この曲を聴け!
kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 1-100

MyPage

kamiko!さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 1-100
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5
モバイル向きページ 


40 WATT SUN - The Inside Room ★★★ (2020-06-10 00:39:00)

英国産ドゥームメタル2011年作
石のような質感のモノトーンジャケを空に見立てて、隅っこ2羽、ジャケ裏に3羽、盤に2羽、CDを取り出すとそこに2羽
おまけにケースをひっくり返すと2羽の鳥が描かれている。鳥ジャケフェチとしては嬉しいが、あんまり可愛くないのが残念。
一応ジャンル分けすれば音響的にはドゥームメタルだろうとは思うが、普通に想像するようなドゥームとは世界観が全く異なり
メジャーコードを多用していることと、クリーンヴォーカルの甘い声質から、シューゲイザーっぽく聴こえるサウンドだ。
アルバムタイトルが示すように、家に引き籠っているような、内省的な空気が支配する音空間ながら、仄かに希望が湧いてくるような
ジワジワくる優しい感覚が魅力。普通のドゥームではあり得ない詩的なテーマで、問いかけるような歌詞が独創的だ。
音響的にはヘヴィさはなく、録音状態も若干おとなしめだが、そのぶん、ヴォーカルの存在感が際立ってむしろグッドだ。
よーく聴くと、少しずつ微妙にテンポアップしていたり、逆にスローダウンしていたり、意図的だと思うがそういう工夫があり
情緒的に訴えかける仕掛けが施されているところがウマいなぁ、と思う。ドゥームというジャンルの中では一風変わった雰囲気の作品で
真性ドゥーマーにはオススメできないが、よくあるポストブラックにも似た、ポストドゥーム的サウンドに興味があれば一聴してみて欲しい。


A SWARM OF THE SUN - The Woods ★★★ (2020-07-01 19:04:50)

スウェーデン産ポストブラック2019年作
12~13分の曲が3曲収録されているトータル40分程度の作品、通勤時のマイカーで聴くと、職場に着く頃に3曲目のサビを迎え
職場の駐車場で1枚聴き終えて、感無量な気分になった後に仕事、っていう感じだ。ここのところコレを聴きながら通勤、結構ハマっている。
音の方は、ギターの質感はブラックで、サビではトレモロリフが登場するが、ドラムは基本4ビート以下のゆったりした感じ、2曲目はスロードゥームテイストだ。
アルバムタイトルが示すように、よくあるブラックメタルの森林的な霧に霞む雰囲気がとてもムーディーで、チリチリしたギターの響き渡る様が美しい。
森林の孤独な寂しさや、悲愴感が前面に出ているサウンドで、究極の人生残念感が無く、ライトに聴けるメランコリックさが梅雨時期の朝の通勤にピッタリ。
奇をてらった曲展開は殆どなく、コード進行もワリとストレートでキャッチーでありながら、徐々に重厚に盛り上げていく奥深いホンモノ感を備えている。
1曲目はシンセで湿っぽい感じを前面に出し、2曲目はオルガンがSkepticismを彷彿させるフューネラルドゥーム寄りの曲から徐々に盛り上げ、
3曲目の後半で幾重にもギターを重ねて、禍々しくも切ないトレモロリフでラストを迎える。
そういうトータルでドラマチックに聴かせる構成が素晴らしい。個人的には2曲目の遅ーいドラミングがツボ、3曲目のギターを重厚に重ねて感動的に盛り上げる様がイイ。
ブラックメタルの音が好きだが、過激なサウンドよりは、ドゥーミーな感じがツボ、というまさにボクのツボにハマった感じで、同じ好みの人は猛烈にハマるだろう。


ABIGAIL WILLIAMS - Walk Beyond the Dark ★★★ (2020-06-17 21:45:04)

米国産ブラックメタル2019年作
最近はブラックメタルは必ず試聴してゲットするんですが、最近初ゲットしたバンドで最もツボにハマったブラックメタルはコレだ!
試聴した時は北欧のバンドかと思ったが、どうやら米国産。確かに濃厚な北欧情緒という感じではないが、米国的でもない。丁度中間くらいのテイスト。
バンド名をどこかで聞いたことがあるなと思っていたが、コレは昔観たウィノナライダー主演の魔女裁判の映画「クルーシブル」の主人公の名前だ。
少女が罪のない人々を魔女として告発して処刑する結構エグい内容の映画だったが、恐らくバンド名の由来は、この魔女裁判なんだろう。
音や歌詞から、真性な悪魔崇拝のテイストはあまり感じられないので、魔女に由来するストーリーや世界をコンセプトに曲を書いているんだと思う。
音圧でノックアウトされるタイプが最近しんどいので、最近は雰囲気重視のブラストしないブラックを蒐集しがちですが、コレはしっかりブラストする。
でも、シャリシャリ感が心地よいボクに丁度良い音圧のギターで、ブラストパートであっても音圧が聞き苦しいということはなくボクはこれくらいがいい。
特徴としては、チェロを導入していることで独特な雰囲気があること、ドラムの高度な演奏力がカッコよくとても良い仕事をしていること、かな。
いろいろ調べてみると、しょっちゅうバンドのメンバーが入れ替わっているようで、中心人物のKen Sorceron(ヴォーカル兼ギター)がやっている。
一応、ベースとドラム、チェロのメンバーもいるようだが、過去作品の参加メンバーを見ても、全くメンバーが固定されていないようだ。
その割には、非常にタイトにまとまっているハイレベルの演奏と、作り込まれてドラマチックな楽曲といい、ワンランク上の相当完成度が高いサウンドだ。
アトモスフェアな雰囲気でありながら激しさもあり、それが過剰ではない丁度良い心地よさだ。曲によってはメジャーコードを掻き鳴らし続けるような
ポストブラック的響きを感じさせるパートも登場するが、決してブラックメタルの世界観から外れることがないのが良い。とりあえず超オススメです。


ABOSRANIE BOGOM - Isus Pokritiy Ponosom (2020-08-24 20:42:23)

ロシア産フェカルポルノゴアグラインド1999年作
元はイスラエル出身らしく、ロシアに移住してバンドを結成したようだ。
コレは購入当時にコンテナ奥深くに封印している。ウチにはフェカル(糞便)モノポルノゴアは3バンドあるが、インパクトはコレが一番。
ジャケは実写じゃないので、そこまで強い嫌悪感は無いが、センスは極悪だ。点滴をするオジサンは糞食している。また、詳細は伏せるが
一応ポルノゴア系でもあると思わせる血塗れの女性の描写などもイタイ。一番強烈なのは、バンドロゴのウンコ感がスゴイ。
下痢気味なブリブリというサウンドが相当汚い上、下水道ヴォイスを遥かに凌駕するゴボゴボヴォーカルはもはやゲロをリバースしているかのよう。
女性の悲鳴や、何やらスッキリしたかのような吐息など、まあ食欲減退サウンドとしてはトップクラスのクオリティを誇る。
肝心のゴアグラインドサウンドは、何やらノイジーに演奏はしているが、もはやその他の音のインパクトが大きすぎて、どうでもよくなる。
ネタとして持っておくのはアリだが、こんなサウンドの需要があるのか?怖いもの見たさで一聴するのはアリだが、1回体験したらたぶん
こっち方面の性癖が無い限り、2度と聴かなくなると思うよ。


ABSTRACT SPIRIT - Horror Vacui ★★ (2020-05-06 22:08:12)

ロシア産フューネラルドゥーム2011年作
もう前作で頂点を極めてしまった感もあるこのバンドが、次はどんな手法で死亡させてくれるのかと思ったが、ボクは前作の方が断然好きである。
この盤は、前作に比べてよりギター以外のパートの比重が強く、シンセが相変わらず素晴らしい仕事をしている。
そして、より実験的なアプローチで攻めてきていると感じられる。なので、アヴァンギャルド&ドゥームがツボならきっとハマるだろう。
前作より更に超絶スローにテンポダウンし、ギターは非常に重いんだが前面には出ておらず、ギターとシンセが織りなす音空間を楽しむ、といった音楽性だ。
前作以上に超上級者向けで、ボクはスゴイ疲れる。コレはコレでアリだが、もっとギター中心のフューネラルドゥームを聴きたいというのが正直なところ。


ABSTRACT SPIRIT - Theomorphic Defectiveness ★★★ (2020-05-06 22:22:55)

ロシア産フューネラルドゥーム2013年作
前作でドゥームでは珍しくアヴァンギャルドな一面を感じさせた方向性から、再び原点回帰、鈍重なギター中心の超正統派フューネラルドゥームだ。
ギターの絶妙な歪み、掻き毟るような倍音部分の鳴らし方は、もはや熟練の技、そこに適度に控えめなシンセがこれまた良い感じで絡む。
2ndは音もさることながら楽曲の素晴らしさに衝撃を受けたが、今作の聴きどころはとにかくギターの「音」そのものの質の高さにある。
前作の不満点を解消し、音楽性はフューネラルドゥームど真ん中のシンプルさを保ちつつ、熟練の演奏技術が光る、中身の濃い作品だ。
この盤の最後には、Skepticismの超鉄板曲「March October」のカヴァー曲が収録されているが、もはや本家をも凌ぐ大迫力だ!
もうこれはフューネラルドゥーマー必聴の神盤で、このバンドはこの先どこまで進化するのだろう、と楽しみでならない。


ABSTRACT SPIRIT - Tragedy and Weeds ★★★ (2020-05-06 21:58:06)

ロシア産フューネラルドゥーム2009年作
フィンランドドゥームの大御所Skepticismからの影響を強く感じさせる真っ黒な死をイメージさせる真性葬式サウンドだ。
処女作のクオリティの高さもかなりのものだったが、突然変異のように凄まじい作品を作り上げている!
Skepticismを思わせる重く地鳴りのようなギターの刻み方、オルガンの使い方は本家をも凌ぐクオリティの高さだ。
全員素晴らしい仕事をしているんだが、特に絶妙な不協和を響かせるシンセが良い仕事をしている。
アルバムタイトルにもなっている1曲目の不穏な呪いのコーラスで、まず聴き手を不安のどん底に陥れる。
2曲目はこのジャンルでは珍しい3拍子のワルツ形式で、狂気に満ちた瘴気・死臭に襲われ、3曲目に入る前にはもう再起不能だ。
フューネラルドゥームど真ん中の音楽性でありながら、様々なアレンジ、仕掛けを非常に効果的に仕込んであり
単調になりやすいジャンルでありながら、非常に多彩な楽曲で構成されている。このバンドの奥の深さは相当なレベルにある。
フューネラルドゥーマーは生きている間は額に入れて飾り、死んだらカンオケに入れるべき神盤だ!


