。前作(遺作)から再び息を吹き返して帰ってきた。
当時ココの掲示板で語り合った人たちは今もココを見てるのかな。コレは「必聴盤」だぞ。


KING CRIMSON - In the Court of the Crimson King - 21st Century Schizoid Man (including Mirrors) (2023-08-30 21:41:40)

こういう音楽はコッソリと楽しむからいいんであってね。
ゴールデンタイムの真面目な情報番組のオープニング曲に採用するのはちょっと違う。
まあ単に番組制作者の趣味かも知れませんがね。
こういう暗示が近年どんどん増えていることにちょっと気を配るべきだよ。
今日は母親に、そんな番組見ちゃダメだよ、と言ったんだけどね・・。


KINGSBANE - Kingsbane ★★★ (2020-08-28 00:53:29)

カナダ産メロディアスハード2010年作
ややプログレッシブロック寄りながらも、非常に聴き易い正統派なメロハー路線。1991年のデモ作品と、バンド名をSeven Yearsに改名した後の作品
を収録したコンピレーション作品だ。もはや入手困難で、海外で取り扱っているショップを見ても100ドルくらいが最安値だった。
かなりのポテンシャルを感じさせる内容のワリに、全く表舞台に出なかったのは、レーベルとの契約上の問題があったようだが、後にIN THE NAMEという
バンド名で作品をリリースしている。唯一のフルレングスアルバムIn The Name(1995年作)は、これまた全くの無名のまま鳴かず飛ばずで消えてしまったが
ボクはこの盤を心底惚れこんでおり、ゲットして25年経った今でも愛聴している。派手さの無い、どちらかというと地味な作品な上、ジャケやバンドロゴが微妙。
そういうことも含めて、他バンドの影に隠れてしまい、その素晴らしさがあまり知られることが無く、活動も終わってしまったのが非常に残念だ。
彼らのサウンドは、演奏のテクニックの裏付けがありながらも、決してトリッキーなリフや速弾きなどに偏らず、一部でプログレと言われながらも
派手に曲展開するような仰々しさがなく、聴き易い範囲で複雑な展開をする。濃厚になり過ぎない適度な哀愁を漂わせ、とても自然体で聴ける。
Kingsvane時代の楽曲の一部はIn The Nameの盤に収録されている。彼らのサウンドに興味があるなら、今でも簡単に入手できるIn The Nameをオススメするが
彼らのサウンドに感銘を受けルーツを辿るなら、Kingsbaneは必聴盤だ。ボクがゲットした頃はそこまで高騰してなかったが、まあ、100ドルは高いな。


KISS - Destroyer ★★★ (2020-08-20 23:57:57)

米国産ロック1976年作
唯一我が家にあるKiss作品。何も考えずに楽しく聴けるロックンロールナンバーが激アツだ。
当時の華やかなロックシーンの空気、ライブ的グルーヴ感が詰め込まれた鉄板作品だ。
バンドをやり始めた頃、とりあえず最初に手に取ったアメリカンロック作品でとても思い出深い。
ボクは決して残念な人生を送ってはいないが、このままこの路線の音楽を追いかけていたら、更に明るく華やかな人生だったかも知れない。
が、何故かこれ以降は、デスメタルやダークサイドサウンドにハマっていき、人生残念サウンドばかりゲットするようになっていった。
この盤はボクのようなダークサイド派であっても、そういう暗さを一蹴してしまう破天荒な明るさ、破壊力に圧倒され、惹き込まれるのだ。


KISS - Destroyer - Detroit Rock City ★★★ (2020-08-21 00:04:58)

高校に入った頃、バンドを組んだばかりの頃に、地元の祭りの企画の駅前ライブで演奏した曲だ。
ライブ映像を真似して手を回しながら演奏したが、当時は白塗りの化粧をする勇気までなかった。
この盤では最も好きな曲、ライブの楽しさや華やかさが詰まったロックンロールサウンドがアツい。


KONQUEST - The Night Goes On ★★★ (2021-05-01 01:22:52)

イタリア産NWOTHM2021年作
2019年デビューのホットなバンドなワリに、年配向けトラディショナルモノ路線ど真ん中の化石ロックサウンドが楽しめる好盤。
最近はドゥーム路線よりもこの路線を多くゲットしているが、今年蒐集した盤のうち、最もレトロ感を堪能できたのがコレだ!
必要最小限に抑え気味のエフェクト、どこかで聴いたことのあるようなベタな展開、キャッチーなリフ、派手な演出は無く適度なテンション。
しかし何故かコレが相当ツボにハマる。奇をてらった派手な演出が無くとも、ハードロックの基本をガッツリ押さえていればカッコいいという事を
知らしめる作品だ。というワケで、この作品はロックを聴き倒してきた年配者向けである。ここのところ一番多く愛聴している盤だ。
リフや展開、どこかで聴いたことあるあるを存分に楽しめる。そういう曲を決め打ちして作っているんだろう。
この盤を愛聴できる人は、とりあえず高齢者の仲間入りをしているので、血圧や血糖値に気を付けよう。残念ながらアナタはもう若くはないぞ、と言いたい。
この地味なジャケもツボにハマる。どこかで見たようなジャケなんだが、思い出せないな。


KORPIKLAANI - Ennen ★★★ (2021-09-06 22:28:36)

フィンランド産フォークメタル2021年作
最近はAIがウチのPCに勝手に、この動画を見ろと言わんばかりに、最新PVやツボを突く動画などを送ってくる。
このバンド自体、あまりにメジャーになりすぎて、無名バンド発掘に生き甲斐を感じるボクとしては敢えて聴こうとは思わないバンドではある。
が、飲んだくれフィンランド民族楽器バカバンドのこの空気は嫌いではない。
露産BROTHERS OF METALに近年結構ハマっているが、それと同等のおバカな感じや宴会的雰囲気の突き抜けた爽快感はストレス解消にもってこい。
今日この曲の最新PVがPCに届いたワケだが、コレはJoe Jacksonの処女作Look Sharp! (1979年作)のGot The Timeのカヴァーで、
少なくともボク世代(40~50歳代)でスラッシュメタル全盛期を経験したメタラーは、この楽曲タイトルでJoe JacksonではなくAnthraxを思い出す筈。
たぶんこの人たちもAnthraxがカヴァーしたGot The Timeにハマったんでしょうよ。民族楽器を駆使してホント楽しそうに演奏しててイイね。
この曲はシングルなのかフルレングス盤に収録されるのかはわからないが、とりあえずデジタル作品でこの曲単体で販売されているのは確認できた。
しかしこのチョイスはズルいな。きっとスラッシュメタルファンのツボ突きまくりでしょう。


KROHM - The Haunting Presence ★★★ (2020-08-01 00:13:36)

米国産ブラックメタル2007年作
前作と比べると内容の濃さとしては前作の方が優れているかも知れない。ただ、ボクはこちらの盤の方が聴いた回数は圧倒的に多い。
初期XASTHUR的な音を好むブラックメタラーがハマりそうな禍々しさとヴォーカルスタイル、そして特有の湿度の高さが大きな特徴だ。
高音域が控えめなよりジメジメ感が前面に出ていた前作を好む人が多いかも知れない。しかし、こちらの盤はジャケが森林だ。
密室的・閉塞的な前作のストレートな鬱路線が若干薄れ、室内から屋外に出た感じの広い空間を感じさせる高音域の残響音が前作との違いだ。
曇り空と霧、森林を感じさせるブラスト&トレモロリフ、ヴォーカルがとても美しい。その三者が気持ち悪く絡み合いカオティックだ。
森林崇拝ブラックど真ん中な音楽性だが、それに加えて特有のジメジメした高い湿度がこのサウンドの最も素晴らしい個性だ。
全く音沙汰が無いので、もう活動していないのかな。この路線では神盤とも言えるクオリティ。超オススメ。


KYUSS - ...And the Circus Leaves Town ★★★ (2020-05-07 11:53:29)

米産ストーナーロック1995年作。
ボクはそもそも寒い音楽が好きなので、米国産ロックサウンドをあまり積極的にチェックはしないし
Kyussを蒐集し始めた頃には既にQueen of the stone ageを先に聴いていたので
解散後数年以上経ってから、この盤から順々に遡って聴いたんですが、最も好きな盤はコレですね。
我が家にはドープスモーカー向けドゥームで濃厚に石化できる作品が多くあるので最近はあまり手に取る機会はないが
購入当時は結構ハマった。この盤はKyuss作品中、落ち着いた感じと、ストーナー要素がそこまで煙たくなり過ぎないところが
むしろお手軽でクールでカッコいいと感じさせる。


KYUSS - Sons of Kyuss ★★ (2020-05-07 12:27:54)

米国産サイケデリックロック1990年作。
ストーナーロックバンドKyussの前身、バンド名を改名する前の作品なので、実質処女作にあたる作品。
この頃はストーナー要素というのは無いが、Kyuss作品中、好きなアルバム3番手くらいだ。
若干つぶれ気味のギターサウンドと、ローファイな録音状態、小さなライブハウスを思わせる浅めの残響音が妙にシックリくる。
また、ボクが昔ハマったグレンダンジグ在籍時のMisfitsに歌い方が似てる部分がほんの少しあって、結構ツボに入った。


KYUSS - Welcome to Sky Valley ★★★ (2020-05-07 12:12:46)

米国産ストーナーロック1994年作。
Kyuss作品中、最もストーナー要素の強い作品だろうと思う。
ボク自身があまり「ストーナー」という言葉を当時シックリと受け入れなかったこともあって、
購入当時は単にサイケデリックロックのうちのカッコいいバンド、という位置づけで聴いていた。
ジャリジャリ感のあるギターサウンドがカッコいいと同時に、スペーシーな酩酊感が素晴らしい作品で
現在は「ストーナーロック」という言葉を受け入れた自分にとっては、そのサウンドのど真ん中にある音楽性だろうと感じている。


LACHRIMATORY - Transient ★★★ (2020-05-12 01:14:15)

ブラジル産デスドゥーム2011年作
この作品はブラジルでCDRでリリースされているが、2014年にロシアのSolitude Productionによりリマスター版が発売されている。
このバンドの音源はコレ以外は無さそうで、現在活動中なのかもわからない無名バンドだがドゥームマニアには是非ゲットしてもらいたい。
チェロを導入したドゥームというのが大きな特徴で、孤独感や悲しみを表現するのに絶大な効果があり、とても存在感がある。
ギターの音はジメジメした黴臭い質感を醸し出す適度な音圧・音量で、あまりメインには出てこないものの、雰囲気を出す重要な役割を担っている。
チェロと、ヴォーカルが兼任しているシンセ、ギターの三者が複雑に絡み合うハーモニーが独特、不穏でありながら妖艶な感じだ。
そういうスタイルが珍しいというだけではない。テンポやリズムの緩急のつけ方が絶妙で、静と動の臨場感ある楽曲が凄い。
曲が後半に進むに連れ叙情性や迫力が増し、その奥深い音楽性の素晴らしさに感動せずにはいられない。
個性派ドゥーム作品として超イチオシ作品。リマスター版が出回っているから、入手はそんなに困難ではないと思うので、是非体験して欲しい。


LADUSHKA - Solstice ★★★ (2020-08-10 01:23:08)