ACID MAMMOTH - Under Acid Hoof ★★ (2020-07-10 00:17:09)

ギリシャ産サイケデリック・ドゥーム2020年作
とりあえず動物ジャケはボクの購入意欲をそそる大きな要素で、赤地にマンモスが描かれるジャケは相当ポイント高い上
バンドロゴの左右にマンモスの牙がニョキっと生えていてカワイイ。少なくともこのジャケとロゴを見ただけで中身の音が
想像できてしまうんだが、ジャケ側面には、バンド名の前にわざわざご丁寧に「Heavy Psych Sounds」と書いてあるのがウケる。
わざわざそんなこと書かなくても、この盤から漂う煙たいサイケ臭や雰囲気でわかるよ!とツッコミを入れたくなる。
コレは瞬時に石化し得るストーナー要素が濃厚な、かなりヘヴィなサイケデリックドゥームで、真性ヘヴィドーパー向けサウンド決定版だ!
楽曲はオーソドックスな感じで、ドラムとベースがかなりの重量感がある。ゆったりとしたテンポで、徐々に酩酊させ昇天させる。
ヴォーカルに僅かに倍音を際立たせるエフェクトをかけているように聴こえるが、コレが結構心地よい。
Sleepのギターリフに更に重量を加えた感じが素晴らしく、Matt Pikeファンなら必ずやツボにハマる音だろう。
ただ、オーソドックス路線過ぎて、ボクは飽きが来るのもワリと早かったような気がする。
音自体はすごくツボを突くが、曲にもう少し変化が欲しいところだ。


ACID WITCH - Stoned ★★★ (2020-05-23 23:47:11)

米産サイケデリック・ドゥーム2011年作
満月の日に、松明を掲げる大勢の人々の前で、十字架を持った神父と魔術師が対峙するシーンが、劇画タッチで描かれるジャケ。
サイケなギター、ハモンドオルガンなど70~80年代の古めかしい様式を感じさせるスタイルで敢えてレトロ感を出し
デフォルメされたゲロゲロのヴォーカルを載せて、コミカルにB級ホラーの世界を創り出している異色作品。
こういうユーモアたっぷりの楽しい世界観のサイケデリックサウンドが好きな人は相当ハマるだろう。
このバンドは3作品リリースしているが、ボクはこの作品(2nd)が一番ツボにハマり、この作品のみ所持している。


ADELE - 21 ★★★ (2020-04-29 00:29:23)

有名どころの女性シンガーで一番好きなのは誰?と聞かれたら、ボクはアデルが好きだ。
声にパンチ力があり、ひとつひとつの発声に表情があり、圧倒的な存在感がある。
多くの女性シンガーが持つ可憐さやエロさのような魅力ではなく、抜群な歌唱力、野太い声質、力強さ、表現力が魅力だ。
グラミー賞で多くの賞を受賞した鉄板級のアルバムで、初っ端から凄まじいパワーに圧倒される。
この人のアルバムは全て必聴盤だが、ボクはコレがイチオシだ。
随分前に2020年内に新作が発売されるアナウンスがあったが、新型コロナウイルスの影響でどうやら延期になりそうという
ニュースをさっき見た。すごーく残念で仕方がない。だから今コレを聴いている。


ADELE - 21 - Rolling in the Deep ★★★ (2020-04-29 00:38:23)

この曲のPVは何度見たことやら。この曲が一番ツボだ。
ミドルテンポでタテ乗りの、湧き出るようなパワー溢れる演奏に、更に存在感のあるアデルの歌が乗る。
サビのカッコよさは鳥肌モノでガッツポーズしたくなる。
アデルの声は、普通のシンガーよりも音域がやや低めなので、男声のボクでも頑張ればカラオケで音域がギリなんとかなる。
PV見ながらよく練習したが、なかなか歌いこなせない。まあ、当たり前か。


ADELE - 30 ★★★ (2022-01-18 23:37:56)

英国産R&B2021年作
コロナウイルス感染拡大で随分リリースが遅くなった、ボクとしては結構待望の新作。女声ヴォーカルモノとしてはかなりボクの好みで、ゲットし続けている。
有名どころに食指がいかない性分だが、この人の作品にはメジャーどころの産業音楽的な、「売るために作られた感」が無いので、ツボにハマるのだ。
しかし、世間評は結構割れているようで、鉄板曲が無いとか、全部スローな曲で飽きるとか、酷評が散見される問題作・・ボクは問題無いんだけどねぇ。
今までの看板曲Rolling in the DeepやHelloのような特徴的な楽曲を求めるリスナーは退屈するかもしれない。が、今作の魅力はそこではない。
確かにスローなR&B調の楽曲が占め、楽曲構成の面白さを楽しむ類の盤ではなく、純粋にアデルの「歌」を堪能する盤である。相変わらずファルセットの裏返りが
切なさを醸し出し、高めの声部は現年齢(33歳)プラス10歳の声質のように聴こえ、何故か心地よい。ダイエットをしたのか、風貌がスリムになっているが、
決してパワーは衰えていない。この作品はライトに楽しむ作品ではなく、恋の悩みを抱えているような時に部屋の明かりを消して没頭することで癒される、そんな作品だ。、


ADELE - 30 - To Be Loved ★★★ (2022-01-18 23:53:48)

単純なピアノの白玉コードのみの楽曲に、切なく歌い上げる入魂のスローバラード。結局この盤は、こういう純粋な歌モノが得意でないとダメなんだろう。
今までのアデルの作品には無い、かなりストレートに感情的に歌い上げ、後半は体裁を捨て絞り出すような声を張り上げる感じである。
ココを「感動」と受け止めるか「下手」とするかで大きく評価が分かれそうな気がする。歌う事が好きだと、コレを聴くとカラオケで練習したくなる。
全く早くコロナウイルス騒動が終わってほしいよ。


AGHAST - Hexerei im Zwielicht der Finsternis ★★★ (2020-06-10 22:39:10)

Hagalaz' Runedanceとして作品をリリースしたり、Cradle Of Filthにも参加するドイツの女性シンガーAndrea Haugenと
Darkthrone、Ulver、Thorns、Satyricon、Burzum、Emperorなどノルウェイジャンブラックのアートワークや写真撮影を手掛ける
ノルウェイのアーティストTania Steneのデュオによるダークアンビエント作品1995年作。
鉄板級のダークアンビエント作品を多く手掛けるCold Meat Industryの作品では、リリースが早いのもあってかなりの回数聴いた盤かもしれない。
基本物静かな作風だが、耳に障るパルス音や、妖艶な女声、祭儀的な音などをコラージュして、濃い音空間を創っている。
雪が降り積もる寒々とした人里離れた山奥で、魔女が密かに呪術を行っているような光景が浮かぶ。
多くのノルウェイジャンブラックバンドから感じられる背徳的で寂しく孤独な雰囲気を、アンビエント作品で楽しめる逸品だ。
ゲットした当初は部屋の電灯を消して就寝の時に聴いていたが、暗い場所で聴くとちょっとコワい。
また、ユニット名のロゴに黒い鳥が描かれているのは、鳥ジャケフェチとしてはちょっとポイント高い。


AHAB - The Boats of the Glen Carrig ★★★ (2020-05-01 03:10:01)

ドイツ産フューネラルドゥーム2015年作。
バンド名は、旧約聖書に登場するイスラエル王「アハブ」をモチーフにした小説『白鯨』のエイハブ船長から引用しており
処女作の白鯨ジャケが印象的なTHE CALL OF THE WRETCHED SEAから、常に「海」をコンセプトとしたドゥーム作品を作り続けている。
今作はついに海中に潜り、海中生物が色彩豊かに描かれた妖艶なジャケが美しく相当ポイント高い。そういう特殊な世界観が魅力的な個性派ドゥーム作品である。
分厚い歪んだギターと唸るヴォイスによる引き摺るようなドゥーミーリフが淡々と続くサウンドがメインで、非常に鈍重な感じなのだが
挿入されるアコースティックパートやクリーンヴォーカルの声が、何故か大海原や深海を感じさせるから不思議だ。
かなり上級者向けのドゥーム作品だが、海をテーマにしたファンタジーが感じられる異色作なので、超オススメである。


ALCATRAZZ - Born Innocent (2020-08-02 11:28:36)

米産正統派HR2020作
あまり国内盤は買いたくないのでボーナストラックのない輸入盤を一応ゲット。
参加しているギタリストではクリスインペリテリが好きなギタリストだ。グラハムボネットはレインボー時代もいいが、個人的にはStand in lineを最も愛聴した。
職場にはライブにも出かける熱心なインペリテリファンのオバチャンがいて、一応話を合わせる目的で最近の作品も一聴はしているが、このテの作品を
積極的に買わなくなって久しい。年齢を重ねて、ぼつぼつリタイアする友人バンドマンも出て、遺品として遺族から譲り受け流れ着いたインギーやヴァイのCDや
スティーヴヴァイモデルのギター新古品やエフェクターの類が、ケースから出されることなく我が家にはある。そういう経緯からインギーやヴァイの作品は
ワリと揃っているが、殆ど手に取ることはなく、近作のヴァイ作品は未聴のまま収納されてて、イマイチ興味がわかないのが正直なところだ。
ボク自身がギタリストならこういう作品に対する愛情も違うんでしょうが、このテの作品には新しい何かを期待することは一切無く、当時の空気を体感したり、
バンドをやっていた頃のノスタルジーに浸れればそれでいい。そこのハードルはクリアしてて、なかなか楽しく聴くことができる。
参加しているギタリストのポテンシャルが凄すぎるので、魅せる味わいは相当に深く、ギターのトリッキーな演奏は白熱して結構アツい。
ただ、通して聴いた最初の感想としては、グラハムボネットの歌唱力が年齢的なものなのか、パワーダウンしており、なんとか力強く歌おうとして
随分と肩に力が入ってそうな感じに聴きとれる。正確な音程よりもやや下方にズレがちで、伸びやかさを欠いてブレているのが残念。
なので周囲の演奏者がヴォーカルをバックアップしようと頑張っているような雰囲気が漂い、そういう光景が脳裏に思い浮かぶ。
好きなギタリストであるインペリテリ参加度も僅かで、ボクとしては、どうもシックリとこないなぁというモヤモヤ感が残る作品になってしまった。


ALCEST - Les Voyages de l'âme ★★ (2020-05-06 20:33:53)

当時ジャケ買いした作品で長らくコンテナに収納していましたがアゴ氏のオススメで、やっとコンテナから出してここ数日改めて聴いています。
光り輝く草原と森の通り道に鳥がいるようなジャケの世界観、独自に思い描いたファンタジーを歌詞にしているところに魅力を感じる。
歌詞が全部フランス語で、独特のイントネーションから異国情緒が感じられるかと思ったが、アトモスフェアな残響音と同化しがちであまり差異を感じないのは惜しい。
ブラックメタル的アプローチはごく一部で、ブラストパートやブラック様式的ヴォーカルは曲展開を盛り上げる一要素として使われ、黒くなくエモーショナルな感じだ。
シューゲイザーな感覚が全体を包んでおり、魂をテーマにしていると思われるコンセプトに非常にマッチしている。
最近、ブラックメタル様式の演奏ながらエモーショナルorシューゲイザー的な作品が流行っているのかな。色々視聴してると結構そういうサウンドに出会うね。


ALLEY - Amphibious ★★★ (2021-01-21 23:12:12)

ロシア産プログレッシヴデスメタル2013年作
購入から7年が経つが、頻繁に聴こうと思う盤ではない反面、その存在感の大きさから長年コンテナお蔵入りにならず、手に届く棚には常にあるという盤。
オーソドックス路線からは外れた、プログレデスにゴスロック要素を加えたような、なかなか掴みづらい、敷居の高さと気難しさを伴う音楽性だ。
普段贔屓にしている(というよりほぼ全買いしている)ロシアンアヴァンメタル方面で異端作品が多いBadMoodMan Musicレーベルの作品だけあって強力な盤だが
決して音圧で押すタイプでなく、突拍子のない作風ではないのに、なかなかスッと受け入れ難い独創性が、ボクには何故か結構な疲労感となる。
そういうワケで敬遠しがちだが、ロシア産ではずば抜けたホンモノ感、存在感のある作品だ。コレきっとアゴ氏あたりの好みにどストライク路線だろうと思う。
処女作であるThe Weed(2007年作)のプログレデスの作風の延長上にある。前作の方がシンプルで判りやすかった半面、今作は濃さが倍増したかのような感じだ。
なかなか説明しづらい音楽性だが、その世界観はストレートにジャケに表現されていると感じさせる。大地・天体を背景に瞑想する初老男性の顔面が油絵調で描かれる。
基本は起伏ある展開をするデスメタルだが、その楽曲は大作主義で、特有の浮遊感があり、デスヴォイスとクリーンヴォイスの使い分けにエモさが存在する。
1995年から2000年頃によく聴かれた脱メロデス・脱ゴシック路線バンドの要素、ゴスメタル的なスパイスが結構感じられる。また、デスメタルとはかけ離れた
ジャジーなアコギの旋律、多彩なドラミングが、大胆に融合されている。その部分は米MAUDLIN OF THE WELLのアヴァンギャルドに非常に近い。
知的さに溢れるその音楽性&世界観に浸ることができるか、敷居の高さに突き放されるか、で評価がきっと分かれるだろうと思う。
ボクは結構疲れるのであまり聴かない。ただ、この先、その捨て置けない魅力から、コンテナお蔵入りになることはなく、ずっと棚に常備はされていくんだろうと思う。
無名バンドだろうが、その底の知れない独創性、高いポテンシャルに、ハマる人には神盤になるんじゃないかな。


ALTARS OF GRIEF - Iris ★★★ (2020-12-20 22:05:06)

カナダ産ドゥームメタル2018年作
基本ミドル~スローテンポのライト感覚に聴けるドゥームメタルだが、ツーバスで激しくブラストする曲も結構ある。
特にキラーチューンと言えるような楽曲が無く佳作揃いの印象な上、ブラック的ヴォイスとクリーンヴォイスがハモり
朗々と歌い上げる感じを、個性と捉えるか、真性さが足りないと捉えるかで、評価が分かれそうな作風だ。
楽曲が微妙だなぁと思いつつもここ1ヶ月結構な頻度でこのサウンドが聴きたくなり愛聴しているのは、録音・音響の素晴らしさに惹かれるからだ。
凍てつくような空気を醸し出すシンセ、氷のようなギターのザックリ感、ベースの重低音は、かなり完成度が高く、師走に近づく今時期にバッチリとハマる。
地味な楽曲群も最近は耳に馴染み始めて、今ではこの地味な感じがツボになりつつある。氷点下を感じさせるにはアツく展開する楽曲は不要だ。
そういう作品なので、楽曲に退屈さを感じず、この演奏スタイルを受け入れることができれば、迫力ある音響に圧倒され、極寒の世界に浸れる筈だ。


AMAZARASHI - 世界収束二一一六 ★★★ (2020-08-23 17:24:43)

国産オルタネイティブロック2016年作
邦楽、特に和製メタルは殆どスルーしがちだが、カラオケのレパートリーを増やすために歌モノは結構ゲットしている。
近作をゲットする程のファンではないが、近年最もハマった日本人アーティストは、Amazarashiだろう。
70~80年代アングラフォーク界で最もイタイ残念フォークソングをやっていたとボクは思っている友川カズキを、影響を受けたアーティストとして
公言しており、友川カズキ臭のするアングラフォーク特有の翳りが濃厚に漂う。そんな世界観を持ちつつも、友川カズキ的田舎臭さは全く無く
プログラミングとピアノを主体に現代~近未来的に聴かせるところが新しい。正攻法に歌い上げるヴォーカル、残念感漂う歌詞など
ダークサイドな音楽を愛するモノとしては、Amazarashiの音楽は外せない。


AMAZARASHI - 世界収束二一一六 - スピードと摩擦 ★★★ (2020-08-23 17:33:00)

この曲もやたらカッコいい。最近テレビアニマックスでやってる乱歩奇譚の主題歌だ。
コレも一応視聴予約して、歌うというのが日課になりつつある。


AMAZARASHI - 世界収束二一一六 - 季節は次々死んでいく ★★★ (2020-08-23 17:30:06)

アニメのトーキョーグールの主題歌。アニメの中身はエグくてよくわからないので全く興味がナイ。
一応テレビの視聴予約をして、この主題歌に合わせて熱唱するのがボクの日課になっている。
この曲、カッコいいよ。


AMBERS TEARS - Key to December ★★★ (2020-05-19 01:58:15)

ロシア産ペイガンメタル2010年作
ロシア語の綴りではバンド名は「Янтарные Слезы」、アルバム名は「Ключ К Декабрю」だ。
雪が降り積もる地を、杖を携えた白髪の人物が、光の扉に向かい歩いている、というイラストのジャケ。
見る人によってはジャケがチープだと感じるかも知れないが、騙されてはいけない。
コレはジャケの世界観そのままの、ロシア作品らしい、ボクとしてはどストライクの雪国ペイガンメタルの神盤だ!
ドゥームメタル然としたスローテンポに、ヴァイキングテイストながら寂しげな男臭いヴォーカルが乗るスタイル。
一聴して癖のあるヴォーカルを苦手とする人はいそうだが、コレはペイガンメタルだからこそバッチリとハマる個性だ。
極寒を感じる空間系シンセ、氷のように繊細なアコギ、雪国らしい情緒溢れる旋律で構成されたハイレベルな楽曲が素晴らしい。
特にギターの装飾音を織り交ぜる手法の旋律・リフがたまに登場するが、不思議とペイガニズムの浪漫を感じさせる。
コードワークが素晴らしく、織りなすハーモニーに悶絶すること間違いナシ。非常に美しい旋律に心打たれる筈だ。
マニアックな作品だが、メタルに雪国の情緒・哀愁を求め、かつ質の高い楽曲を求める人はマストだ!


AMBERS TEARS - When No Trails ★★★ (2020-05-19 02:22:44)

ロシア産ペイガンメタル2019年作
ロシア語の綴りでアルバム名は「Когда Нет Троп」だ。前作で非常に完成度の高いペイガンメタルを聴かせてくれたが
前作では若干録音状態が弱い面があったが、そこが解消されて、更に深みのあるサウンドに変貌している。
寒々とした針葉樹林を描いたジャケそのまんまの世界観がサウンドに昇華されている!
ギターノイズの音の粒の細やかさと、ほんのりとシンセをレイヤーさせている手法により、森の騒めきにも似た空気の作り方がツボだ。
楽曲構成は非常にシンプルな造りで、美しく浪漫溢れていると同時に、そのコードワークや旋律に深い叙情性が宿る。
このサウンド初体験だと、目立ったギターソロなども少なく、かなり地味なドゥーム寄りHMに聴こえるかも知れない。
このサウンドの魅力は繊細なノイズの束で構成されるギターのリフに、最適なエコー・リバーブを加えて森林の雰囲気を表現している点だ。
そんな森メタル好みの音で、仄かな叙情を醸し出す派手さの無い旋律で聴かせるところが素晴らしいのだ。
細やかな音まで出力できるプレイヤー・スピーカで聴いて欲しい。その音世界に浸ると、寒々とした針葉樹林で大自然を感じながら佇んでいるかのような錯覚すら感じる。


AMBERS TEARS - When No Trails - Sing the Wind Sign the Raven ★★★ (2020-11-08 03:54:08)

タイトルのロシア表記はСпой Ветер, Спой Воронだ。
正しい翻訳はボクには無理だが、タイトルが意味するところは、カラスの羽ばたきによる風の歌、だろうか。
森メタルフェチのツボど真ん中の世界観にどっぷりと浸ることのできるドゥーミーな森林崇拝ペイガンメタルナンバーだ。
木々の騒めきにも似たザラザラ感のあるギター、高音で切なく奏でる単音の旋律が濃厚な哀愁を感じさせる。
なかなか説明しづらいが、前作にもあった、このバンド特有の装飾音を加えたようなギターソロがこの曲で聴ける。
よく聴かないと判らないかもしれないが、この独特なリズムの旋律が特有のペイガニズムを醸し出してて素晴らしい。


ANGEL SWORD - Neon City ★★★ (2022-05-12 21:39:37)

フィンランド産NWOBHM2019年作
鉄板のB級メタル路線、粗暴な濁声ヴォーカル、適度にシケシケなギター、メロディを割と大切にした楽曲で程良いダサさがある。
衝撃的な前作Rebels Beyond The Pale(2016年)ほど70~80年代を意識した録音状態ではないが、現代録音によるNWOBHM路線では
かなり好きな音である。完全に懐古主義になることなく、よく聴くときちんとエフェクトが施されていたりする。
それでいて粗暴な感じに聴こえるのは、全てヴォーカルのせいだな。このアンバランス感がなんとも愛らしくてイイ。
このサウンドには、シケシケギターによるハードさや、ノーエフェクトを思わせるベースなどの魅力が込められているんですが
そんな粗雑な音であるにも関わらず、割と哀愁が深く、実はウマいのに下手に聴こえるヴォーカルがわざとらしく哀愁を込めるところが魅力だ。
前作のジャケも凄かったが、今回は2丁銃を持ったミュータント的な人物が描かれる。楽曲タイトルにもなっているElectric Manだろうか。
バンド名と全然違うキャラが描かれているのがいい。天使じゃないのかよ、飛び道具じゃなく剣持ちなさいよ、とツッコミたくなる。
また、ジャケ裏を見ると、この電気男がベッドで裸の女2人を抱いている。そっちも2丁拳銃か、とツッコミを入れたい。


ANGEL WITCH - Angel of Light ★★ (2020-04-26 01:03:26)

7年ぶりの新作ですが、恐らく多くのリスナーは70~80年代NWOBHMの息吹を求めてコレを聴いているのだろうと思う。
そういう意味では再び1stの頃のNWOBHMど真ん中路線へ回帰したようなサウンドが耳に馴染み、とても心地よく聴くことができる。
しかし、前作As Above So Belowで感じられた魔性に感銘を受け、そこを期待していた人にとっては、その魔性が若干弱まった感覚に陥る筈だ。
逆に前作のマイナーチェンジがダメだった人は、今作が良いと感じるんじゃないかな。
熟練のカッコいいロックサウンドで、クオリティは高い。ただ、前作の路線がかなりツボだった自分にとっては少々残念な作品だな。


ANGEL WITCH - As Above, So Below ★★★ (2020-04-26 01:55:07)

聴いている回数は圧倒的に1stが多いんですが
Angel Witchの作品で一番好きな盤はどれ?と聞かれればコレだ!
まず、ジャケが再び1stのようにJohnMartinの画風になった上、曇り空をバックに黒字のバンドロゴがステキだ。
そしてギターを担当するのがビルスティアーというのがスゴイ。CarcassやってたギターがAngel Witchに加入とか普通有り得んでしょ。
マイナーコードやディミニッシュコードを多用したダークな旋律はビルスティアーの腐敗臭がスパイスとなって、濃厚な魔性を帯びている。
それでいて、1stの頃にあったNWOBHMの雰囲気が融合したサウンドを構築しているのだから素晴らしい。
ヴォーカルの旋律がキャッチーに聴こえないのは、楽曲の殆どがマイナーコードで構成されてて、半音進行の歌いまわしを多用してるからだろう。
NWOBHMテイストの名盤と言う人は多いが、確かにそういう魅力はある。しかしこの盤の最大の魅力はそこではない。
音と旋律の中にAngel Witchの悪魔的コンセプトを表現する仕掛けが随所にあり、決して単に過去作の延長上の作品として扱われる作品ではない。


ANTHRAX - Persistence of Time - Got the Time ★★★ (2021-09-06 22:36:41)

Joe Jacksonの初期作品からのチョイスで原曲をかなり忠実に再現しているカヴァー曲だが
ハッキリ言って、ANTHRAXの曲の中で最も心に残っている曲で、当時は相当ツボにハマった。
この曲を知って、Joe Jacksonの作品にも興味を持った程、インパクトの大きい作品だった。
Joe Jacksonもまさかここまでスラッシュファンにウケるとは思ってなかっただろうね。


ARSAMES - Immortal Identity ★★ (2023-11-13 05:44:16)

イラン産デスメタル2010年作
買いそびれてデジタル作品としてゲットした作品。昔使っていたPCにデジタル作品を保存してたが、壊れてしまって、今はもうウチには無い。
音楽的にはメロデスや正統派メタルに近い音楽性で、イランというメタル辺境地でも高いクオリティではあったが、そんなにハマらなかった。
イラン政府は悪魔的音楽を演奏するメタルバンドに15年程度の長い懲役刑を課すので、イランメタルバンドはよく亡命する。
悪魔的ミュージシャンと見なされるアーティストや、性的象徴と見られるアイドルなんかは、イスラム圏では偶像崇拝と見なされるんだろう。
こういう作品に触れる時は、その作品自体を楽しむ、というよりは、何故イラン政府は神経質にメタルを嫌悪するのか、ということを考えるべきだ。
先日、イラン首相の妻が「悪魔的存在からの圧力」について、多くの国に書簡を送ったというニュースがあった。このソースは中東のニュースを
翻訳して知ったが、読売だったか、日本のニュース記事でも同じようなモノを見た。たぶん、プロパガンダではない事実なんだろう。
この「悪魔的存在」という言葉、ある程度海外ニュースを精査する人や、戦争の情勢を真面目に見てる人は、「悪魔=ネオコンや武器商人」だと
解釈しているんじゃないかと思うが、8割方それは正解なんでしょうが、ボクは、純粋にシンクタンクの悪魔崇拝者を差しているんだろうな、と考えている。
このままだと、将来的に圧力に屈して核武装してしまうイランが世界の悪者になり、メディアにはプロパガンダが一斉に流されるんだろう。
若い頃は、イスラムのメタル音楽弾圧は、クレイジーだなぁと思っていたが、最近はイラン政府が弾圧する理由がなんとなく理解できるようになった。