ロシア産フォークメタル2018年作
バンド名はロシア表記でЛадушка、アルバムタイトルはСолнцеворотだ。
明らかにHR/HMとは畑違いに感じるジャケ、15ページにわたる歌詞カードは、ディズニーのような、絵本のような感じで結構気に入っている。
そんな非メタル的なオーラがジャケデザインから漂っているにも関わらず、メタル度は非常に高い。疾走感があり、ツーバスも入る。
今やフォークロアスタイルのメタルはそんなに珍しくないが、ブラックメタルやペイガンメタルとクロスオーバーしたサウンドがボクのツボで
純粋なHR/HM的なサウンドとフォークをクロスオーバーした作品は殆ど所持していない。というのも、そういう音楽はボクは飽きが早くてまず買わない。
そっちのサウンドが欲しい時は、ワールドミュージック的作品を漁った方が聴き応えのある作品に出会う率が高いように思うし、無理にメタルサウンドを
クロスオーバーする必要性をあまり感じないというのが正直な気持ちではある。
が、この作品を敢えてゲットした理由は、絵本のようなデザインと、楽曲と音響的クオリティの高さがボクの心を鷲掴みにしたからだ。
ロシア語独特の巻き舌女声ヴォーカル、時に登場するコミカルなサイドヴォーカル、どこか自然を感じさせるエフェクトが素晴らしい。
また、このサウンドが本格的に聴こえるのは、アコーディオンやハープはもちろん、スプーンズやイディオフォンのような民族楽器を取り入れている
本気度の高さにある。2ビートで疾走する曲は、チャストゥーシカにポルカのテイストを加えた感じがベストマッチで、とても楽しい気分になる。
そもそも森メタル贔屓なボクの趣味にベストマッチする音楽性なので、きっと万人受けはしないんだろうとは思うが、フォークロアメタルでは
ちょっとレベルの違いを感じさせる。興味があれば一聴してみて欲しい。超オススメ!


LAST DAYS OF HUMANITY - Putrefaction in Progress ★★★ (2020-05-16 00:14:53)

オランダ産ゴアグラインド2006年作
このバンドの作品は前作とコレが必聴盤。この盤でヴォーカルがチェンジしており、前作で大きな魅力を放っていた下水道ヴォイスが変化。
グシャッとした胃液ゴボゴボヴォイスになっている。コレはコレで、このサウンドの肉をミンチにするようなブラストにフィットしている。
全く曲の見分けがつかないブラストメインの1分以下の曲40曲に、ラスト3分越えのブラスト一色という曲で終了という、ブラスト地獄サウンドが魅力だ。
仕事帰りのマイカーで聴いていると、スーパーに寄ってミンチを買いたい衝動に駆られ、大抵その日の晩ご飯はハンバーグだ!
10年以上経った今でも、このバンドの衝撃を超えるゴアグラインドには出会っていない。どこを切っても同じサウンドなのに、未だにたまーに聴いている。


LEEVI MADETOJA ★★★ (2020-07-19 22:44:17)

母子家庭に生まれ、子供の頃から掃除のバイトをしながら生活をしていたが、誕生日に母からもらったカンテレを弾きこなす
ようになったのがスタートで、独学で音楽を学び、気付けばシベリウスに師事し、大成していった作曲家だ。
フィンランド作曲家の中でも、特に深い叙情性がある、と思う。悲しい旋律は他作曲家に比べても際立って悲しすぎる。
特に「死の庭園作品41」は、すごーく悲しい。ダークサイドサウンドフェチとしては避けて通れない作品だ。
また、この人のピアノ曲は、ぼんやりと霧がかった、ぬるーい、ぼーっとした作品が多い。ボクはそういうところがツボだ。
田園組曲作品34「伝説」あたりが、そういう感触だ。濃厚な北欧情緒を感じずにはいられない。
この曲集の「カプリス」も、課題曲として学習したことから大好きな曲だ。
マデトヤのピアノ作品を収録した音源は殆ど出回っていないような気がする。我が家にあるのは Mika Rännäli というピアニスト
の作品のみだが、2枚組で、マデトヤの名曲が網羅されているので、超オススメだ。


LESATH - Sacred Ashes ★★★ (2020-07-18 23:39:12)

ロシア産ブラックメタル2020年作
やっとロシアからの空輸便が届き始め、ポツリポツリとロシア作品が我が家に届きつつある。それでもまだ半分も届いていない・・。
3ヶ月半待たされたが、今年発売のロシアンブラックではかなり上質な作品だと感じ、150枚限定Limited Editionをゲットした。
ブラストするようなタイプのブラックではなく、雰囲気重視のボクの好みストライクゾーンど真ん中の、ムーディーなブラックだ。
Youtubeの再生回数は未だに700回程度だが、神盤レベルのクオリティだ。まあ、再生回数が少ない理由は、無名というのもあるだろうが
そもそもこのバンドは2019年に結成されたんじゃないかと思う(たぶん)。メンバーの経歴なども調べても全く分からなかった。
まずジャケの美しさに惹かれる。湖と石造りの建物と木を背景に、湖には一隻の小舟が漂い僧侶のような装束を着た人物が描かれる。
ジャケ裏にはその情景を別角度で描いたようなシーンが描かれ、雲から光が差し、上空には鳥が描かれている。
この朽ち果てた寂しげで荒涼とした情景をそのまんま音にしたかのような叙情的な音楽性に終始心奪われ、没入感が半端ナイ。
湿度が高めで、霧に霞んだ雰囲気が漂っており、ヴォーカルは霧の向こうで歌っているかのような濃厚なエフェクトがかけられている。
トレモロリフやツーバスで激しさを表現するパートもあるが、基本音数はかなり控えめだ。また、音圧ではなく尖った質感のギターがツボだ。
アコースティックギターを前面に出しており、コードポジションを移動させる時のフィンガリングノイズに異様な生々しさがあり味わい深い。
最近は空輸便が停滞していたからロシア産が手に入らなかったが、やはりダークサイドサウンドは現在はロシアの質が他国に比べかなり高い。
そう思わせる奥の深さ、楽曲やアレンジがこのサウンドにはある。とりあえず雰囲気重視ブラックメタラーが悶絶しそうなマストな作品だ。


LESSER GLOW - Nullity ★★★ (2020-08-04 01:38:02)

米産スラッジ・ドゥーム2020年作
モノクロの山林ジャケ、ジャケ裏は洞窟、中身を開くと、山と川のカラー写真、川岸に廃棄された鉄屑が写っている。
英語が正確にわからない上、歌詞カードの文字が小さすぎて老眼のボクには翻訳作業がしんどかったので勝手に解釈しているが、
自然崇拝的な世界観で、無意味な生産を繰り返してはダメだ、といった感じのテーマなのかな、と思いながら聴いている。
ここ最近ゲットしたスラッジでは、かなり質が高く、ギターの歪みや鈍重な引き摺る感じは凄まじい上に、残響音も完璧だ。
この路線を好むリスナーは、怒涛のようなカオスに圧倒され、相当惹き込まれる筈だ。しかも、単に重量級なだけでなく
計算され尽くしたかのような不協和のハーモニー、無駄なオカズの無いクールでミゾオチにガツンとくるドラムが素晴らしい。
ヴォーカルはデスヴォイスとクリーンヴォイスを使い分け、結構前面に出ている。カオティックなノイズが多重に響けば
シャウトに近いヴォイスはそのノイズに見事に溶け込む。禍々しいノイズに対して声に最適なエフェクトを逐一施しているのだろう。
凄まじい轟音であるにも関わらず、ひとつひとつの音に意味があり、刺激的な効果があり、聴きづらさや過度な疲労が無い。
いやー、素晴らしい。久々に、ただひたすら凄まじい轟音の渦に身を任せていたいと思わせる作品に出会った気がする。超オススメ!


LOCUS REQUIESCAT - Into Dimensions Beyond the Utter Void ★★★ (2020-09-14 21:16:47)

ロシア産フューネラルドゥーム2020年作
疫病で汚染された不毛な土地をテーマにした1曲目から、かなーり濃いドローンドゥームに近いノイズ垂れ流しで、ドゥーム上級者向けの内容だ。
故意にチューニングを狂わせているのか、チョーキングを多用しているのか、正確な音程から僅かにズレたギターが放つレイヤー効果的不協和が特徴だ。
調性が判らないほどの厚めのノイズの音像と、音程の狂った単音ギターの不協和音に、アンビエント風シンセを重ね、延々と超スローに展開する。
重低音デスヴォイスはノイズの音像の一部分としてドローン的サウンドに溶け込み、一応歌詞はあるのだろうが、もはや歌っているとは言い難い。
そういうカオティックなアンビエントドローンが1時間19分延々続くという苦行を堪能できる超マニアックな作品だ。
アルバムタイトルを直訳すると「完全な空隙を超えた次元へ」だろう。ローブを纏った人物が座し、怪しく輝くオーブが描かれるジャケからも
濃いカルト臭が漂う。一般のドゥームよりもメタリックな感触のノイズによるスペイシーな浮遊感が、このアルバムタイトルが象徴する世界観に
バッチリ一致しているから面白い。
しかし、濃い。濃すぎる。コレを1時間以上鑑賞するのは、ボクにとっては相当しんどい苦行だ。アヴァンギャルドで面白い作品だが、結構疲れるね。


LOCUS REQUIESCAT - Into Dimensions Beyond the Utter Void - Quinta Essentia Pulvis ★★★ (2020-09-14 21:37:38)

アルバムラストを飾る33分超えの超大作だ。ここに至るまでに不条理でひねくれた音像の塊によってノックアウトされがちだが
そのカオティックな世界はラストに至る伏線で、この曲は超スペイシーな不協和から徐々に開放され、ここにきてやっと明確な、メロディアスな旋律が登場する。
アルバム全体で見ると、後半戦の序盤まで濃厚なカオティックな音世界が支配し、ラストのココに帰結する、という作品と受け止められる。
そう解釈すると、この作品全体のドラマチックな展開がとても面白く感じられる。ただ、ここに行き着くまでに相当な疲労感でクタクタになるんだけどね。


LORD VICAR - The Black Powder ★★★ (2020-08-02 17:19:42)

フィンランド産ドゥームロック2019年作
Gates of Flesh(2016年作)の神聖かつエロいジャケで注目し、高い音楽性と思いつつフィンランド的濃さまで感じなかったため
ゲットするには至らなかった前作だが、昨年リリースされたこの盤は、フィンランド的濃さまでは感じないまでも、昨年ゲットした
ドゥームロック路線ではかなりハマった1枚。神聖さと魔性のコントラストを感じさせるジャケが美しく、音楽性に非常にマッチしている。
良い時期のグレンダンジグのような男臭い雰囲気をドゥームにした感触と、イーヴルなギターサウンドがボクのツボにかなりハマる。
昨年同時期に発売されたORODRUINの新譜がイーヴルなドゥームでは双璧といった感じ。こういう音が欲しくなった時に交互に聴いている感じだ。
安心して聴けるハイクオリティなドゥームロックサウンドからは、ヴィンテージ臭すら漂ってくる。ホント、カッコいい。超オススメ。


LUGUBRUM - Al Ghemist ★★★ (2020-05-02 23:49:43)

ベルギー産アヴァンギャルドブラック2001年作
Lugubrumの個性として、動物を供物にして腐らせたような汚さ、腐った魚の匂いのような、濃厚な腐臭がある。
ブラックメタル特有の魔性が感じられる作品は意外と少ないんだが、この作品は、そういう腐臭と魔性がうまく融合している。
そして、ブラック的美的感覚溢れるジャケが、そのサウンドを更に引き立てており、前衛的だがブラックスタイルを維持している。
更に、粘っこくドゥーミーな曲などもあり、Lugubrumが完全に前衛路線に走る一歩手前の丁度良い感じがステキだ。
この作品は友人がLPで所持しており、ボクはまだゲットしていない。CDで発売はされてないのかな?