ARTCH - Another Return ★★★ (2020-05-10 21:47:16)

ノルウェー産正統派パワーメタル1989年作。
1990年初頭は、正統派パワーメタルバンドがワリと一世風靡していた時代で、90年にはVicious Rumorsが処女作をリリースし、
91年にはMetal Churchが「Human Facter」、Armored Saintが「Symbol Of Salvation」という名盤をリリースした、パワーメタル路線全盛期。
3作品ともパワーメタルフリークを唸らせる作品だった。しかし、当時日本では全く無名だったArtchが全く同じ時期にFor the Sake of Mankindをリリースし、
それらの名盤と肩を並べる(ボクとしては「超えてしまった」)パワーメタルを聴かせてくれた。当時のバンド仲間もこぞってこの作品をゲットしていた。
恐らくこの2ndで一気に知名度が上がった(それでも無名かもしれない)と思うが、当時の雑誌などにはほとんど掲載されることもなかったと思う。
ボクはそれから数年後くらいにルーツを辿り、この1stをゲットしましたが、粗削りで2ndのようなタイトな感じではなかったので、暫くはコンテナに収納されてしまう。
しかし、ココ最近よくこの盤を聴く。確かに2ndよりは音作りの点で粗削りだが、楽曲のクオリティは高く、
落ち着いた感じの2ndよりも華やかでコーラスに男気が感じられる。カッコいいギターソロも、たぶん1stの方が多いんじゃないかな。
また、なんといっても一番のウリであるEiríkur Haukssonの歌唱力が確かなモノだと再認識できる。
2ndで名盤を生み出す下地が物凄く感じられる盤で、このジャンルに愛を感じるメタラーには2ndと共に絶対ゲットしておいて欲しい作品だ。
ちなみに、↑で話題になってるが、ボクのはMetalBlade盤で「Another Return to Church Hill」というタイトルである。


ASSASSIN - Bestia Immundis ★★★ (2021-01-04 00:29:17)

ドイツ産スラッシュメタル2020年作
デスメタルが幅をきかせて随分前に全盛期を過ぎた感のあるスラッシュメタルはボクもあまりゲットしなくなったが2020年はジャーマンスラッシュがアツかった。
スラッシュ全盛期当時にB級路線に位置していたバンドは結構現在も活躍してて、円熟したスラッシュメタルをやっている。そういうバンドは懐古の情も手伝って
安価で売ってる時にチョイチョイ購入しライトに楽しんでいる。が、このアルバムは予想以上にツボにハマり、ボーナス支給時に2000円以上支払ってゲットしてしまった。
スラッシュ全盛期頃のボクは、米Massacreと独Living Deathを、突進型B級スラッシュ御三家と認識して楽しんでいたが、MassacreもLiving Deathもいなくなった現在の
比較対象はやはりSodomだろう。また、全盛期にはまだまだ肩を並べられる存在に無かったAccuserも活躍しており、突進型ジャーマンスラッシュシーンは結構面白い。
2020年はこの3バンドが新作をリリースしており、結構な胸アツな感じである。この3作品はいずれも納得のクオリティにある。が、一つ選ぶとしたらAssassinに軍配。
ボクは、全盛期頃に既に安定のクオリティにあったと感じるSodomに対し、不器用で爆発的な勢い任せのサウンドがウリのAssassinの方にB級愛を注いでいる。
また、迷曲「Baka」のイメージもあり、ただ若くバカっぽく突進するサウンドにやたらB級愛を感じさせたバンドである。復活作THE CLUB (2005年)ではその破天荒さが
若干失われたことで、一気にB級愛が冷めてしまって、早々に見限り、以降スルーしていたが、この新作は、経年で若さこそ感じないにしても、その突進力は半端ナイ。
突進力という点ではSodomの新作も甲乙つけがたいが、やや古典的スタイルを逸した感のあるSodomに対して、不器用な突進型スタイルを堅持している点がボク好みである。
また、Accuserのクオリティも高かったが、やたらカッコいいツインリードのようなコマーシャルなモノをふんだんに盛り込んでいる。それはそれで良いんだけど
そういう煌びやかな演奏ではなく、突進力を前面に出し、ギターソロはガムシャラに疾走感を盛り立てているAssassinの方がボクはツボにハマるんだよね。
世間評はきっとSodom>Accuser>Assassinなんじゃないかな。ボクの順序はその逆だ。一時期見限ったバンドだが、アツいサウンドに愛情がまたジワジワと湧きつつある。


ASTOR PIAZZOLLA ★★★ (2020-04-26 20:21:54)

アルゼンチンの作曲家・バンドネオン演奏家で、タンゴを世界に広めた仕掛け人はこの人だ。
とはいえ、元々はジャズ畑にいたようで、たまたまバンドネオンを演奏する切っ掛けがあり、そこからバンドネオン奏者として大成していったようだ。
しかもクラシックを学ぶために渡仏した際には、タンゴ演奏家であることをあまり公言しなかったらしい。
そういう生涯なので、ある程度の年齢に達するまで、タンゴ一筋というワケではなかったようで、↑の基本ユニットが定番になるのは晩年。
ちなみに基本構成は↑の4楽器に加え、エレキギターが加わっている。
ボクはこの人のバンドネオン作品にはあまり興味はない。が、この人が残した作品をピアノソロ用に編曲された作品群はツボに入りまくる。
ピアソラ自身が編曲した「タンゴ・ラプソディ」、山本京子編曲「リベルタンゴ」、Juan Carlos Zunini/Saul Cosentino編曲「Oblivion」
このあたりが必聴である。本人以外編曲した人自体は北半球の人だろうが、南半球のアルゼンチン・ブエノスアイレスの濃厚な哀愁を堪能できる。


ASTRONOID - Air ★★★ (2020-06-18 23:48:07)

米産ポストブラック2016年作
ブラストビートやトレモロリフを多用するブラックメタル的な演奏様式でありながら全くブラックじゃないサウンドだ。
黒いイメージとは真逆の真っ白でクリーンな、エモーショナルで、力が漲るような、激しさの中に優しさがあるかのような音世界だ。
全く新しいサウンドかと言えば、この雰囲気はどこかで聴いたことがあるな・・と思い、ずっと思い出せずにいたんですが、思い出しました。
広大な空間に深めの残響音が響き渡るこの感じ、メタルなのにメタルじゃないこの感じは、Devin Townsentが描いた世界観に非常に近い。
まさにDevinのサウンドをブラストさせてトレモロリフにした感じだ。この手法が爽快感を底上げし、至福な音空間に包まれるのだ。
優しいソフトな感触のヴォーカルが歌い上げる様も、とても清々しい。また、ギターが奏でる旋律もやたら前向きで明るい。
シューゲイザー的ポストブラックは結構よくあるが、ここまで突き抜けた明るい感じは珍しい。イヤな事があった時のストレス発散に最適だ。


ASTRONOID - Astronoid ★★★ (2020-06-19 01:11:26)

米産ポストブラック的プログレッシブロック2019年作
先月馬券をハメてフィンランドのBlood Musicレーベルの近作大人買いを敢行、コロナウイルスで一時空輸便が激減していたが、どうやら北欧からの空輸は
やっと平常時に戻りつつある。ちなみに、2ヶ月以上前にロシアのショップでガッツリ大人買いした作品群は未だ届かず。ロシアは感染拡大で大変なんだろうな。
散々待たされたBlood Music作品群をここのところ堪能しているんですが、発注した時に最も期待していた作品がコレだ!
前作「Air」は、ポストブラック&清々しい爽快感路線を打ち出した、既存バンドにいそうで意外と誰もやってなかった、独創性を発揮した作品に感銘を受けたが
今作はアルバムタイトルに自身のバンド名を採用した、かなり気合の入った作品だ。まさに、ここで打って出ようという熱意が感じられる盤だ。
前作の荒涼とした土地と空のジャケとは打って変わって、幻想的な山の尾根をバックにポップでモダンなデザインのジャケに変化、音楽性にピッタリだ。
音楽性は前作の延長上のモノだが、なんでしょう、この美しく綺麗でありながら、優しくも激しく、情緒に訴えるようなエモい感じは。
普段、死体を引き摺るような腐った汚いデスメタルや、底辺の残念人生サウンドばかり聴いている自分自身がキッチンハイターを頭からかぶって浄化される感覚だ。
折角の休暇だというのに、思わず今日はコレを聴きながら浴室をピカピカに磨いた上、部屋の大掃除をしてしまった。
ブラストは影を潜めるも、トレモロリフのポストブラック的要素を維持しつつ、より起伏のあるドラマチックな楽曲を展開、非常にカッコいい納得のクオリティだ。
特に16ビートで疾走するパートがとても気持ちいい。トレモロリフとビートがピッタリフィットするんだろうね。前作はココがブラストだった。
海外の書き込みをを翻訳してみると、アメリカとカナダに多くのファンが存在しているようだ。もしかしたらカナダのDevin Townsentファンのツボなのかも。
たぶん日本ではまだ無名な方に含まれるのかな。万人受けしそうな鉄板級の盤なので、超オススメです。たまにはこういうクリーンな音もいいね。


ASYSTOLE - Siren to Blight ★★★ (2023-10-09 03:58:10)

米国産デスメタル2023年作
北欧情緒を求めて、チョイスする時に米国産は後回しにする傾向にあるものの、ポテンシャルの高さから結局米国産を買ってしまう。
楽曲、暴虐性、演奏力では、やっぱり米国産が一枚上だな、と感じさせるこの作品、オールドファンでも納得の作風でありながら
B級感は全くない。有名バンドに匹敵する、というよりもそれを凌ぐバンドとも言える。今年のゲットの作品中、屈指の完成度だ。
ドラムの手数・バリエーションの多彩さ、変拍子フェチの心を鷲掴みする楽曲構成、不協和音を織り交ぜるハイテクギター。
ただ、ゲットして気付くのもなんですが(というかゲットしないと気づかない)、歌詞カードにはコンパスと定規のロゴが。
ナルホド・・そっち方面の作品をまたゲットしてしまったか。まあ、ダークサイドの音楽を漁っていると知らず知らずにそのテの作品を
ゲットしてしまいます。最近はそういう作品は資料として持っておこうと思って、むしろ重要作品は買えなくなる前にゲットしている。
このテの作品は、アルバムや曲のタイトル、歌詞内容がワリと重要で、シオニストがどういう世界を目指そうとしているのかを
垣間見ることができる。まあ、アルバムタイトルを日本語訳すれば、疫病へのサイレンですから・・。
デジタル化で恐らく多くのメタルリスナーがCDの現物を買う行為をやめてしまっている気がしないでもないが
こういう作品があるから現物をゲットして、作品に含まれる思想、それをリリースするレーベル、アーティストの出自などなど調べたいんだよね。
まあ・・・なんにしても最近はホントこのテの作品に多く巡り合うな。特に米国産。まあ、サウンド自体は鉄板デスメタルですよ。


AUTOPSY - Morbidity Triumphant ★★★ (2023-07-03 04:38:18)

米国産デスメタル2022年作
ココ最近はメタルCDをトンと買わなくなりまして・・ココにお邪魔する機会も随分減りましたが
古参の古学校死はチョイチョイチェックはしとります。
まあ、大御所ですから、前作Puncturing The Grotesque(2017年)もクオリティの高い安定感抜群のサウンドでした。
ただ、聴き続けたかというとそんなでもなく、初期作品への愛情を超えるモノは無かったというのが正直なところ。
ゴアリーな質感とバラバラ死体を思わせるバタバタ感は、やはり若干コモり気味の湿度高めでカビ臭く、ドラムがベコベコな初期作
特にMental Funeral(1991年作)の質感が、当時のボクのツボに刺さりすぎて、それ以降の作品は仕事のように買うだけ
という感じでしたが・・・もちろん仕事ですから今作も買いましたよ。
いつもと同じ感想になるんだろうなと、実はあまり期待もしていなかったんですが、コレは!当時の質感と作風が蘇っている!
ボクのようなオールドファンは、もはやこういうバンドは新しい何かを求めているんじゃないんですよね。コレでいいんですよ。
ドロリとドゥーミーパートの後で、ズトボコのバタバタドラムで走り、搔きむしるような気持ち悪いギターソロで攻め立てる。
やってることは非常にMental Funeral時代に近く、且つ、熟練の演奏技術が加わってるワケで、久しぶりにガッツリ心を鷲掴みにされた感じだ。
いやー、コレですよコレ。Autopsyに求めていたモノは!オールドファンは全員買おう!


AUTUMNIA - By the Candles Obsequial ★★ (2020-05-07 02:11:55)

ウクライナ産シンフォニックドゥームメタル2006年作。
処女作から1年足らずで新たな作品をリリース、前作と音楽性は変わらず、楽曲のクオリティの高さはそのまま引き継がれている好盤。
ゴシックメタルに近い音楽性で、斬新な個性があるというよりは、ヘヴィなギター、メランコリックなアコギ、湿り気のある深めの残響音
たまに女声なども入るという、オーソドックスなスタイルでしっかり聴かせる感じで、ワリとライトに楽しめるのがいい。


AUTUMNIA - O'Funeralia ★★★ (2020-05-07 02:32:47)

ウクライナ産シンフォニックドゥームメタル2009年作
過去2作品に比べ、音質がクリアになり、整然とした印象。元々ライトで聴きやすいが、更に聴きやすくなった。
路線は変わらず、オーソドックスなゴシック寄りドゥームで、ドラマチックな楽曲を聴かせる。
音質向上のせいか、静寂さの存在が緊張感を生み、霊的なシンセもより際立ち、淡々とメランコリックに没頭できる作品になっている。
たまにピアノが余計でくどく感じることがあるのが残念なところだが、この路線のサウンドとしてはかなりクオリティが高いと感じる。


AVANDRA - Descender ★★★ (2020-06-18 14:57:45)

プエルトリコ産プログレッシブロック2019年作
最近よくゲットするBlood Musicレーベルからのリリース。YouTubeの再生回数も1万6千回程度で、恐らく全くの無名バンド。
ところが、そのクオリティの高さから、もし人気に火が点けば、一気に頂点まで駆け上がるほどのポテンシャルを感じさせるサウンドだ。
このサウンドの音楽性を一口で言ってしまえば、「プエルトリコ産Dream Theater」だ。恐らくかなりの影響を受けていると思われる。
ギターやドラムのリフは、Dream Theaterファンなら一発でお気に入りになるだろう。Dream Theater的リズム構成、ギターの刻み方が特徴。
天才ジョンペトルーシと比較するのは少し可哀そうだが、シンセとギターをハモらせながらのハイレベルな超絶ギターソロなども僅かに登場。
とはいえ、曲芸的なギターに偏ることなく、楽曲の中に適度にトリッキーなフレーズを織り込んでいる点は、ボク的にはかなりポイント高い。
空間を埋めるシンセがとても良い仕事をしているせいか、ヴォーカルやコーラスと融合して、湿り気たっぷりの哀愁を漂わせているのもいい。
とりあえず真っ先にDream Theaterフォロワーのようなサウンドに聴こえるのは致し方ないにしても、旋律や曲構成から独創性も感じられる。
時折挿入されるピアノや、コーラスのハモリなどのコードワークから、楽曲構成力は相当高いと感じる。また、ギターは相当のテクニシャン
だと思うが、ギターソロが占める割合は低く、ここぞというところでトリッキーなソロをさりげなく聴かせる。
キャッチーに心に残る判りやすい楽曲は無いが、繰り返し聴くことで味わいを堪能してみたいと思わせる楽曲群だ。
次作あたりで、キラーチューンが登場すれば、爆発的にヒットすると思うんだけどね。
Dream Theater的サウンドを求める人は騙されたと思って聴いてみるといいよ。思わぬ拾い物をした気分になるかもよ。


AVANDRA - Descender - The Narrowing of Meaning ★★★ (2020-09-23 23:56:20)

11分超の大作。美しいピアノ旋律の導入部分から、変拍子を多用するDream Theater的なリフ、シットリとしたヴォーカルへ移行。
徐々に盛り上がっていく構築的な楽曲が素晴らしい。また、Image and words時代のあの雰囲気が蘇ったかのようなギターソロなど
Dream Theaterをリスペクトした楽曲としては、アルバム中この曲が最も色濃い。
単にDream Theaterのモノマネで終わらない終盤の印象的なリフなど、非常に完成度が高い。
Image and Words時代を好むDream Theaterファンが、本家Dream Theaterに再び作ってほしいと思っている楽曲を、このバンドが作ってしまった。
まだまだ本家には及ばないが、これだけの下地があると、録音状態が万全になれば、次作で本家すら超えてしまう名盤を作ってくれるのではないかと
かなり期待をしてしまう。


AVANDRA - Prodigal ★★★ (2023-07-18 21:17:23)

プエルトリコ産プログレッシヴメタル2022年作
日本への空輸可能なショップが減り、興味あってもスルーすることが多くなった今日この頃。そもそもメタル作品を買う頻度が減ってしまった。
もはや、正統派路線で、どうしてもCDで手元に持っておきたいバンドとして購入し続けているのは、この人たちだけかも。
掘り下げれば裾野が広いプログレメタルのひとつに過ぎない無名バンドなんでしょうが、相変わらずそのポテンシャルは高い。
サルサやレゲエの南国イメージが強い国の出身なのに、濃霧に覆われた湿り気たっぷりの冷たいメロハー要素を多分に含むAOR的雰囲気を持つ。
スペイン人が多いお国柄だからなのか・・タイフーンマリアで水浸しの被害に遭遇したからなのか・・この水分量高めの北欧情緒がツボ。
ドリームシアター的なテクニカルな曲構成は、従来作品同様に複雑さを持つものの、改良が加えられ若干耳に馴染みやすくなったという印象。
そもそもレビュー記事自体殆ど発見できないが、Skylighting(2020年)が圧巻のクオリティだっただけに、今作は若干世間評が下がっているように見える。
ボクとしては、初期作品はドリームシアターの焼き直し感が強かったが、アルバムを重ねるにつれて、そのサウンドはバンド固有の色となり
一聴しただけでAVANDRAの音楽という独自性を確立できていると感じている。そして、その音空間の虜になっているなあと思うのです。
ただ手放しに完成度が高いか、というと、その重厚なギターにディレイやリバーブが深めにかかり、ウィスパーヴォイスやシンセの電子音が絡むと
音像の輪郭が壊れやすいという難点があり、相変わらず初期から同様の問題を抱えているなぁ、と思ってしまう。ただ、その無理筋な残跫音こそが
このサウンドの魅力でもあるワケです。また、ピアノ音源とその旋律は、ボク自身がピアノ弾きだからどうしても安直でチープに聞こえてしまう。
そういったマイナス点を差し引いても、高い演奏技術に裏付けられた説得力のある楽曲群に圧倒される、充分な魅力を備えた作品だ。
今作は少年が銃を携えているジャケ、曲タイトルを見ても、戦争のテーマが根底にあるのは明らか。
世界中が混沌としている今、アメリカ合衆国の自治国でこのテの世界観の作品だと、何やら重いコンセプトが背景があるのではと勘ぐってしまう。
実際そうなのかどうかは知らないが、そう感じさせてしまう作品でもある。ボクとしては最近はそういう作品を避けて、ライトに楽しめる音楽を
チョイスしている。その点も若干マイナスかな。繰り返しになるけど、そんなマイナスを差し引いても必聴版なのだ。
・・・しかし、デジタル主流の時代なのか、辺境国のCD入手が日に日に難しくなっていると感じる。この盤はリリース後1年も経たないのに
約6000円と結構お高い買い物だった。その半分は空輸代なんだよね・・。なんとかならんのか。


AVANDRA - Skylighting ★★★ (2021-05-11 00:56:05)

プエルトリコ産プログレッシヴメタル2020年作
初期Dream Theaterの雰囲気を纏う処女作から約1年足らずで登場した2作目。ボク的にかなり期待しているバンドだが、短いスパンでの新作発表にチョイ驚きだ。
前作はなかなか難解な作品でもあり、まだ完全に消化しきれていないのに、昨年11月に新作をゲットし、難解さを乗り越えるためにワリと高い頻度で愛聴している。
前作に比べて大きな進化を遂げたとは言い難いが、かなりの力作である。楽曲の作り込み度合いが高く、なかなかスッと耳に馴染まないが高い完成度だ。
本家Dream Theaterと比較するとまだカワイソウなクオリティかも知れないが、やはり初期Dream Theaterの再来を感じさせるこの空気はたまらなくイイ。
終始霧に覆われているようなシンセと、ハーモニーを重視したウィスパーヴォイスに近いヴォーカルとコーラスにより、繊細で湿度高めな雰囲気である。
そんなスタイルだからか、ヴォーカルに力強く声を張ってほしい、ギターやドラムがトリッキーな演奏をしているのに霧の中に霞んでいるように聴こえる等
若干の不満点はある。次作で改善して欲しいと思うところだが、そんなマイナス要素を払拭するだけの演奏力と楽曲、初期Dream Theater的ギターワークといった
大きな魅力が詰まっている。前作はイチオシのキラーチューンが残念ながら無く、佳作揃いといった印象はあった。複雑な曲展開で個性を出そうとするあまり
不自然な旋律というモノが結構目立ち、キャッチーさに欠ける印象を持っていた。今作はそういう不自然さが若干改善されたと、まず感じている。
それでもなかなか耳に馴染むのに時間がかかる。旋律がスッと入ってこない間は、実は絶妙な旋律を奏でていたとしても、霧の中に紛れて伝わってこない。
曲を覚えてくると、霧の中で何かやってるだけに聴こえていたモロモロの演奏が、徐々に伝わってくる。そうなると、このサウンドの魅力から抜け出せなくなる。
今作は印象的なギターのリフ、トリッキーなリズムと淡々とした雰囲気のバランス感覚、ギターとシンセの掛け合いなど多くの魅力が詰まっててグッドだ。
ジメジメした季節を好むボクとしては、梅雨時期になるとコレばっかり聴いているかも知れないな。


Arcane Voidsplitter - Cosmic Mind ★★★ (2021-06-08 01:57:12)

ベルギー産フューネラルドゥーム2020年作
UNTIL DEATH OVERTAKES MEをメインプロジェクトとするStijn van Cauterによるサイドプロジェクトだ。
フォトショップで頑張って作ったかのような脳ミソと光が描かれたジャケは、相変わらずチープさが漂っており独特の趣きがあってグッドだ。
彼が最も得意とする張り詰めた緊張と静寂を伴う音空間に、歪みまくった極太ノイズに深いリバーブをかけたギターを垂れ流すという定番スタイルだ。
起伏のある曲展開は全く期待できない超スロードローンアンビエント地獄が70分続くという、まるで修行のような苦行サウンド決定版だ。
UNTIL DEATH OVERTAKES MEで聴ける楽曲スタイルでさえ、超スロードゥームなのに、こちらは更に輪をかけて超スローである。
冷ややかさと静けさが素晴らしい絶品のシンセと、彼の持ち味であるギターエフェクトの掛け合いを楽しむ作品。決して過去作のようなチープな音響ではない。
彼が乱発する多くの作品の演奏スタイルは大体似たようなモノなんだが、この盤はリズミカルな要素を全くと言っていいほど排除し、純粋に
シンセとギターが織りなすハーモニーの魅力に特化した感じである。近年の作品はもはや音響に限ってはチープさが薄れ、ホンモノ感に溢れている。
通勤中のマイカーで聴くと、仕事の始業時間までに半分、帰路に着くまでに半分で、この盤をフルで楽しむことができる。
雨天時に聴くと雰囲気があっていいんだが、いつもの通勤経路を少し迂回して海岸沿いルートを通ると尚雰囲気があっていい。そういう楽しみ方をしている。
決して万人にオススメできるシロモノではなく、ドローン地獄に耐性があるリスナー向けだ。このスタイルがダメな人にとってはただのポンコツサウンドだが
音響はもはや完成の域に達しそうな感じなので、このジャンルがイケる人は是非試してみて欲しい。


BATHORY - Blood on Ice ★★★ (2020-05-08 22:59:19)

スウェーデン産ヴァイキングメタル1996年作
Bathoryのヴァイキング作品中、完成度という点では他のアルバムに譲るが、インパクトという点ではこの作品がナンバーワンかも知れない。
録音年の異なる作品の寄せ集めのため、曲毎の音質が異なる上、音痴なクォーソンの「歌」を前面に出す楽曲が多い、という凄まじい作風。
ところが、お得意の鈍重ヴァイキングサウンドのみならず、バラード調の曲や、疾走曲、様々なエフェクトや語り口調の挿入などかなり気合の入った楽曲群が
ドラマチックに展開する。ラストなんてヤケクソでブラストに近い音圧で締めくくり、いつもの心地よい脱力感を体験できる。
腹筋が割れそうなほど笑える音痴な寄せ集めポンコツサウンド紙一重な作品でありながら、冒険譚ハリウッド映画1本観たかのような充実感が体験できる超問題作です。
Bathory上級者マニア向け作品で、コレに高い芸術性を感じ、愛聴できるリスナーはトゥルーバソラーである!