LUGUBRUM - De ware hond ★★★ (2020-05-03 00:51:36)

ベルギー産アヴァンギャルドブラック2007年作
強い魔性を感じさせ、かつ不吉な、タブーに触れたような背徳感が漂っている。かなりの異端作品だがブラック的世界観ではこの作品が真性で濃い。
Lugubrumは様々な引出しがあって、アルバムによって多様な世界観を感じることができるが、純粋にブラック的狂気に浸るにはこのアルバムがベストだ。
ギターは超ハイセンス且つあらゆる奏法を駆使し不気味な旋律を奏でる。ラッパがジョンゾーンのサックスのように荒れ狂い、狂人のようなヴォーカルが毒を吐く。
バンドネオン・オルガン的な音が密かに響いており、古臭さ、埃っぽさ、田舎臭さを感じさせ、まるで誰も知らない村の教会で異教徒が呪術を施しているかのよう。
ちなみに、この作品では、食べ物の腐ったような腐臭は感じられず、限りなく黒い。
もうね、このアルバムは狂ってるよ。


LUGUBRUM - Face Lion Face Oignon ★★★ (2020-05-03 00:07:33)

ベルギー産アヴァンギャルドブラック2012年作
湿り気を感じる丘のような超手抜きに見えるジャケの効果は絶大で、今作もジメジメした食べ物が腐ったニオイが漂う。
梅雨時期に賞味期限がヤバめな食べ物をお供え物として並べて鑑賞したい逸品。
ハイテクニックながらタイトな演奏、ブラストする時はするが、薄めなブラックスタイル&アコースティックな感じのパートもあり、その対比が素晴らしい。
前衛的でセンス溢れるリフやフレージングがびしばし登場するにも関わらず、食べ物をリバースしそうな超ヤケクソなダミ声が支配しているという潔いスタイルが最高だ。


LUGUBRUM - Herval ★★★ (2020-09-04 01:50:31)

ベルギー産アヴァンギャルド・ブラック2015年作
Lugbrumの盤の中では、他作品をよく聴くのであまり手に取る作品ではない。とはいえ、相変わらず固有の魅力と卓越した演奏技術があるので必聴盤だ。
ボクが持っている紙ジャケには、魚、グラス、ボトルのイラストが。ジャケを開くと瓶詰めにされた得体の知れないイキモノとコップが描かれる。
毎回ヘンな世界観で悩むのだが、今作は明らかに魚の世界。とりあえず曲のタイトルを翻訳したところ、1曲目は「ウナギのミックス」・・瓶詰めの正体はウナギか。
4曲目は「喉が渇いた魚」・・・この人たちは魚介類に一体何を見出しているのか。相変わらずさっぱりわからない世界観だが
まあ何故かこの人たちのサウンドからは魚の油臭がするから不思議でならない。近所の酒屋でオリーブオイル漬け魚缶とか置いてるコーナーに行くと
この盤のサウンドが頭に浮かぶ。この人たちは、魚が好きすぎてこういうサウンドを追求しているのだろうか。まあ、オンリーワンな個性だ。
職人技を思わせるギターのキザミがあるかと思えば、シットリと(少しヌメリのある)聴かせたり、やたらタイトでトリッキーなドラミングだったり
もう演奏は好き放題やっている。物凄いグルーヴ感を放つ曲もある。が、素っ頓狂な酔っ払いが絡んでくるかのようなヴォーカルが乗ると、
Lugubrum独自の脂が濃厚な魚ワールドな世界に惹き込まれていく。相変わらず面白いバンドだ。


LUGUBRUM - Wakar Cartel ★★★ (2020-06-16 01:44:32)

ベルギー産アヴァンギャルドブラック2017年作
今回はメンバーが車椅子に乗って横断歩道を渡っているジャケだが、相変わらず描く世界観が意味不明だ。
過去作品のジャケやメンバー写真などのイメージ「魚」「ニンジン」「牛」と今回のジャケがリンクしないからなぁ。
しかし、翻訳した感じでは、たぶん1曲目はニンジンの歌なんだよ。この人たちはニンジンに何を見出しているのだろう。
盤とジャケ裏に描かれる液体のような模様から、今作も過去作以上に湿度が高い。振幅するトレモロっぽいエフェクトのギターや
うねるようなバリトンサックスとトロンボーンによる味付けが、更に湿度を高め、今作も食べ物が腐ったようなニオイが漂う。
全体的にすごーくカビ臭い。今回はヴォーカルは少なめではあるものの、相変わらず食べ物をリバースしそうなガナリ声が魅力的だ。
シトシトと雨の降るこの梅雨時期には丁度ピッタリのサウンドで、聴いた瞬間にウチにある食物の賞味期限が切れてしまう感覚になるよ。
もう熟練の技で、演奏技術は相当高く、もはやブラックの枠にはおさまらないアヴァンロックを展開、ジメジメした質感ながらも
相当カッコいいサウンドだ。


LUGUBRUM - Winterstones ★★★ (2020-05-02 23:32:10)

ベルギー産アヴァンギャルド・ブラック。1995年作。
恐らくコレがCD化された最初の作品で、それ以前にカセットとかデモとかがあるんだろう。
録音状態はかなり粗雑だが、ローファイな感触とギターのプチプチ感、ザラザラ感、コモリ具合は良い感じだ。
このバンドの大きな特徴であるガナリ声ヴォーカルは、この頃から健在だが、お風呂で歌ってる感じの深いリバーブがかかっている。
このサウンドが受け入れられるかどうかは、まずこの独特なヴォーカルを味わいとして感じられるか、にかかっている。
ブラックメタルバンドがあまり使わないメジャーセブンスの響きを多用するスタイルは、既にこの頃から確立されてて
他のブラックでは感じられない、どこかキモいヘンな感覚を呼び起こす要因のひとつとなっている。


LYKANTROPI - Spirituosa ★★★ (2020-10-10 14:38:59)

スウェーデン産サイケデリックロック2020年作
人間が夜、オオカミに変身してしまう現象(リカントロピー)をバンド名とし、月の満ち欠けをジャケのデザインにしているセンスにまず惹かれる。
デジタル作品をリリースなどもしているが、CD化されたものは2作品あり、コレはそのうちの2作目だ。こういうバンドは蒐集しづらくて困る。
同郷のWitchcraftを意識しているのかどうかは知らないが、ほぼ同路線だ。70年代サイケデリックロックが現代に蘇るかのような雰囲気がツボ。
女性メンバーが2人おり、ヴォーカルとして登場することがある。また、そのうち一人はフルート奏者で、大々的に取り入れているところが独創的だ。
また、コーラスワークも素晴らしい。そういったモロモロの要素を取り入れながら、ギター中心の渋いサイケデリックサウンドを聴かせてくれる。
予備知識なくAmazonでおまけ的にゲットしたワリに、とりあえず非の打ち所が無い完成されたサウンドだ。楽曲も多彩で素晴らしい。
長くWitchcraftのファンで追っていたが、最近どうもオカシイので、こちらに乗り換えようかな、とちょっと思ってしまった。超オススメ。


LYKANTROPI - Spirituosa - Vestigia ★★★ (2020-10-10 14:48:23)

アルバム2曲目、この曲は女声ヴォーカルが担っている。
サイケ臭はあるが、シューゲイザー臭も仄かに漂っている雰囲気が抜群にイイ。
このギターのリフ、ドラムの刻み方、女声ヴォーカルという組み合わせから
Sonic Youthの「Goo」(1990年作)あたりの独特な空気に似ている。
この曲でまず、グッと惹きつけられた。


Lethal Outcome(Летальный Исход ) - И​з​б​ы​т​о​ч​н​а​я С​м​е​р​т​н​о​с​т​ь ★★★ (2023-08-25 01:10:40)

ロシア産オールドスクールデスメタル2022年作
未知のデスメタル発掘で発見したハイクオリティサウンド。バンド名はAIに翻訳してもらったから、英語名で活動しているかは不明。
バンド名の意味は「死に至る結果」、アルバムタイトルは「超過死亡率」と訳されるんだろう。
二つの山の谷の部分にある洞窟から血のような赤い液体が滝のように流れ、そこを人間が歩き滝壺に落ちているイラストのジャケ。
一見ローセンスなチープなジャケで、購入時も若干躊躇してしまったが、バンドコンセプトや楽曲タイトルを思えばこのジャケはピッタリ。
Самоистязание : 自虐、Суицидальное жертвоприношение : 自殺的な犠牲
というような曲名と、ジャケの雰囲気、バンド名とアルバムタイトルからコロナパンデミックをテーマにしているのかなと思ったが
Огонь : 火、という曲があるし、活動歴3年で2022年11月末にリリースされているので、むしろ戦争をテーマにしているのか。
恐らくどちらかのテーマがコンセプトになっているサウンドだろう。
サウンドスタイルは典型的な古学校死というよりは、そのジャンルに寄ったスラッシーなHMといった感じだ。視聴段階では気づかなかったが
インナーのメンバー写真を見ると、ヴォーカルは女性のようで、完成度の高いデスヴォイスを聴かせてくれる。
古学校死スタイルを含むギターの質感と雰囲気だが、楽曲構成がドラマチックで、シンセによる演出、聴かせるギターソロなどもある。
コンセプト的にやや抵抗を感じてしまうところはあるにしても、純粋に聴きごたえのある楽曲と適度な熱量の演奏は、かなりツボにハマる。
AIにこのバンドのことを尋ねてみたところ、ロシアのレーベル Metal Race と Satanath Records の共同リリースで・・・(中略)
・・・このアルバムは、ロシアのヘヴィメタルシーンに新風を吹き込んだ作品として評価されています、とのことだった。
共同リリース部分は当たってる。新風を吹き込んだと評価されているかどうかはウラが取れない。AIは平気でウソつくからね(笑)


MACALPINE - Eyes of the World ★★★ (2020-08-13 00:40:10)

米産AOR寄りメロディアスハード1990年作
ギターインスト、CABのようなフュージョンの方が馴染みがあって、ギタリスト視点だと、そっちの方が高評価なのはわかるが
Tony Macalpineは音楽の英才教育を受けているだけあって、ギターテクニックや鍵盤技巧のみならず、音楽的才能のポテンシャルが違い過ぎる。
たぶんこのヴォーカル入りのバンド形態の作品は、HR/HMブームの商業的な事情なんかもあったんだろうが、相当クオリティが高い。
クラシカルなギターはこの人の右に出る者はいない。その上、ジャズ・フュージョン畑でブイブイ言わせているだけあって、一口でクラシカルと
片付けられない多彩なコードワークが素晴らしい。この盤でも、時折見せるテンションノートを辿るギターソロが、単なるメロハーに収まらない
AOR的魅力を醸し出すのだ。クラシカルな旋律が多く占めるが、クラシカルロックが陥りやすい古典的な和声ばかりで構成される曲調には決してならない。
英才教育に裏付けられた作曲能力の高さに圧倒される。そこにハイテクニックな演奏が加わるんだから、この盤が悪いワケがナイ。他メンバーの演奏もアツい。
この盤発売当時は、あまり話題にならず、評価もあまり高くなかったと記憶している。↑でも書かれているが、B誌ってトニーマカパインのレビューは結構
辛口だったと記憶している。まあ、あの雑誌は低得点なほど素晴らしい作品が眠っているケースが多かったからなあ。
トニーは、癌を患って闘病生活をしていたみたいだが、2018年に作品をリリースしている。そのポテンシャルとテクニックは全く衰えていない。
ギターヒーローモノは殆ど買わないんですが、この人は別格なんだよ。アマゾンで買おうかどうしようか考え中に、ふとEYES OF THE WORLDを聴きたくなって
数年ぶりに聴いているが、やっぱりスゴイね、このアルバムは。


MALEVOLENT CREATION - The Ten Commandments ★★★ (2020-08-07 21:31:24)

米産オールドスクールデスメタル1991年作
処女作なのに圧倒的なクオリティを誇る名盤。このバンドは、ボクよりも一緒にバンドをやっていたドラマーが激ハマりして
一生懸命コピーしていたのがとても懐かしい。当時のフロリダデスメタルでは個性という点でDeath、Morbid Angel、Obituaryの方が
ストレートに受け入れやすかったのかも知れない。ただし、リフ構成で一線を画していたこのバンドの凄みはスルーされている感がある。
当時ボクはCoronerに激ハマりしてバンドを組んでコピーしていた時代だと思うが、Coroner、Malevolent Creation双方に共通するのは
3拍子、6拍子という、刻む数が3で割り切れる数のリフを積極的に取り入れている点だ。ベーシストだったボクとしては、こういう
リフを弾きこなすために3本指奏法を志すキッカケになったが、テンポ的にCoronerはかろうじてついていけてもMalevolent Creationは
そのスピード感とキレについていけず、早々に諦めた。3拍子と4拍子をハイスピードで巧みに使いこなす独特のリフは、当時はかなり新鮮だった。
物足りないというレビューもあるようだが、疾走感とドゥーミーさの双方を取り入れ、一聴してMalevolent Creationのリフだと判る独特な癖が
病みつきになる名盤だ。ただ、ボクはこの時代以降、疾走感を排除したよりドゥーミーな路線に徐々に傾倒していくので、この盤にハマって以降は、
同じフロリダデス勢では、Death、Obituaryの方にハマっていった。


MANDIBULLA - Bleeding Black ★★★ (2020-08-18 21:07:23)

ブラジル産ドゥームロック2019年作
この作品のレビューが書かれていた海外サイトをひとつだけ発見、トニーアイオミのソロ作品をイメージさせ、サイケデリックロックではない云々の
内容だったが、オイオイ、この盤のデザインとギター・ヴォーカルスタイルだと、引き合いに出すアーティストが間違っているよ、とボクは言いたい。
恐らくこのバンドはPentagramが好きすぎて、そのヴィンテージスタイルに忠実なサウンドを追求している筈だ。たぶんトニーアイオミではない。
まず、このジャケのバンドロゴが、Pentagramそっくり・・というより全く同じで、深いPentagram愛を感じずにはいられない。
そして、この音や楽曲スタイルが初期Pentagramそのもの!だから面白い。特にヴォーカルの声が裏返るところは、もはやモノマネとも言える。
ちょっと間違ってた某海外レビューの通り、サイケ臭は無い。Pentagram初期作品そのまんまの化石ロック的な音楽性だと思ってもらえばいい。
素直にカッコいい、ロックの原点的なサウンド。彼ら独自の新時代要素のような独創性はなく、Pentagram本家に酷似しているところが独創性だ。
初期Pentagramから愛聴しているボクとしては、こういうPentagram愛が濃厚な作品に、愛情を注がないワケにはいかない。
是非この路線を突き詰めて、本家Pentagramを凌ぐほどのヴィンテージロックサウンドに成長していって欲しい!


MANILLA ROAD - To Kill a King ★★★ (2021-05-13 02:22:20)

米国産エピックメタル2017年作
そもそも米よりも欧州・辺境国のメタルを優先してゲットするので、このバンドの盤はあまり揃っていないが、完成度やエピックワールドの雰囲気
演奏力や貫禄といった点で、もはやレジェンドの域に達しそうなバンドである。決して突拍子の無い奇をてらった楽曲は無く、理に叶った曲展開で
オーソドックスに聴かせるワリに、同系バンドの追随を許さない渋味や味わい深さを備える。このジャンルでは優等生というイメージが強いバンドだ。
非常に心地よいイーヴルなギターの歪みだが、中音域より上がほんの少しメタリック寄りで、音像に紛れることなくキャッチーな旋律が伝わってくるので聴き易い。
そういう音作りから職人気質が伝わってくる。また、無駄に力まない達観した感じのヴォーカルスタイルも然りだ。手数とバリエーション豊かなドラミングもイイ。
ボクが普段愛聴するドゥームに比べると当然音数は多く、テンポや展開も起伏に富んでいる。ギターソロは結構トリッキーで細やかな小技をビシバシ決める。
そういうサウンドはボクにとって結構苦手な部類に入りそうなモノだが、何故か全体的に地味目に聴こえてものすごーく自然体で聴けるからイイ。
昔はややB級ロックサウンドのイメージを持っていたが、流石に活動期間も長く、今となっては全くB級感が無い優等生だ。ワリと万人にオススメできる盤だね。


MARE INFINITUM - Sea of Infinity ★★★ (2020-08-14 23:26:25)

ロシア産ドゥームメタル2011年作
9年前の購入当時は結構ハマって聴いていた。フューネラルドゥーム寄りのドゥームだが、芯のあるヴォーカルがデスヴォイスとクリーンヴォイス
を使い分け、結構な存在感で声を張って歌うので、白玉垂れ流し系ドゥームではあるものの、人生残念サウンドにはなりきっていない。
また、ギターも結構ヘヴィな上、シンセが分厚く前面に出ているので、全体的に力強い非常に聴き応えのあるサウンドだ。
とても面白い音楽性だと思うんだが、ちょっとボクのストライクゾーンからは外れる。決してクオリティが低いワケではない。
フューネラルドゥームには、残念感や静けさ、死臭やカルト臭といった風味を求めるので、ボクは徐々にこの盤は聴かなくなっていった。
次作が宇宙ジャケで2014年にリリースされており、そちらは引き続きドゥームサウンドではあるが、やや前衛的になり若干テンポアップしており
ボクとしてはフューネラルドゥームでは禁じ手と思っているツーバスが一部挿入され、パワフルな好盤ではあるものの、ゲットする
までには至らなかった。


MASSACRE - Resurgence ★★★ (2021-12-02 00:04:14)

米国産デスメタル2021年作
From Beyond(1991年作)は高校卒業前に愛聴していたのをよく覚えている。当時はB誌を購入しては、レビュー低得点作品やモノクロページの広告を見て、
得体の知れない気持ち悪いジャケのメタルにバイト代をつぎ込んでいた。今にして思うのは、高得点レビュー作品よりもモノクロ広告通販の盤の方が愛聴度が高かった。
MASSACREはまさにそれだ。当時友人から貰ったライヴ音源(未だに出所がよくわからない盤、海賊版だろう)の方が内容が素晴らしかったのは玉に瑕だが、
From Beyondは何故かツボにハマった。しかし、PROMISE(1996年作)は一定期間努力して聴いたが、結局ボクのツボには全くハマらず、どう評価して良いのか、
よくわからない作品だった。ここでボクの中で過去のバンドになってしまう。
Back from Beyond (2014年)は、このあからさまなアルバムタイトルとジャケに猜疑心を持ちつつ、試聴してもシックリこない感じで結局静観した。
結局この路線は、MASSACREは見限り、Bolt ThrowerやBenedictionあたりを追いかけ続けた感じだ。
このバンドに求める魅力は、ズトボコB級楽曲でありながら、最高の音像で奏でられるギター&リズム隊、という作風だ。Bolt Throwerに求めるモノと同等だ。
Bolt Throwerよりもやや突進力があったところも魅力のひとつである。その音楽性を保っていたのは、From Beyondのみであり、それ以降はかなり微妙である。
このバンドはメンバーが固定せず、恐らくメンバー内で対立がある。結局、今作品はBarney Kamalani Lee(当時のヴォーカル)が復活、他のメンバーは
一体誰?という布陣で、前作までのメンバーは全員去っている。もはやMASSACREじゃないだろ、という世間からの酷評が聞かれそうな予感はしている。
メンバー構成に疑問はあるものの、サウンド自体はまさにMASSACREに求めるモノを備えており、なかなか上質なデスメタルを聴かせてくれる。
そもそも国内では酷評を受けたバンドであり、オリジナルメンバーがヴォーカルのみで、デスメタル黎明期を体験した世代向けの化石オールドスタイルなんだが
果たしてコレをゲットしようと思うリスナーはどれくらいいるんだろう、と思う。ただ、B級オールドスタイルのデスメタルとしてはかなり上質だと思う。
また、購入の決め手となったのは、このジャケである。Wes Benscoterという人が描いているジャケだが、この人の描くジャケから漂うB級デスの雰囲気
特に骸骨の描写はホント素晴らしいと思う。最近では、Crypta「Echoes Of The Soul」やHooded Menace「The Tritonus Bell」をジャケ買いしているが
この人の描くジャケが作品のクオリティを随分底上げし、ワクワク感が沸々と湧いてくる。
今作のジャケ、骸骨に纏わりつくタコ足のようなモノや、目玉のついたモノリスっぽい物体、翼の生えた緑色の得体の知れんバケモノは何なんだ?ウケる。
Benedictionもまだまだ頑張っているし、Massacreもちょっと追いかけようか、という気持ちにさせる好盤。最近の通勤中のBGMはコレだ。


MAUDLIN OF THE WELL - Part the Second ★★★ (2020-05-27 23:48:01)

米国産アヴァンロック2009年作
Kayo Dotの活動に専念しているのかと思っていたが、フィンランドのBlood Musicレーベルから8年のブランクを開けてアルバムをリリース。
もはやこのバンド名義で活動しているとは思ってもいなかったし、これだけブランクを開けての新作だと全く気付かないよ、ホント。
ボクは数年前にたまたま気付いてゲットしたが、過去3作品のいずれかでもツボに入っている人は、必ずゲットすべき神盤だ。
ポップアートのようなジャケ、ユーモアたっぷりのセンス、次の展開が読めないコード進行、それでいて不自然さのない楽曲。
仕掛け人のToby Driverの卓越したセンスと演奏力は素晴らしく、ライトなポップロック・リラクゼーション的サウンド・不穏でヘヴィなギター
70年代プログレテイストなど、前衛的手法を織り交ぜながらいろいろな音楽を組み合わせて、楽曲を構成している。特にラストの曲のインパクトは絶大だ。
Kayo Dotよりもこちらのバンドでのスタイルの方がボクは好きなので、このまま消滅させずに、こちらのプロジェクトにも力を入れて欲しい。
余談だが、Blood Musicレーベルは、アヴァンロック、シンセサウンド、ブラックメタルなど多彩なアーティストの作品を手掛けているが
総じてレベルが高いと感じるので、ボクはワリと多くこのレーベルの作品をゲットしている。