BATHORY - Blood on Ice - One Eyed Old Man ★★★ (2020-05-08 23:29:58)

Bathoryはスローなウォーメタルが真骨頂ということはわかってるんですが、このアップテンポな曲は大好きな曲。
途中からハリウッド映画のワンシーンのような、老魔術師的な声の語りが入り始め、徐々に耽美で神々しいSEが入り始め、
フェードインで分厚いギターが更に盛り上げていき、劇的な展開がくるぞ!くるぞ!と思わせておいて・・・
「イエーイ!!!」というクォーソンの盛大に音程を外すシャウトに腹筋が割れそうになるほど悶絶する。
もうね、この人のこういうセンスが大好きなんだよ。


BATHORY - Nordland I ★★★ (2020-05-05 20:42:48)

スウェーデン産ヴァイキングメタル2002年作。
Bathory作品は初期作やOctagonのようなVenomによく例えられるアップテンポの作品と、破天荒なヘヴィネスによるヴァイキング作品がある。
ボクは後者こそがBathoryの真骨頂と思っており、ベストアルバムはHammerheart、次いでTwilight of the gods、そしてこのNordland2作品だ。
ちなみに、その次に好きな作品はBlood on iceである。全く受け付けない作品はOctagonあたりの、疾走するタイプだ。
次作のNordland Ⅱと共にマストな作品。壮大なヴァイキング大河ドラマを体験できる。
霊的なコーラス&シンセから入るイントロ、そしてタイトル曲でもある2曲目に突入する時点で、チューニングが合っているのかもアヤシイ極太ギターにノックアウトされる。
しかもこのリフはTwilite of the godsとほぼ同じじゃん!とツッコミを入れたくなるのを抑えつつ聴いていると、クォーソンの乗っけから音程を盛大に外しまくる歌が入り
気付くとその粗雑で大胆な、破天荒で野蛮な世界にのめりこんでしまうのだ。


BATHORY - Nordland II ★★★ (2020-05-05 21:05:21)

スウェーデン産ヴァイキングメタル2003年
前作Ⅰとセットで楽しもう。当然音楽性や世界観は前作と全く同じだ。
いろいろなところでクォーソンの歌がヘタで聴けない云々のレビューを見るが、少なくとも野蛮な戦士が歌が上手だったらおかしいじゃない?
この人はホントに音程を取るのが苦手なんだろう。しかし、そういう歌唱だからこのヴァイキングな世界にマッチしているのだ。
鈍重なヴァイキングメタルが延々と続き、ドラマチックに仰々しくラストを迎え、聴き終えた時、まるで新天地に辿り着いた戦士のような心地よい疲れを疑似体験できるのだ。
この作品を最後に、翌年39歳でヴァイキング・ゴッド・クォーソン氏が亡くなってしまう。
この人のヴァイキング作品は、いつの時代でも不器用でありながら妥協しない心意気とペイガニズムへの浪漫が宿っていた。
普通のバンドならばもう少し聴きやすく加工するだろ、と思うようなスピーカーが割れそうな音素材を、そのまんまぶち込んでみたり
他のバンドはこんなダサいリフを使わないだろ、というようなリフを、さも当たり前のように潔く曲中にぶち込むような、豪胆な音楽性が素晴らしいのだ。
クォーソンの気質とそういう手法が融合しているヴァイキング作品がBathoryの大きな魅力。
ネタでコレクションしている人もいるようだが、この魅力を理解してのめりこんでしまうと、演奏や歌唱力のポテンシャルを超越した芸術性すら感じる神盤になると思う。


BATHORY - Requiem ★★★ (2021-01-28 00:19:35)

スウェーデン産スラッシュメタル1994年作
そもそも大作主義のヴァイキング作品にこそBATHORYの魅力を感じるので、コレが発売された当時(大学生頃?)は喜び勇んでタワレコでゲットし
予想外の作風にかなーりヘコんだ思い出がある作品。そういうこともあり、レビューすらしていなかったが、この作品は独創性という点で魅力的な作品。
破天荒・豪胆がウリのクォーソン大先生が、スラッシーな作品を作れば、それはそれで、他のバンドの追随を許さない個性派作品になってしまう。
ただ、当時はまだまだ希少だった唯一無二のヴァイキング作品から一転、ハードコアパンクルーツのスウェディッシュデスメタル的スタイルに
近づいた点は、とてもガッカリ感があったと同時に、この作品自体にはデスメタル的激しさが無いにも関わらず、他のスウェディッシュデス以上の
インパクトを備えていたところに凄さを感じたものだ。


BATHORY - Under the Sign of the Black Mark ★★★ (2021-06-22 02:45:04)

スウェーデン産ブラックメタル1987年作
この盤以前の作品はいずれも後追いで蒐集、特にこの盤はこのサイトに書き込みし始めた頃に、ここの書き込みを見てゲットした記憶がある。
購入当時はまだイヌスケ氏の書き込みまでしか存在してなかったと思うが、好みが近いローランDEATH氏とイヌスケ氏の書き込みが購入の決め手となった。
後追いなので、タイムリーに体験したHammerheart以降の作品群に比べて愛着度は低いかも知れないが、この盤からは初期ブラックメタルスタイルの
完成形を感じる。この時期はクォーソン氏の音痴に歌い上げるスタイルは確立されておらず、ブラックメタルスタイルの歌唱法に生真面目さを感じる。
Celtic Frost等同時期のレジェンド級ブラックバンドと肩を並べることのできる作品。更に尊大な密教的な固有の世界観に大きな魅力を感じる。
BATHORYの盤のうち最も書き込み数が多いのも納得といった感じ。後続のブラックメタルバンドがこの盤をフェイバリットと挙げる例が多いのも頷ける。


BATHSHEBA - Servus ★★★ (2020-07-29 18:15:25)

ベルギー産魔女ドゥーム2017年作
Serpencult、Death Penaltyでキュートな魅力を発揮してきたMichelle Noconの女声ヴォーカルによる真性ドゥームだ。
Thee Plague of Gentlemenの鉄板メンバーでやっていたSerpencultはオーソドックスなドゥーム・スラッジが前面に出て
女声ヴォーカルはあくまでおまけといった印象を持っていたが、この盤はMichelle Noconの魔女的存在がより前面に出た印象だ。
目を塞がれたようにも見える淑女が描かれたジャケ、インナーに描かれる人為的に形作られた木片は、魔女的イメージを想起させる。
また、曲目や歌詞からも、魔性を前面に出した印象があり、Michelle Noconの魅力を底上げし存在感が随分と増した感じだ。
生粋のドゥームフリークから言わせれば、演奏はSerpencultの真っ黒でドロドロなズブズブ感には敵わない、と言いたいところだが、
Michelle Noconの魔性を表現したサウンドとしては、ドゥームにとらわれない、アップテンポやアヴァンギャルドな激しさを盛り込んだ
こちらのスタイルの方がベストマッチだと言える。そういう演奏をバックに、Michelle Noconは単にキュートに歌うスタイルではなく
より毒気を盛り込んだ吐き出すような歌唱を始め、以前と比べて随分と本格的な真性さを備えた呪術を思わせるスタイルに深化している。
このバンドの活動を今後も続けるのか不明だが、彼女の最新の作品としてはOf Blood And Mercuryというポストロック的なユニットが
今年アルバムをリリースしている。こちらもテーマは呪術的な印象は持つが、脱メタル志向が強く、再びキュートな魅力に回帰している。
Bathshebaでヴォーカルのポテンシャルをかなり向上させた印象を持ったが、結局のところ、Of Blood And Mercuryで見せる
キュートにクリーンに歌い上げる歌唱の方がボクとしては好きだなぁと感じる。


BEHERIT - Bardo Exist ★★★ (2021-06-22 01:27:50)

フィンランド産ダークアンビエント2020年作
先月発見して驚いたが、どうやら昨年冬にリリースされていたらしい。一応ブラックメタルのジャンルにカテゴライズされてきたバンドだが
純粋にブラックメタル様式の演奏を聴かせるバンドではない。決して卓越した演奏技術で聴かせるバンドではなく、真性なカルト色が魅力だ。
最も愛聴したのはDRAWING DOWN THE MOON (1993年)で、フィンランドカルトの凄まじさを思い知らされたが、その後はそのカルト風味に特化していき
インダストリアル要素を含む作品に進化していった。純粋なブラックメタル的音響とはかけ離れた音楽性だったが、その内容の濃さはレジェンド級だ。
前作ENGRAM (2009年)で初期ブラックメタルスタイルに回帰したが、今作は一転、完全にアンビエント化している。そのスタイルの変化が評価の分かれ目。
DRAWING DOWN THE MOONやENGRAM時代のスタイルに愛着があるのは確かだが、アンビエント化は歓迎している。というのも、その真性なカルト臭を
表現するには、むしろアンビエントの方が向いている。また、中期のインダストリアル化の方向性からも、その着地点としてとてもシックリくる。
CD2枚組の大作で、タイトル曲Bardo Existsは23分という尺の長さである。ボリューム感でお腹一杯になりそうだが、没入感は高く、長い尺でも飽きさせない。
元来持っている狂信的で尊大なカルト臭に加え、張り詰めた緊張感が加わったことは、旧スタイルを代償としてアンビエント化したことで得た新たな魅力だ。
ノルウェーではアンチBEHERITがいたらしい。思想的なところか、粗暴な音楽性が理由なのかはよくわからないが、少なくともDRAWING DOWN THE MOON時代
以前は忌み嫌われる程の特殊な音楽性だったと感じる。それだけインパクトを放っていた音楽だったと思うが、その醜悪さは今なお健在と言える。
こういうブラックメタルの演奏技術的な醍醐味とは対極にあるカルト風味特化型のスタイルでクオリティの高いサウンドはワリと希少だと感じている。
米PROFANATICAのHAVOHEJの作品群で体験できるカルト臭が志向性として近いが、総合的濃さではBEHERITに軍配、独善的尊大さでHAVOHEJに軍配といった感じだ。


BELL WITCH - Mirror Reaper ★★★ (2020-06-18 01:15:22)