MEGADETH - Dystopia ★★★ (2020-05-19 22:50:33)

米産テクニカルスラッシュ2016年作
80年代後半、クロスオーバーブームをモノともせず、コマーシャル要素など無く硬派にテクニカルスラッシュをやっていたのは
音楽性やステージパフォーマンスを含めても、Megadeth、Coroner、Forbiddenがボクの中で3大バンドだった。
90年代以降、各々のバンドの音楽性が変化・深化していくが、どうもMegadethだけCountdown to Extinction(1992年作)以降、
ボクの感性にフィットする進化を遂げたとは言い難く、そのワリに変化を受け入れるリスナーが意外と多く、当時は理解不能だった。
Rust in Peace(1990年作)までがボクのツボにハマったが、その後の脱スラッシュやギターのメンバーチェンジ、音楽の志向性など
どの盤も良い作品を捻り出そうと試行錯誤していただろうが、初期作品の衝撃を上回るモノは感じられず、1枚も買わずにずーっと静観してきた。
新作リリースの間隔が短く、佳作を乱発するイメージが固定してしまい、作品リリース毎に一応チェックはするんだけど
期待感はどんどん薄くなっていく、ボクにとってMegadethはそういう位置づけにあったのが正直なところだ。
ところが、この盤には、初期の緊張感溢れるリフ・理に叶った複雑な曲展開という元来あった持ち味が蘇った、と感じさせる内容だ。
この盤からチェンジしたギタリストはボクには馴染みのないバンド(ANGRA?一般では超有名バンドみたいだが)の出身みたいだが
Megadethの音楽性にものすごーくフィットしているように思う。収録曲終盤までその緊張が続くとまでは言えないが、少なくとも
前半の曲構成とギターの雰囲気はホント素晴らしいと思ったよ。Megadethに求めるのは、キャッチーにヴォーカルを前面に出す歌モノでもなく
Endgameのようなまるでギターヒーローに特化したかのようなテクニカルさでもない。
今作のような、ヒリヒリした危機感を感じる空気の中、次々に繰り出す曲展開、全パートが有機的に絡み合う硬派な作風がイイんだよ。


MEGADETH - Th1rt3en (2023-10-23 02:52:40)

米国産テクニカルスラッシュ2011年作
MegadethはRust in Peaceまでしか受け入れられないと、以前どこかで書いた覚えがあるが・・・
特にボクの感性が拒否してしまう盤がコレ。(その次にEndgameあたりが苦手)
音楽だけではなく、映画やゲーム、アニメ、様々なサブカルチャーに暗示が含まれていたり
特に音楽においては、サイコアコースティックといったあまり解明されていないサブリミナル的な効果や
世論や思考の扇動、より強く印象付けることや、個人判断の動機付けや、印象操作ということが
サブカルチャーを通じて意図的に行われている・・的なことが、もしかしたらホントにあるのかなー
ということは、結構若い頃から考えておりまして、学生時代の卒論なんかでも、それに近いテーマを扱ったりと、
ワリと陰謀論的に扱われて軽視されてきたこのテのアヤシイ屁理屈を、年齢を重ねた今でも、
どちらかというと「信じてる派」なんですが、ワリとそういう理由で受け付けない盤がコレだ。
まあ、エンターテイメントとして描いてるんでしょうが。
一般的には忌み数、国によっては聖数の「13」をタイトルとした盤は、まあ、BlackSabbathなんかでもあったが・・。
この盤には「Sudden Death」※突然死、「New World Order」※世界統一政府、「Black Swan」※予測できない経済変動
という曲名があってなんだか世の混乱を先取りしてる感がなんだか生理的に受け付けない。
この盤発売当時はそんなことは考えませんでしたが、まあ、2、3年前に、そういえばこの盤にNWOの曲名があったなと気付いたワケで。
音響的にはツボなバンドでYouTubeチャンネル登録もしてるから、まあ、かなり好きなバンドなんですがね。
NWOについては、多くの人は都市伝説と思ってるか、あるいは、なにそれ?という感じでしょうが
今の世の混乱が世界統一政府樹立の一環という視点も、あるっちゃある、程度に一応心に留めているボクとしては
まあ、この盤は結構不気味なんだよね。
単に楽曲を評価したとしても、Megadethのアルバム中、かなり微妙だと思うし、コレをボクは好んで聴くことはなく
残念ながら別室倉庫に収納されている。


MEGADETH - The Sick, the Dying… and the Dead! - We’ll Be Back ★★★ (2022-07-25 06:21:03)

Rust in Peace(1990年)までしか受け入れられないんですが、この新譜のこの曲は素晴らしい。
先月くらいにMegadethのYouTubeチャンネルが更新されて、この曲のPVが追加されたんよね。
まあ、相変わらず映像は戦争や暴力を彷彿させて、最近の社会情勢的にはなんだか抵抗があるんですが
カッコいいんですよ、この曲。
ヒリヒリする緊張を伴うギターのリフ、サビの後のブレイクなんか、良い頃のMEGADETHが帰ってきた!と思わせる。
久しぶりに映像で見ると、なんか老けたなぁと思うんですが、音は全く衰えていません。


MEGADETH - United Abominations - Washington Is Next! (2023-10-23 03:04:07)

アメリカ政府の腐敗、自分自身を悪の王に例えて「ワシントンが次は狙われる!」と歌っている。
人々を貧しく愚かに保ちつつ、家族や教会を攻撃して新世界秩序を推進する、といった内容を
古代エジプトやローマ帝国の暗喩を用いて歌詞が作られているようだ。
実際にワシントンのグローバルエリートが失脚するんじゃないか、と思っているボクとしては
こういうネタはエンターテイメントの枠を超えてしまってる感があって、ボク的には生理的に受け付けないんだよ。
このへんからMegadethはおかしくなったよね・・。


MEKONG DELTA - In A Mirror Darkly ★★ (2020-05-02 01:19:14)

ドイツ産テクニカルスラッシュ2014年作。
創始者ラルフ・ヒューベルトがこのバンドを始動したのが1980年代、現在は演奏技術の高いバンドが多くなったが
当時のスラッシュメタルバンド群では、抜きんでて演奏技術が高く、ステージパフォーマンスでは再現できないのでは、と言われたほど。
何拍子なのかもわからない程に複雑怪奇な変拍子リフを多用し、もはや聴かせるというより演奏技術の限界を追求するような志向性が窺える。
また、クラシックを融合させたバンドで、HRとクラシックを融合したネオクラシカルメタルこそやってるバンドは多いが、
クラシック音楽とテクニカルスラッシュメタルをクロスオーバーしたバンドはこのバンドしか思いつかない。
ムソルグスキーがよほど好きなのか、過去作には、ムソルグスキーの楽曲を融合した作品がある。
個人的には「禿山の一夜」を融合させたDances of Deathが一番好みだが、もはや禿山の一夜が複雑怪奇なスラッシュになっていた。
そういう下地のあるバンドだが、今作はどうやら単にテクニカルスラッシュの限界に挑戦するアルバムで、クラシック音楽は混ざってなさそうだ。
とりあえず一聴しただけでラルフヒューベルト臭溢れる楽曲群、変則リフとハイテクニックのオンパレードで相当疲れるが、このバンドはこうあるべき。
しかし、現在はハイテクニックバンドが増えたので、インパクトが薄れつつあるのも正直なところだ。それでも、このバンドのハイテクは一聴の価値がある。


MEKONG DELTA - Pictures at an Exhibition (2020-05-02 01:26:30)

ドイツ産テクニカルスラッシュバンドの全くスラッシュしていない作品1996年作。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」をギター・ベース・ドラムで再現、アレンジは最小限で、ほぼ完コピした作品。
完全にこの人たちの趣味に走ってしまった感の強い、もはやムソルグスキーのピアノCDを聴いた方がいいじゃん、とツッコミを入れたくなる。
これがスラッシュしてたら面白いんだけど、全くスラッシュしていない残念な作品。
ただ、誰もこういう事をやっていない、という価値は認める。


MEKONG DELTA - Tales of a Future Past ★★★ (2020-06-07 16:33:14)

ドイツ産テクニカルスラッシュ2020年作
ラルフヒューベルトの作品は集中力が削がれてしんどいからもう買うまいと思ってたが、過去作に比べてジャケが美しいので一応ゲットした。
ギターの質感がややソフトになって、若干聴きやすくなっている上、シンフォニックな要素を入れたことで耳に馴染みやすい。
変則リフの連続で疲れるかと思っていたが、そういうソフトなところがうまく調和して、少なくとも前作よりは聴きやすい印象だ。が、それでも疲れる。
Mekong Delta作品全般に言えることだが、複雑過ぎて印象に残るリフというのが案外ない。今作でもそれは同じだ。
もうここからは好みだが、個人的にDances of Deathが一番好きな盤だったが、それを超えたかどうかというとどっこいどっこい。
少なくともこういう複雑怪奇な音楽は、耳に馴染むのに相当時間がかかるし、疲労感を受け入れて繰り返し聴くかどうかだよね。
ボクも年齢的にしんどい作品をあまり好まなくなってきているが、しばらくはこの作品を繰り返し聴いてみようか、と思っている。


MESMUR - Terrene ★★★ (2020-10-05 02:33:35)

ロシア産フューネラルドゥーム2019年作
鈍重でゴリゴリの引き摺るようなギターノイズが絶品な濃い葬式要素を多分に含みながらも、音の塊で圧死させる類いのサウンドではなく
アトモスフェアな静けさを伴うサウンドだ。そんな音をバックに、割と歪み少なめの不協和ギターコードを乗せた時の不穏な雰囲気がツボ。
ギターによる明確なメロディはあまり登場せず、不協和を連続させることで荒廃した世界を描いたアバンギャルドな作風で、きっと聴き手を選ぶ。
風のようなシンセ、抜けの良いドラム、ケモノのようなデスヴォイス、重低音のベースなどグッド。そういう音の束が全てクリアに聴こえ
最適な残響音で聴かせるところがウマい。全体的に各パートの音のバランスが適切で、そのハーモニーをじっくりと楽しむといった感じだ。
ロシア的な暗さ、醜悪で気持ち悪いリフなど、真性フューネラルドゥームでありながら、疲れを伴う音圧が無いところが素晴らしい。
また、よくある白玉垂れ流し超スロードゥームではなく、割と起伏に富んだ展開をする。しかし決してフューネラルドゥームの範疇から
外れることはない。他のフューネラルドゥームバンドには無い独創的な異端ドゥームだ。ダークサイドなリスナーには猛烈にオススメ、マストバイだ!


MESSIAH - Choir of Horrors ★★★ (2021-02-23 00:17:52)

スイス産スラッシュメタル1991年作
「Extreme Cold Weather(1987年)」と比べると、演奏が整然とし、中音域以上を強調したギターから、より聴き易い音質に変化している。
この変化は悪くない。が、MESSIAH特有の個性が若干薄まった感がある。とはいえ、独特なリフ構成や突発的なテンポチェンジといった
固有のサウンドは失われていない。むしろ、録音状態が向上し、過去作で感じられる粗雑・未完成感が払拭されたと感じさせる。
しかし、個人的には、MESSIAHの盤ではお気に入り度は低い。磨かれていないダイヤ原石的な「Extreme Cold Weather(1987年)」が持つ
未完成ながらも特殊な音質で構築される音楽性からの喪失感の方が大きい。また、クオリティ的に完成形を見たと感じさせるRotten Perish(1992年)への
過渡期を思わせる作品であり、前作と次作のクオリティの高さの狭間にある感じだ。それでも、完成度は高い。
ホッキョクグマイメージが消えたこの盤から、本来バンド名から想起される世界観(Messiah=救世主)がより強く感じられる。
Choir of Horrorsの教会イメージ、Lycantropus Erectus(恐らく狼男)、Münchhausen Syndrom(自傷行為を伴う精神疾患)などの曲想が
魅力的で、まさに救世主メサイアがその独創的な世界に導いてくれるのだ。


MESSIAH - Extreme Cold Weather ★★★ (2021-02-22 23:40:13)

スイス産スラッシュメタル1987年作
MESSIAHを初めて体験したのは高校時代友人が持っていたこの盤を聴かされた時だったが、当時は魅力がさっぱり理解できなかった。
スイスといえば、Hellhammer~Celtic Frost、Coronerというレジェンド級バンドがいるが、当時はメタル未開拓な辺境のイメージは持っていた。
国籍による情緒の違いを意識し始めた頃で、スイスメタルに興味を持った頃に初体験をしたワケだが、少なくとも音楽性よりもアンバランスなジャケの
インパクトがとにかく印象に残ったバンドだった。高校時代から随分経ってからこの盤をゲットしたが(たぶんリマスター盤で2002年ロシア盤)
ジャケが可愛いといって当時の女友達に持ち帰られすぐに紛失。昨年再び購入に至ったワケだが、とりあえず同じ作品を何度か体験してわかったのは、
原盤、2002年露リマスター盤、今回ゲットしている2018年独リマスター盤では、中盤以降の収録曲が異なっている。リマスター盤はそれぞれお得感があるが、
2018年独リマスター盤には迷曲Space Invadersが収録されているのが嬉しい。ちなみにロシア盤にはデモ時代の音源が数曲収録されていた。
もしゲットしたいと考えているなら、どのリマスター盤にするかをよく調べてからゲットして欲しい。
凍てついた氷の大地にホッキョクグマがいる実写のジャケに、トゲトゲしいバンドロゴが大胆に描かれる、メタルジャケとしては珍しいデザインである。
そのジャケのインパクトは絶大で、初体験時には全く理解不能だった世界観も、今となっては辺境メタル特有の味わいが感じられて素晴らしい。
ジャケのインパクトが強いため、そちらの話題性が先行しがちだが、MESSIAHの音楽は唯一無二の個性、激しさ、豪胆さがあり、ハマれば抜け出せない。
この盤のサウンドの特徴としては、低音をカットし中音域以上を強調したかのようなエクストリームなギターの音にディレイをかけた感じが他には無い個性を放つ。
また、デモテープ時代「Powertrash(1985年)」には、まるでHellhammerのような、ポンコツ紙一重でありながら魔性・暴虐さが前面に出た強烈な独創性があったが
そこで培われた豪胆さ、突発的な、爆発的な勢いがこの盤には宿っている。ジャケイメージが手伝って、ホッキョクグマの獰猛さを描いているように感じられて
とても深い味わいがある。また、一応ジャンルはスラッシュメタルとしたが、デモテープ時代にはアンチクリスチャン的な楽曲もあり、ブラックメタル要素もある。
ヴォーカルはどちらかというとブラックメタルスタイルだ。また、ドゥーミーな要素もあり、結構多彩な楽曲である。ギターソロは滅茶苦茶に掻き毟るような
勢い任せの激しさがある。同郷Hellhammer全盛期頃に世にデモテープが出ていることもあって、Hellhammerの影響を強く感じさせる音楽性である。
このバンドはマニア向けだとは思うが、地元スイスでは絶大な人気があるようで、その魅力はもっと広く知られて然りだ、と思う。


MESSIAH - Fracmont ★★★ (2021-02-26 11:49:49)

スイス産スラッシュメタル2020年作
昨年末に発見し、再結成モノで最も衝撃的だった作品。随分前に解散した筈だったが、前作のメンバーが結集して新作を出すとは思っていなかった。
ライヴ盤やEPを除けば、実にUNDERGROUND (1994年)以来、26年ぶりのフルレングスアルバムじゃないかな。
地元スイスで絶大な人気があったようだが、ここでも書き込みを見ても、MESSIAHはマニアご用達で日本ではあまりに無名な様子。
知名度が低くコレクターアイテムとしてただ持っておきたいという類いのバンドではなく、魅力のある特有の味わいが楽しめることをもっと広めたいところだ。
この盤発表直前に3曲入りEP「Fatal Grotesque Symbols ⸗ Darken Universe」が発表されており、新曲1曲以外は、看板曲かつ迷曲Space Invadersと
ホッキョクグマサウンドExtreme Cold Weatherが最新の音響で録り直しされており、後期作品からのチョイスは無い。このEPからは、後期作品の硬派な魅力よりも
Extreme Cold Weather時代の独自性を志向しているのかと思わせる。今回の新作は、後期作品の硬派なギターの音質から繰り出されるリフといった魅力が影を潜めて
中音域から高音域を際立たせ、深めの残響音を効かせる初期作品の音響に回帰したと思わせる。オーソドックスで真面目な後期作品の音響的魅力を代償とし
レアで独創性豊かな音響を選択したことは好みが分かれる点で、とてもリスキーな選択だろうと思う。当然当時の録音状態から飛躍的にクオリティがアップしている。
初期と後期は別の味わいがあり、どちらも捨てがたいところだが、ボクとしてはオンリーワンな個性である初期のエクストリームな感触が蘇ったことに拍手を贈りたい。
後期作品に一貫していたMESSIAH(救世主)に相応しいテーマの楽曲群であることが素晴らしい。曲中には神聖さを醸し出すシンセサウンドが挿入されており
爆発的な演奏との対比は、このサウンドの救世主的世界観を想像させる。テンション高めなリフ、突発的にスピードアップし滅茶苦茶に掻き毟る感じは
元来MESSIAHが持っていた固有の魅力であり、その魅力は全く失われることなく、むしろ最大限に発揮されている。
今回のジャケ、ローブを纏った血塗れの男が描かれている。当初このブラッディなジャケに違和感を感じていたが、ここ3ヶ月くらいこの作品を堪能して改めて見ると
背景の山岳には鷹が飛び交い、救世主であるローブの男が何故か水たまりで腰まで水に浸かっているシチュエーションがむしろ面白く、趣きを感じさせる。
CDケースサイズ×9の大きさのポスターが同梱されているが、壁に貼るかどうか悩ましいところだ。血塗れじゃなければ玄関先に飾ってもいいんだけどな。


MESSIAH - Powertrash - Space Invaders ★★★ (2021-02-24 01:45:43)

このバンドの魅力は初期のデモテープ時代に凝縮されているが、特に異質さを感じさせるのは、このスペースインベーダーだ。
特に優れた楽曲というワケではないが、The Doomから始まりAntichristで終わるこのアルバム内で、とてつもない存在感がある。
単なるブラックメタルやドゥーム、スラッシュメタルとは一線を画す独創性を志向していることが、この楽曲から伝わってくる。
このセンスがMESSIAHの大きな魅力だ。


MESSIAH - Rotten Perish ★★★ (2021-02-24 01:36:42)

スイス産スラッシュメタル1992年作
前作「CHOIR OF HORRORS (1991年)」から飛躍的にクオリティアップした、MESSIAHの音楽性の完成形を思わせた作品。
ジャケがより世界観に忠実なデザインになり、額に入れて飾りたくなるほど味わい深いアートワークに変化。
なんといってもこの盤の魅力は、硬派な最適な歪みを持つギターの音像にある。派手過ぎず、過去作のような特殊なギターサウンドではなく
HM路線のオーソドックスな音像となり、そのギターが奏でる構築的な個性的なリフがより引き立つ。本来このジャンルに求められる魅力が
大幅にアップした印象だ。前作までのB級感が払拭されて、このジャンルのサウンドではトップクラスの味わいがある。
しかし、過去作までにあった、狂気をも思わせる突発的にエンジンがかかるような破天荒な勢い、特有のグルーヴ感がほんの少し影を潜めた感はある。
初期のアンダーグラウンド臭や滅茶苦茶に掻き毟る毒気は、クオリティの上がった録音状態により失われた。ただ、それを代償としたとしても
MESSIAHの魅力や持ち味は決して失われておらず、破天荒さの喪失・粗雑だからこその魅力が喪失したものの、音響と楽曲クオリティが
それを補って余りあると感じさせる。
前作同様に描く世界観が「救世主」ぽいところが良い。また、このバンドは面白い独創的なテーマの曲を多く残すが、この盤もしかり。
Living With a Confidence(自信を持って生きる),Alzheimer's Disease(アルツハイマー病)あたりの楽曲が、このバンドらしい味わい深さがある。


METALLICA - 72 Seasons ★★ (2023-10-26 01:04:41)

米国産HM2023年作
前作が結構好きだったので、今作はどう?という感じだったが、まあ、前作の方が好みかな。
初期4作品を愛する高齢者リスナーですから、まあ、それ以降の作品自体にあまり愛着が沸かないんですが。
少なくとも、ギターの音像と安定感のあるリズム隊、特有のワウを咬ませた粘り気のあるギターソロは
他のバンドよりも高い位置のクオリティを持ってて、流石王道を突っ走ってきたバンドだな、という感じだ。
大作主義について賛否両論なのか、ボクは雑誌というものを全く見ないのでわからないが、ココの書き込みを見る限り
否定的な意見も出てるみたいですが・・ボクはそもそも苦行ドゥームファンなのでそこは意外と気にならない。
ルート音から理に叶った進行しかしないシンプルなコードワークや凝ったハーモニーがあまり登場しない楽曲を
原点回帰ととるか、面白みがないととるか。ボクは後者でして、そこが面白くない。
音響的には鉄板のクオリティを保ってて、バンドメンバーが高齢になっても進化しているなと思うものの
作品毎に失われているのは、コードワークやハーモニーの妙、といったところだろうなあ、というのがボクの感想。
初期作品はそういった面白さがあり、更に変拍子の妙があったワケでして、そこに魅力を感じた高齢リスナーは
流石古参バンドと思いつつもどこか退屈さを感じてしまうんじゃないかな。
各々の演奏力が高く個性を持っている分、抜群のタイム感や中毒性の高い音像があるからある程度大作主義でも楽しめる。
但しこれを愛聴し続けるかというと、ちょっと疑問符かな。前作か初期4作品を手に取るだろうな。


METALLICA - Hardwired… to Self‐Destruct ★★★ (2020-04-23 19:17:42)

初期作品And Justice for allまでが自分のストライクゾーンで、ブラックアルバム以降は
熟練の作品としてクオリティの高さは認めても、あまり好きになれなかった。
DeathMagneticも当時買いましたが、あまり聴かなかったな。
この2016年作はごく最近手に入れたんですが、どうも賛否両論のようで。
初期作品の濃厚な哀愁や、HM的音圧で押し切る感じや、コンセプトアルバム的なストーリー性云々などは一切無く
元々のメタリカのルーツであるNWOBHMに限りなく近い、ロックの原点、ヴィンテージ臭すら感じられるサウンドだ。
全く新しい何か、とか、奇をてらったような、突出した世界観というのは無い。
無駄を削ぎ落し、音圧も控えめに、各々メンバーが培ってきた熟練した技術を最大限に発揮した演奏を聴かせる。
路線がブラックアルバムやDeathMagneticの延長と見る人も多くいるようですが(確かに一理あるが)
それらの作品以上にコマーシャルな部分を排除した、時代を遡って原点回帰したかのようなスマートでクールな作品。
後期作品を全く受け付けなかったのに、この作品は自分のツボに入りまくる。
マニアック路線ばかり追求して、有名バンドを聴く行為自体、自分のステイタスに反するという妙なポリシーがあるものの
この作品は認めざるを得ず、長く愛聴するだろうと思う。