米国産フューネラルドゥーム2017年作
色彩豊かでありながら冷たいモノトーンに見える幽玄なジャケが非常に素晴らしく、当時ジャケ買いした作品。
あまり知らずジャケ買いしたワリに、クオリティの高い真性なフューネラルドゥームでした。
大きな特徴は、初期OMのようなギターレスのサウンドで、多弦ベースとドラムのデュオ編成というところだ。
一聴した感じギターのように聴こえるサウンドは全てベースで、タッピングを駆使した特殊な奏法で演奏している。
CD2枚組に分かれてはいるが、1曲1時間23分の超大作で、ギターレス超スロー垂れ流し系ドゥームという近年稀に見る苦行なんですが
リフの繰り返しの中に徐々に盛り上がる仕掛けや、ハモンドオルガンによる味付けなどのアレンジが素晴らしく、全く飽きないどころか
その世界に惹き込まれて没入感がハンパない。ちょっと格の違いを見せつけるクオリティの高いサウンドだ。
また、この作品リリース直前にドラマーがチェンジしているようで、その元ドラマーは作品リリース直後に亡くなっている。
海外サイトを翻訳しつつ色々調べてみたが、たぶんアル中が原因のようだ。メンバーの死というエピソードがこの作品の真性さを高めているのは
大御所バンドWorshipに似ている。全くの偶然なんだろうが、こういうダークサイドの音楽だけにインパクトが大きい。
今月末頃にAERIAL RUIN(ダークフォークユニット)とのコラボ作品がリリースされる予定で、ボクは当然のように予約しているが
現時点でかなりの完成度なのだが、そのサウンドにギターが加わる、というワケだ。既にYou Tubeで視聴はできるようだが、ボクは1分程度で聴くのを止めた。
とりあえず一聴した印象だが、Worshipクラスのレジェンド級のフューネラルドゥームサウンドになっているんじゃないかな。
ボクが動画で聴くのを止めたのは、先に動画で聴いてしまうのが勿体ないからだ。ウチにアルバムが届いてからじっくりと味わいながら鑑賞したい。
とりあえず真性フューネラルドゥーマーはこのバンドは必ず押さえておかなければならない。


BELL WITCH - Stygian Bough Volume I ★★★ (2020-09-06 23:59:08)

米産フューネラルドゥーム2020年作
真性フューネラルドゥームバンドBell WitchとダークフォークユニットAerial Ruinのコラボ作品。
この作品はかなり楽しみにしていた。軽く試聴した段階で、その真性さに衝撃を受け、悶絶してしまった。
ギターレスのBell Witchだけでも強烈なサウンドだというのに、そこにギターが加わるんだから、その期待は大きい。
最大の聴きどころは、風のように物静かなフォークサウンドと、極太のベースの対比が素晴らしいところだ。
ベースの厚みば半端ナイ。しかも、相当な負のオーラを帯びており、こんなに存在感のあるベースを今までに聴いたことがない。
特に1曲目のクオリティの高さに圧倒される。フューネラルドゥームの神髄はコレだと言わんばかりの葬式っぷりは圧巻だ。
初めて聴いた時、この1曲目でベースが登場した瞬間に鳥肌が立った。直感的にコレはホンモノだ、と思わせるインパクトがある。
この盤はフューネラルドゥーマー必聴盤である。ただ、作品全体で評価すると、ボクはBell Witch単体作品の方が好きかも知れない。
タッピングやハンマリングを駆使した独特な奏法で、ベースのみでギター的旋律までフォローしていた演奏の妙は、この盤では感じられない。
ベースの重低音の魅力に特化され過ぎた感があり、曲が進むにつれて、フォークサウンドの必要性をあまり感じなくなる。
また、1曲目のインパクトが強すぎて、中盤以降までボクは集中力が続かない。大作主義な上、Bell Witch単体作品よりもベースの演奏が
単調に聴こえるからだ。音質のインパクトはこちらが上だが、フォークギターの助けが入った分、ベースの多彩さが失われたと感じさせる。
かなりツボに入った好きなサウンドだからこそ、ダメ出ししてしまうが、この盤はスゴイ作品である。
フューネラルドゥームがここまで進化したのか、と思わせる悶絶必至の作品だ。就寝しながら聴くと、そのまま死ぬんじゃないかと思うよ!


BELL WITCH - Stygian Bough Volume I - The Bastard Wind ★★★ (2020-09-07 00:08:38)

アルバム1曲目を飾る19分超えの大作。この盤はこの曲があれば充分。
暫くはシンセとフォーク、霊的なコーラスが物静かに続くが、4分を越えたあたりで、凄まじい厚みと負のオーラを帯びたベースが登場。
この瞬間に一気にどん底に突き落とされ、その暗黒世界に飲み込まれていく。この4分過ぎのインパクトはそう体験できるものではない。
これだけベースの重低音を歪ませて、音が割れたりせずクリアに聴こえる音作りのワザがスゴイ。


BENEDICTION - Grind Bastard ★★★ (2020-05-12 22:07:29)

UK産オールドスクールデスメタル1998年作
この作品発表当時は、まさか新作が発表されているとは思わず、次作のOrganised Chaosをゲットした後に気付き、ゲットしている。
この作品で重要なのは、B級オーラの源と言っても過言ではないバンドロゴが、ゴシック体になっていることだ。
前作で薄々感じていた脱B級デスメタル志向は、このバンドロゴの変化に表れている。明らかにジャケの質感が昔のB級デス路線ではない。
しかし、ジャケにある電脳偽物スパイダーマンのような謎キャラが非常に愛らしく、脱B級は必ずしも成功はしていない、と安堵している。
音楽性の方は、(これも前作に薄々感じられたが)ラウドロック的なカッコいいリフ重視の路線に旧来のデスメタルスタイルがミックスした感じだ。
ただ、前作ほど露骨ではなく、若干デスメタル寄りに戻ってきているのは嬉しい。
相変わらず展開下手スキルと一本調子ヴォーカルスキルが発動しており、B級愛を感じさせる、安心の1枚だ。
ただ、この盤はそういうスキル発動はあるが、純粋に硬派な音質とリフ構成がカッコよく、ワリとオススメ作品だ。


BENEDICTION - Organised Chaos ★★★ (2020-05-12 22:25:26)

UK産オールドスクールデスメタル2001年作
前作のGrind Bastardより先にこっちをゲットしているが、音楽性に大きく変わりはなく、ラウドロックとデスメタルのクロスオーバー的なサウンドだ。
ジャケとバンドロゴが再びB級デスメタル路線になっているところは好感触だ。また、ジャケの世界観が全く理解できないところがイイ。
相変わらず展開下手スキルと一本調子ヴォーカルは持続しているが、徐々に改善されている。またドラムのリフが妙にカッコよく感じる好盤だ。


BENEDICTION - Scriptures ★★★ (2020-12-31 00:17:13)

UK産オールドスクールデスメタル2020年作
90年代初頭のNuclear Blastのロークオリティ録音が放つポンコツB級デスメタルは、当時の一線級デスメタルとは到底肩を並べられるシロモノではない代わりに
その特有のローファイ感と底辺のデスメタルが持つ世界観が絶妙にマッチして唯一無二の独創性を放っていた。未だにBenedictionはゲットし続けているが
やはり初期3作品のインパクトには到底敵わない。流石に30年も経つと、録音状態も演奏技術も相当高くなり、未完成だからこそある不安定で無骨な味わいは損なわれた。
化石のようなB級デス路線を逸して、ラウドロック的な新境地が見え隠れした時期があり、その古典的魅力が危ぶまれたこともあるが、再びあるべき形に回帰した。
少なくとも、この12年ぶりの突然の新作は、昔ながらのバンドロゴと、ローブを纏った人物、十字架を持った人物や獣、骸骨、稲妻、背景の朽ちた建造物など
オールドスクールデスの鑑とも言えるレトロ感がふんだんに詰まったジャケが非常に美しい。長いブランクを挟み、この路線で新作を出してくれたことが嬉しい。
もはやこのバンドに過去のローファイ感やポンコツ感といったノスタルジーに浸れる作風を求めるのはナンセンス。不器用なB級デスメタル路線であればボクとしてはOKだ。
そういう視点で評価すると、この作品は100点満点だ。B級路線を脱出しようとする新境地を模索するようなサウンドであれば、このバンドは全く面白くない。
超絶なハイテクではない、適度なズトボコビートが突っ走る感じ、いかにもB級デスっぽい凄みを効かせるヴォーカル、トリッキーになり過ぎないギターワークなど
B級デスメタルが備えるべきクラシックスタイルのど真ん中の音楽性を堅持しているところが素晴らしい。こういうデスメタルは今の時代、なかなかお目にかかれない。
劇的に展開するようなことはなく、一本調子に同一コードで突っ走る感じが、このバンド特有の個性で、相変わらず展開下手スキルが発動しているなぁと嬉しくなる。
デスメタル黎明期を支えたB級路線のサウンドが、時間をかけて熟成され円熟した感のある作品。古学校死サウンドの教科書と言っても過言ではナイ。
デスメタルが多種多様に変化したからこそ、こういう頑固なクラシックデスメタルの存在感が際立つ。こういうアツい古学校死愛の濃いサウンドはひたすら追いかけたいね。


BENEDICTION - The Dreams You Dread ★★ (2020-05-12 21:42:12)

UK産オールドスクールデスメタル1995年作
90年代デスメタル全盛時代にはBenedictionはB級路線まっしぐらで、ボクは初期3作品に愛を感じている。
表舞台で活躍するデスメタルバンド勢に比べると、録音状態・楽曲・演奏テクニックの面で差があり、格下感は否めなかった。
しかし、B級デスメタル特有の地味ながらもどこか捨て置けない魅力というモノを持っていた。
このバンドは同時期のBolt Throwerと同様に、展開下手というスキルを持っており、そこに愛情を感じないと愛聴することはできない。
初期作品は、ローファイな録音と展開下手な音楽性に加え、一本調子でコモリ気味のヴォーカルスタイルを兼ね備えたB級デスメタルの鑑だった。
この作品は過去作に比べ、録音状態が向上、ギターはかなり音質が向上し、しかも今までのスタイルからカッコいいリフ重視な路線に鞍替えしている。
そういう意味では、Bolt throwerと同じ道を歩んでいる。Bolt Throwerが5thで変貌したのと同様にギターが進化し芯の太いパンチ力のある音になった。
また、ヴォーカルがお風呂から上がったのか、クリアなデスヴォイスになっているのだ。総合的に見て音楽性自体は大きく向上している。
ジャケの雰囲気がガラリと変わったので予想はしていたが、音楽性向上により、愛情を注ぎたくなるB級路線からの脱却という若干寂しい作品だった。
とはいえ、展開下手というスキルと、一本調子なヴォーカルスタイルは堅持しており、B級愛を捨てきれず、後の2作品も追いかけてゲットしている。


BEYOND BLACK VOID - Desolate ★★★ (2021-06-07 02:04:28)

ベルギー産フューネラルドゥーム2003年作
人に貸したままになって15年以上経つが、少なくともコレを借りたいと言ってきた友人はある意味天才だ。このチープさに潜む魅力を理解するには
彼の作品をゲットし続けないと全く意味がわからないだろう。コレをゲットした当時は、再生した瞬間に聴こえてくるチープなノイズにショックを受け
窓から円盤のように投げようかと思ったものだ。こんなシロモノに散財した自分が情けなくなり、こんな作品に対して少しでも興味を持った自分はバカだと
自己嫌悪したものだ。いろんな作品を蒐集していると、驚くようなポンコツ作品に出会ってしまうことがある。この作品はそんなポンコツ作品群の中でも
特に際立ったポンコツ感があった。しかし、何故だろう。Stijn van Cauterの作品をゲットし続けてもはや十数年、購入当時に全く理解できなかったが
この作品は彼の作品の中でも特に素晴らしいと気付かされる。果たして需要があるのかどうかわからないが、最近はStijn van Cauterの作品のリマスター盤が
次々と発表されている。この盤のリマスター盤が出れば即買いである。
彼の作品では珍しく、霧が立ち込める大海原に船の帆のようなオブジェが描かれる惹き込まれるジャケである。耳に障る甲高く尖ったノイズは、聴き易く加工されず
チープさを醸し出しながら響き渡る。しかしその音は、喧しさとは裏腹に、まるで凪を感じさせる静けさを伴う。そこに鈍重なフューネラル感を纏ったギターが
絡んでくる。ジャケイメージに見事に合致した音楽性と、大胆な音響に絶大な魅力がある。
まあ、さっき新作の記事でも書いたが、万人にオススメできるシロモノではなく、ポンコツ感とレジェンド級が紙一重で折り合った衝撃作品である。


BEYOND BLACK VOID - Voidgaze ★★★ (2021-09-06 00:29:12)