METALLICA - …and Justice for All - …and Justice for All ★★★ (2020-09-08 22:11:56)

この頃のMetallicaが一番ツボにハマる。これくらいの大作主義で適度に変拍子を加えながら構築的な楽曲をやってる彼らが一番カッコいい。
ギターソロ、トリッキーなドラムのリフ、スピードの緩急、リフを繰り返すことで没入できる楽曲など完璧。
この盤の曲は全てスゴイが、アルバムタイトル曲だけあって作り込みが半端なく、この盤の世界観をバッチリ醸し出している曲だ。


MIRACLE FLAIR - Angels Cast Shadows ★★★ (2022-03-12 01:15:00)

スイス産ヘヴィメタル2016年作
スイスを代表する神バンドCoronerが再結成して、ニューアルバムはまだかまだかと待ち続けてGrin(1993年)から約30年目が来ようとしている。
その後未発表曲の盤やDVD作品なんかはリリースしているが、フルレングスアルバムについては未だ続報は無い。まあそれは置いといて・・・
CoronerのギタリストTommy T. Baron(今は本名Tommy Vetterliで活動中のようだ)は、地元スイスの後続バンドのプロデュース・ミキシングに
力を入れているようで、このMiracle Flairはそのバンドのひとつだ。(我が家にはもうひとつ69 Chambersというアーティストの盤もある。)
また、有名どころではEluveitieというバンドにも深く関わりを持っているようだが、こちらは完成しすぎ感がボクの好みに若干合わない。
さてこのバンド、ギタリストは専らこのバンドのみで活動しているようだが、そのギターの音像は、割とCoronerのGrin時代の音に近い感触があり、
Tommy Vetterliがミキシングに関わっている影響はかなり強いと感じられる。なので、彼のギターが好きだったリスナーは結構ツボにハマるだろう。
このバンドは女性ヴォーカルが割と真面目に正統派な歌い方をし、楽曲もHR的なアップテンポが多い。キャッチーでクラシカルな印象を持つ。
その点で、Coronerのインテリジェンスでダークな音楽性とは全く異なるが、ギターを始め全体的に心地よく結構ハマって聴き続けた盤だ。
Synchronism(2020年)も素晴らしい作品だが、更にクラシカルさが前面に出た印象で、どちらかというと僅かに完成度はこっちが上かなと思う。
また、69 Chambersも女声ヴォーカルのバンドで結構ギターの音作りがCoronerっぽいが、バンドスタイルにちょっと癖があって好みが分かれそう。、
まあ、どちらも捨てがたいが、こっちのバンドの方がボク好みである。また、気が向いたらこれらの盤もレビューしてみようと思う。
ちなみに、再結成したCoronerのドラマーはDiego Rapacchiettiとなっているが、このバンドやEluveitieにも参加している。


MISFITS - Legacy of Brutality ★★★ (2020-05-07 13:04:53)

米産パンク1985年作。
完全にダークサイドな魔力に魅了される以前のグレンダンジグが在籍していたバンドで、ボクはMisfitsはグレン在籍時のサウンドしか受け付けない。
Misfitsの作品群はやたらシングルが多いし、紆余屈曲あり判りやすく順番にリリースしていないなどで非常に蒐集しづらい面があるんだけど
一番ハマって聴いたのはこのベスト盤である。音楽性は随分とパンクロック寄りで、弾けるような勢いはもちろん魅力のひとつなんですが
やっぱり最もカッコいいのはヴォーカルのグレンの説得力のある、全身から毛が生えそうな男臭い歌なんです。
喧嘩別れして以降、グレンが抜けたMisfits作品は1枚も買わなかったが、4年程前にグレンが再加入してオリジナルメンバーMisfitsが復活しているらしい。
もし今後Misfitsの新作が発表されれば、マストな作品であるに違いない。


MISTRALTH - But a Walking Shadow ★★★ (2020-08-31 23:49:49)

フィンランド産ダークメタル2019年作
ジャンルはドゥームでも良かったんだが、ダークメタルの方が何となくシックリくる。遅いテンポであっても鈍重という感じではない。
定番モノクロジャケだが、表は積み石が敷き詰められた山岳、裏面は鬱蒼とした森林、中身は雫が滴る針葉樹アップ、曇り空という
自然崇拝ジャケとしては100点満点の浪漫を感じさせるクオリティだ。そういう情景を思い浮かべながら堪能するサウンドだ。
しかし、Grey、Forbidden、Breathe、Empty、Nothingnessという曲タイトルが示すように、内省的な、無気力、鬱、絶望という要素が色濃い。
雨のサウンドスケープから始まり、ラストも2分程度の雨のサウンドスケープでフェードアウトする。曲中は自然の空気を感じさせるシンセが
幾重にも挿入される。ギターの質感は森林崇拝ブラックの浅めの歪みのザラザラ感に近い。ヴォーカルスタイルもどちらかというとブラック的な響きだ。
そういう音で、ミドルテンポ主体のドゥームに近い感触のドラマチックな楽曲をやっている。ヘヴィさや凄みで暗さを表現しているのではなく
メランコリックな旋律、物静かな雰囲気、美しいシンセ(特にコーラス・ヴォイス系シンセ)で表現しているところが素晴らしい。
フィンランド産特有のカルト臭を期待して買ったワリに、そういう要素は全く無く、自然崇拝・孤独感と美しさが前面に出ているサウンドだった。
ブラックやドゥームとは肌色がちょっと違う淡々としたダークメタルで自然崇拝モノ鬱系という、今までありそうで、意外と無かったスタイルがツボだ。
最近ゲットしたCDの中で、何故か高値(他のCDの倍くらい)だったが、この作品を鑑賞して何となく納得できた。超オススメだ。


MIZMOR - Yodh: Live at Roadburn 2018 ★★★ (2020-07-08 01:43:25)

米産ドローン・ブラック寄りドゥーム2018年作
最近ローランDEATH氏が猛プッシュして書き込みしてるので、是非ゲットしてみようと思いあちこち探したんですが
スタジオ盤は海外から輸入しないと無理っぽく、しかもこのコロナ騒ぎでいつ届くやら・・というワケで
唯一このライブ音源が日本のショップ(しかもアマゾン)で簡単にゲットできた。ここ数日コレを楽しんでいる。
基本ドゥーム作品のライブ盤は好まないのだが、この盤はまるでスタジオで万全の体制で録ったかのような素晴らしいクオリティだ。
まあ、演奏が終わった時の拍手とかが余計なんだけどね。いずれスタジオ盤をゲットしたいところだ。
トレモロリフを織り交ぜながらも鈍重な沈み込むような遅さ、重低音が魅力。ここまでテンポダウンしてくれると激しい音でも聴きやすい。
疾走するパートもあるが、ブラックメタルに慣れた耳であれば、とても心地良い。というか、そもそもジャリジャリ感あるギターと
絶叫するヴォーカル、疾走時の割れ気味なドラムの質感は、むしろブラックメタルリスナー向けのスタイルだ。
歪みやハウリング、スクラッチを効果的に聴かせるドローン的演奏に、激しくも擦れ気味のヴォーカルが響き渡る音空間が絶品だ。
このカオティックな音空間は、ハマれば癖になる。ビニールにカオを押し付けたようなジャケが意味不明だが、コレはYodh(2016年作)の
顔オブジェをビニールに押しつけてみました的なデザインなんでしょうね。


MJOD - The Whisper of the Last Winter ★★★ (2020-08-30 23:26:46)

ロシア産ペイガンメタル2020年作
タイトルはロシア表記でШёпот Последней Зимыだ。
黒地に民族衣装を着た人々や民族楽器・植物をあしらった白いデザインのジャケ、バンド名のロゴは木の枝が生え、鳥が2羽羽ばたいている。
普通の紙ジャケに比べて光沢のある上質な紙を使用しているので、このデザインが黒地に映えて光るルーンの紋章のような感じに見えてグッド。
鳥ジャケフェチ&森メタルフェチとしては、このジャケで無条件で買い。このテのジャケのCDもかなりの数集まってきた。
今回ロシアで買い物した際、このバンドと、もうひとつとても素敵な鳥ジャケのCDをゲットしている。大自然を感じるメタルっていいよね。
さて、このバンドは初めてゲットしたんですが、2018年から既に2作品リリースし、コレが3作目のようだ。
5人のメンバーのうち、1人は女性。民族楽器を演奏しているようだが、胡弓のように3本弦を弓で弾くタイプのあまり見たことがない形の楽器だ。
ギターのようにストラップをつけている。たぶんダルシマーじゃないかなとは思うんだが、普通よく見るダルシマーとちょっと形が違う。
ややブラックメタル寄りのシャリシャリザラザラ感のあるナマ音に近いギターとタイトなリズム隊が耳に馴染みやすい感じでブラストは殆どない。
ワリと正統派HM的な楽曲で構成され、それにダルシマーが結構大きな存在感で鳴り響く。スラブのペイガン特有の雰囲気が濃厚に漂う。
ヴォーカルスタイルは、ブラックメタル的だがやや吐き捨て型だ。吐き出す声に含ませる空気量が物凄く適度で、結構イイ感じだ。
楽曲は創意工夫が随所に見られかなりカッコいい。それだけでも聴き応えがあるが、ダルシマーが入った途端にペイガニズムの浪漫が前面に出て
ロシアで森林浴をしているかのような雰囲気に包まれるのだ。適度なアグレッションでしっかり曲を聴かせるところが好感触だ。
ただ、首つりロープ映像から始まるこの盤のPVのセンスは若干根暗だ。メンバーの入れ墨などの感じや、ブラッディに見せるダーティな感じは
かなりヴァイキング寄りの容姿ではある。まあ、それはそれで良し。
際立って真性さのある作品という感じではないが、とても安定感があり、ライトに聴けるカッコいいペイガンメタルだ。オススメ!


MONASTERIUM - Church of Bones ★★★ (2021-01-01 12:09:52)

ポーランド産ドゥームメタル2019年作
バンド名は日本語訳で「修道院」、石造建築の中央に骸骨が描かれ、アルバムタイトルが示す通り、骸骨の教会といった判りやすい世界観。
CandlemassやSolitude Aeturnus路線のエピックドゥームに非常に近い音楽性で、特にヴォーカルはCandlemassのMessiah Marcolinを彷彿させる。
音程がズレがちで、カリスマ性を備えたMessiah Marcolinに比べると二番煎じと思われても仕方ないかもしれないが、ボクはこの歌唱は嫌いじゃない。
じっくりミドルテンポで聴かせるドゥーム寄りヘヴィメタルだ。ギターの質感がメタリックではなく適度に歪んだドゥームロック寄りな感触が良い。
この路線にありがちな派手なツインリードやピロピロ弾きまくるギターソロが無いのが良い。ギターが地味すぎず目立ちすぎずなのはポイント高い。
探せばこういう路線のメタルは結構あると思うが、派手なギターパフォーマンスや無駄に疾走してしまって雰囲気を壊していると思うバンドが多い中
このバンドの演奏様式には、そういうボクがマイナス要素だと感じるような欠点が全く無い。雰囲気と楽曲重視のサウンドが素晴らしいのだ。
ゲットしたのは昨秋だが、昨年手に入れたSolitude Arturnus路線ではナンバーワンのクオリティだと感じている。超オススメ!


MONASTERIUM - Cold Are the Graves ★★★ (2023-11-05 06:15:16)

ポーランド産ドゥームメタル2022年作
ドゥーム寄りの正統派で飾りの少ない音楽性、前作から大きく音楽性は変化していないが、何故か魅力タップリなサウンド。
ヴィブラートを利かせたクリーンな声で歌い上げる、CandlemassのMessiah Marcolinを彷彿させるヴォーカルが魅力だ。
Solitude Aeturnus路線を真面目にやっているバンドも年々少なくなっていると感じるので、このバンドの存在は結構貴重だ。
とはいっても、ドラムの手数が少な目でSolitude Aeturnusよりもヘヴィさ控えめ、雰囲気はSanctuaryのInto the Mirror Blackに近いかも。
海外の反応は微妙な感じで、高評価ではなさそうだ。新時代要素皆無の化石ミドルテンポメタルは今の時代ではウケない、ということか。
ギターの音像もオーソドックス、速弾きは無い、ヘヴィさもそこそこ、特に際立った個性は無く従来メタルバンドあるあるの再現とも言えるが
何故かこのバンドのサウンドはボクのツボをものすごーく刺激する。全体的に90年代ミドルテンポメタルの雰囲気があるからだろう。
際立ったキラーチューンのない佳作揃いな盤だが、過剰演出がない頑固な生真面目なリフと、時折挿入されるアコギの仄かな哀愁で
曲が構成されており、激しさが希薄で地味な音楽性がむしろインテリジェンス。没入度は高めだ。
普段は毒気の多い音楽を多く聴くものの、実はこういう地味目なミドルテンポな過剰演出のないメタルの方が賞味期限が長いんだよ。


MOONGATES GUARDIAN - Cold Waters of Anduin ★★ (2020-09-15 23:21:09)

ロシア産アトモスフェア・ペイガン・ブラックメタル2020年作
これまで結構な枚数の作品をリリースしているが、どうも何か物足らないなぁと思いゲットするに至らなかったが、意外と地元の評価は高いみたいだ。
今作も何かが足りない、と思わせる部分はある。全体的に音質がシックリこないところと、音量のバランスがややヘンだな、と感じる。
そういう不満点はあるものの、今作はなんといってもジャケが美しい。また、シックリこない録音状態に慣れれば結構楽しめる内容だ。
曇り空、山岳、針葉樹をバックに、魚を捕えようとする鷹が中央に描かれるジャケにまず心を奪われる。優秀な鳥ジャケだ。
民族楽器風のサウンドは、リアリティに若干欠けるので、恐らくシンセで再現しているんだろうと思うが、民族楽器を大々的に取り入れ
オーソドックスなブラックメタルというよりは、クサめな旋律が多く登場する、ペイガンメタル寄りの作風が魅力的だ。
作風や世界観は既に完成されているので、音質やバランス向上を見込んで、次作にはかなり期待している!今作は及第点といったところだ。


MORAST - Il nostro silenzio ★★★ (2020-07-04 01:43:31)

ドイツ産ブラック寄りドゥーム2019年作
ブラックメタルとドゥームメタルの丁度中間といった音楽性で、ドゥーミーだが結構ドラムは騒々しい。
ジャリジャリ感のあるギターの質感でドゥーミーなサウンドを聴きたいリスナーにとってはツボにハマるかも知れない。
ドゥーミーとは言っても、テンポはそこまで遅くない。一部超スローな曲調はあるもののミドルテンポ主体の楽曲群だ。
ボクとしては、ツーバスでドコドコするのが余計だなぁ・・と感じるが、そこをガマンすれば充分聴ける素晴らしい音。
重低音かつ録音がいいので、重量感を堪能したいリスナーにも打って付けだろう。
少なくとも、オーソドックスなブラックやドゥーム路線ではなく、双方の質感をうまく融合した音響的にかなり好みの音だ。
ただ、そういう音楽性でありながら、録音が良すぎるからか、アングラ臭があまり感じられないのが残念なところだ。
ドラムの抜けの良さとビートを刻む感じの演奏、メロディに乗せて歌う感じが、真性さを損なう要因になっていると思わせるのが惜しい。
そういう理由で、完成度も高くかなり濃い音楽でありながら、好きな音だけにもう一押しホンモノ感を底上げして欲しいと思わせる。
ダメ出ししたが、コレは完成度の高い作品。ボク的にはドラムの音数を半分にしてツーバスを排除、テンポをもうちょっと落としてくれたら
額に入れて飾りたいほどの神盤になっていただろうと思う。ホント惜しい、もったいない。次作は必ずゲットしたいと思わせる盤だ。


MORITO ERGO SUM - Moonchild ★★★ (2020-07-01 19:54:08)

スウェーデン産ドゥームメタル2011年作。
ボクの知る限り、このバンドはレーベルに所属せず、2作品ほどセルフリリースでアルバムを発表しているので、相当無名なバンドだろうと思う。
フルレングスアルバムはA Mournful Foreboding(2016年作)のみで、このMoonchildはEPだ。とはいえ、30分を超える収録時間で聴き応え充分。
芯のあるヘヴィなギター、ギターソロもアリ。安定感のあるゆったりとしたクールなドラム、デスヴォイスではない囁くようなヴォーカルといった
オーソドックスなドゥームメタルど真ん中な音で、真性に人生残念な感じではなく、濃さはライトな感じ。クリアな録音と安定感が魅力的だ。
まあ、そういう標準的な音楽性なので、ボクはフルレングスアルバムまでは敢えて揃えてゲットしようという気持ちにはならず、このEPのみで満足している。
時にチェロのようなシンセで味付けいるところも好感触。アップテンポなパートもあるので、どちらかというとゴシックメタルを聴いている感覚だ。
なんといってもこのアルバムの大きな特徴は、アルバムタイトルにもなっているが、King CrimsonのMoonchildをカヴァーしているところだ。
原曲のクオリティが高い上、昔相当な回数聴いた名曲なので、素直にこのカヴァーは気に入っている。あの名曲をドゥームにしてしまうセンスはツボだ。
オリジナル曲よりも、このMoonchildのカヴァーの方が相当カッコイイ、というところは少々悩ましいところだが・・・。


MOURNFUL CONGREGATION - Tears From a Grieving Heart ★★★ (2020-09-04 02:21:12)

オーストラリア産フューネラルドゥーム2001年作
近10年間の作品の完成度は高く、どんどん作り込まれていき、とても重厚でメランコリックなサウンドが魅力的だが
ボクはTHE JUNE FROST (2009年)までの、磨かれ洗練される前のダイヤの原石のような、粗削りでひたすら鈍重な作品の方が真性さがあり
フューネラルドゥームの魅力が詰まっているように思う。特にこの盤は全作品中でもフューネラル度が高く、真っ黒な世界に突き落とされる。
せっかちな人お断りの超スローで、ヴォーカルの超低音ヴォイスの喉の奥が振動している様とギターノイズが融合する時の音像がスゴイ。
メランコリックな単音ギターが旋律を奏でるような曲であっても、濃厚なヴォイスが前面に出て、人生残念感が半端ナイ。
近作は随分と聴き易くなっており、この盤で感じられる濃さが薄まっていると感じる。こういうバンドは加工しすぎるとダメなんだよ。


MOURNFUL CONGREGATION - The Book of Kings ★★★ (2020-05-01 01:20:20)

オージー産フューネラルドゥーム2011作。
この作品以降、2作品のアルバムを発表しているが、それを含め、このジャンルではレジェンドになりつつあると感じる今日この頃だ。
重厚なギターと唸るようなヴォイスの密度が、初期作品から更に際立ち、凄みという点で深化している。
仄かな光を感じさせる、メランコリックさがスパイスとなっている作風がこのバンドの個性で、今作も鬱々とした気分に浸れる。
とりあえず、フューネラルドゥームというジャンルのど真ん中、スタンダードに位置していることは間違いない。
とはいえ、近年では、米露産・北欧産のフューネラルドゥームバンドが量産され、その多くが凡作ながら、一部良質バンドが出始めている。
特にロシアではこのバンドをお手本にしたかのようなバンド群が量産されているなぁ、と感じる。
この作品発売当時は、このバンドがマイフェイバリットNo.1だったが、近年は少しずつ自分の中で順位が下がりつつあるのが正直なところだが
このバンド特有のメランコリックさを武器に、オージー産代表フューネラルドゥームとしてレジェンドな存在であり続けてほしいと思う。


MOURNFUL CONGREGATION - The Incubus of Karma ★★★ (2020-05-15 21:24:53)

オーストラリア産フューネラルドゥーム2018年作
路線は大きく変わらず、アコギをバックにメランコリックな旋律を奏でつつ、重厚なギターノイズで淡々と聴かせる。
音は洗練されつつも、真性さよりもメランコリーが前面に出ている印象。最近はこのバンド似のフューネラルドゥーマーが
爆発的に増えていることもあり、高い完成度を認めつつも、目新しさをあまり感じず、愛聴盤と言えるほど回数聴いていないのが正直なところだ。
昔は自分にとってフェイバリットナンバーワンだっただけに辛口だが、クオリティは高いので聴いてみて欲しい。


MOURNING SUN - Último Exhalario ★★★ (2020-12-21 02:10:32)

チリ産ゴシックドゥーム2016年作
この寒い時期、今年ゲットした極寒サウンドのうち、最も気に入って愛聴しているのがコレ。
南米チリ産という辺境メタル作品とは思えないほど冷たく、凍てついた大地にある浪漫を表現した作品としてレベルが高い。
雪が積もる山々と鹿が暗めのトーンで描かれるジャケ、裏面は大地に1頭の鹿のシルエットが。まずジャケが満点だ。
このジャケが描く世界観・寒冷地の情緒、そこに生きる動物との共生を感じることができる独創的で美しいサウンドに魅了される。
作り込まれたアトモスフェアなシンセと繊細なフォーク調のギター、深めの残響音が、大自然と氷点下の空気を醸し出している。
演奏スタイルは歪んだギターによるバッキングが心地よいドゥームだが、ゴシック風にも聴こえるのは、女声ヴォーカルの耽美な声のためだろう。
一番の魅力はその女声ヴォーカルによるヘヴンリーヴォイスと、森林に潜む獣たちと呼応しているかのような独特な歌い回しだ。
とりあえずこのサウンドは非のうちどころがないボクのツボど真ん中だが、40分にも満たない内容に若干物足りなさを感じるところが残念。
もっとこの世界に長く浸っていたいと思わせる。他にCDR作品などもあるようだが、フルレングスアルバムは恐らくコレ1枚きり。
自然崇拝メタラーかつ辺境メタルマニアは必ずゲットすべき神盤作品だ。雪の降る日にマイカーで暖房をつけずに聴きたい作品だが、一応暖房はつけているよ。