ベルギー産フューネラルドゥーム2019年作
2枚組ドローンドゥーム地獄。完成形に到達したと感じるWraith Crag(2021年作)があれば、敢えてゲットする必要はないかも知れないが
DESOLATE (2003年)の衝撃作品のチープノイズの残り香が仄かに感じられる分、完成形への過程と感じられるところは魅力的である。
Stijn van Cauterの作品は、近作になるにつれて、打楽器をどんどん排除している。もはや、彼がイメージする音世界にビートは不要という
ことなのだろう。更にこのプロジェクトは旋律を奏でるということさえ否定するかのような一本調子なサウンドだ。むしろそんな苦行だからこそ
ハーモニーに特化した魅力がストレートに伝わってくる。この盤は2枚組で結構お腹一杯になるが、2枚のうち1枚目の方に特にハマった。


BEYOND BLACK VOID - Wraith Crag ★★★ (2021-06-07 01:31:51)

ベルギー産フューネラルドゥーム2021年作
UNTIL DEATH OVERTAKES MEをメインプロジェクトとする一方で、多くのソロプロジェクトを抱えるStijn van Cauterによるドローンドゥーム。
新型コロナウイルスのせいで、昨年は空輸できない期間があったが、やっと彼の運営するレーベルショップからの空輸が解禁となりゲットすることができた。
受注したらその都度CDrを焼くのだろう。届いた盤からは印刷したてのインクのニオイが漂い、盤の印刷も光沢がある。いかにもPCで個人で加工した感のある
ジャケとバンドロゴは、長年彼のポンコツ作品にひたすら散財した者としては、残念感など皆無、逆に妙な高揚感がこみ上げてくる。
普段あまりCDr作品は買わないのだがStijn van Cauterの作品はデジタル作品かCDrしか見かけないから仕方がない。チープなジャケとインクのニオイから
伝わってくる手作り感がたまらなく素敵だ。サウンドは購入前に大体想像がつく。また単調な垂れ流しなんだろう。それでも彼の作品の魅力は絶大だ。
サウンドはUNTIL DEATH OVERTAKES MEの、ギターストロークに合わせてドラムを叩くお家芸スタイルとはまた異なる演奏である。それでもやっぱり垂れ流しだ。
歪んだギターを超長めに垂れ流し、アトモスフェアなシンセが絡むサウンドだ。収録される3曲はそれぞれ19分、17分、19分という大作主義の苦行だ。
これじゃいつもの作品と同じじゃん!と思いつつ、変わらないこの底辺アンビエントドローンスタイルに安堵し、没頭してしまう。素晴らしいの一言。
とりあえず万人にオススメできるシロモノではない。聴く人によってはポンコツサウンドだ。このポンコツ感とレジェンド級が紙一重で折り合っているんだよ。


BLACK SABBATH - 13 ★★★ (2020-05-04 22:28:12)

初期作品はTechnical Ecstasyまでの作品、様式美作品はHeaven and Hell、Headless Cross、(Tyrは嫌いではないが様式美が過ぎる。)
加えて、世間ではワリと不評だったがMob Rules、これらの作品がボクのストライクゾーンでワリと満遍なく愛聴してきた。
だから、ディオとトニーの歌はスンナリ受け入れられると思っていた。しかしDehumanizer以降の3作品は、熟練の演奏技術があるので決してクオリティが低い作品ではないが
ディオやトニーの個性を活かす楽曲・スタイルとは言い切れず、どこかアンバランスなコレジャナイ感が漂っていた。
今回の作品で真打ちのオジーが加入ということで、かなり期待しつつも、ここまで混迷してどんな作品になるのかという不安もあった。
まあ、潔いほどに原点回帰なサウンド、かつ、初期作品を意識したかのような楽曲・曲展開。古参のファンはこういうサウンドを聴きたいんだろうとでも言わんばかりの。
少なくとも、こういう感じのサバスを聴きたかった、というのは間違いないが、ちょっとそのまんま過ぎる印象は否めない感じだ。
70年代の作品と比べるのはどうかとも思うが、過去作のローファイな感じがギターに体温のようなヌルい感覚を与えていたと思うが、今作はそういう感覚が薄目。
ダメ出しをしてしまったが、少なくとも過去3作品のようなコレジャナイ感は消え、ドラム以外オリジナルメンバーの演奏でオジーの呪術のような歌唱が聴けるのは素直に嬉しい。


BLACK SABBATH - 13 - Age of Reason (2023-10-23 03:58:48)

購入当時はまあ、あまり深く気にせずに楽しんでましたが、まあ気持ち悪いな・・とは思っていたんですが・・。
Zeitgeist(時代精神)から続くこのAge of Reasonという曲は、うーん、やっぱりかなり違和感がある。
Age of Reasonは、理神論者で政治活動家のトマスペインが書いた著書、でして、別に熟読したワケではないんですが
ザックリ言えば、神の存在を肯定しつつ、その存在に囚われず経済活動してもええですよ、という合理主義的な理屈。
随分昔に学んだ哲学や社会学ですから、かなりアヤシイですが、相反する両者を合理的理由付けで両方認めてしまおうという
ヘーゲルの弁証法的な屁理屈、とボクは解釈してるんですが・・そもそもその考えは後のマルクスやエンゲルスに繋がる思想だったハズ。
このテのマニアックな反社哲学がシレッと曲タイトルになっていると、エンターテイメントの枠を超えてしまってなんか気持ちが悪いんだよな。
そういえば夏頃に〇〇の羊とかいうTV番組で弁証法があたかも素晴らしい哲学として紹介されてたから、母親にそんな番組見るな
と言ったんだが・・。最近はクイズ番組の問題や解答なんかにも違和感を感じることがあるし、哲学や社会学に疎い日本人に
共産主義思想を刷り込んでいる感が、なんだか気持ち悪い、ということがホント増えてきた。
ちょっと脱線したが、こういう曲があると、メディアやサブカルチャーに暗示が含まれてる、というのはまんざら都市伝説とも言い切れないと
思ってしまうんだよね。
それを踏まえてサバスのSabotageあたりからBorn Againあたりまでを振り返ってみると結構興味深いよ。


BLACK SABBATH - Sabotage ★★★ (2020-08-20 21:56:42)

英国産ロック1975年作
サバスは大抵このサイトに来た頃にレビューしたと思ってたが、書き込みしてない盤があるようだ。
昔書いた内容を見ると適当な書き込みをしてるなぁと思うが、ダブって書き込むのは良くないので書いてない盤をレビュー。
前作Sabath Bloody Sabbath(1973年)までの作品と比べると随分と聴こえ方が違う。オジーの固有の声質、血を感じる温もりを含むギターといった
感触が前作までには一貫して感じられたが、この盤は少し違う。前作までの初期作品は総じて楽曲はワリと整然とし、旋律の味わい、湿度の高いドロリとした
感じが魅力的だったが、この盤以降、湿度が若干下がる。また、この盤のみに感じる固有の味わいは、メランコリックさすら感じる前作までの落ち着いた
空気から一転して、狂人を更に際立たせる叫びにも近いオジーの歌唱、敢えて釈然としないハーモニーや音程を導入し、この盤固有の演奏のバラつきや、
ギターソロの深めな残響音が従来にはなかった浮遊感を生み出すなど、そういう要素が今までとは全く異なる類いの狂気を生み出し、カオティックな緊張感が
濃厚に出ているところが大きな特徴だ。そういう作品なので聴く人によっては、まとまりに欠けると思ったり、プログレに例えるケースもあるだろう。
前作までの初期作品を教科書通りのサバス作品とすると、この作品はその範疇にはなく、また違った趣きのある作風だ。
ボクの好みとしては、前作までの、落ち着いた湿度が高めの作風が好きだが、コレはコレでサバス固有の狂気に満ちた良作だと思う。


BLACK SABBATH - Vol 4 ★★★ (2020-08-20 22:32:12)

英国産ロック1972年作
サバスの盤をレビューするとしたらこの盤は外せない筈なのに、ココに来たばかりの頃には敢えてレビューしていないのが笑える。
とりあえずボクの嗜好から、当時はジャケが気に入らなかった上、アルバムタイトルが「Vo.4」というナンバリングタイトルというところに
趣きを感じなかったんだろう。昔からそういうところにコダワリがあって、盤の評価の約3分の1くらいは、ジャケと雰囲気なんだよね、ボクは。
しかし、タイムリーに経験した世代の人たちはきっと、このオジーのシルエットジャケは百点満点で狂喜したんだろうなぁと想像する。
年齢を重ねて、サバスサウンド自体にノスタルジーを感じるようになった今、逆にこのオジーシルエットジャケが美しく見える。
前作Master of Reality(1971年)は、ドープスモーカー的背徳感やヘヴィネスが感じられる上、判りやすい鉄板曲が多かったが
この盤は、前作で濃厚だった毒気がほんの少し抜けて、純粋にロックサウンドの醍醐味を楽しめる内容になっていると感じる。
前作までにあった密室的な感じや、処女作のような墓場といったロケーションが脳裏にあまり浮かんでこず、狭いライブハウスの空気感で
映えそうなグルーヴと、キャッチーな旋律・リフが魅力だ。濃さとキャッチーさのバランス感覚が絶妙な盤だなと感じる。


BLOOD FARMERS - Headless Eyes ★★★ (2020-09-25 16:51:47)

米産ドゥーム2014年作
世に作品を出す前は、Black Sabbathのカヴァーバンドをやっていたということもあり、サバス初期作品の独特な温もりや型に嵌らないギターワークなどから
Black Sabbathの影響を感じないでもない。前作から約20年近く経って知らない間に発表されたこの盤は、前作の血塗れ感満載のノイズが影を潜めた代わりに
ヴィンテージドゥームに近いロックの原点といった音楽性がより前面に出た。その分、初期Black Sabbathの湿り気やコンパクトさが若干増した印象はしている。
とはいえ、そのギターには過去作同様に血の感触が感じられ、只ならぬ狂気が宿っている。演奏スタイルこそ変化したが、根本的な狂気の世界は変わっていない。
B級ホラー映画によくある農夫の連続猟奇殺人的なイメージは、前作までの作品で強烈に印象付けられた感じがするが、その世界観は今作でも色濃い。
女性の目を抉り、片目眼帯の男がその目をまるで義眼のように埋め込む、血に塗れた猟奇的な性癖を感じさせるジャケ、ジャケ裏はサイケによくある棺桶。
インナーには、採取した目を瓶に入れているイラストがレトロ調な画風で描かれている。猟奇的狂気に満ちた危険な空気が大きな魅力だ。それが音に反映されている。
残念ながら、創始メンバーのうち、ベーシストのDr. Phibesは44歳の若さで亡くなっており、どうやらEli Brownがヴォーカルとベースを兼任しているようだ。
このバンドは作品数が僅かで、一部ドゥームファンから崇められるものの知名度はそこそこ。ボクはこのジャンルではレジェンド級の方々だと感じている。
前作よりヘヴィさは控えめだが、ギターノイズは絶妙な浮遊感と倍音を作り出し、全ての音に意図的な強弱・緩急があり、露骨ではない仄かに感じられるゴア要素が宿る。
そういった演奏を、サラリと自然体でやっているという貫禄がこの音から伝わってくる。全てを知り尽くし達観した余裕すら伝わってくる。
20年近くの長い間音沙汰ナシ、というよりは既に解散したと思っていたが、実はこの間、M-SQUADというサイケデリックバンドで2つの作品を残している。
もちろん作品のクオリティは高い。が、2作品ともゲットできていない。日本に空輸できないショップで僅かに見かけた程度だ。まあ、Blood Farmerほどの完成度
ではないと感じているので、それ以上探してはいないが、まあ入手は困難なんだろう。このM-SQUADのSmoke(2002年作)はアルバムタイトルから察する通り
浮遊感の強いストーナー作品だ。そういう活動経歴もあってか、この作品には過去作ではあまり感じなかったストーナー的浮遊感がやや濃くなっている。
とりあえず、Blood Farmersの作品は、ドゥームロック路線愛聴者は、バイブルとして必携。次の作品を作るのかどうか定かではないが、検索に全くヒットしない
ところからも、また活動停止しているのかも知れない。折角再結成したのだから、活動を継続して、またスゴイ作品を聴かせて欲しいと切に願う!


BLOOD OF THE SUN - Blood of the Sun ★★★ (2020-05-11 01:25:30)

米産サイケデリックロック2004年作。
粉っぽくストーナー寄りのエフェクトを咬ませて深めの残響音とワウを多用した浮遊感抜群のギターにハモンドが絡む濃厚なサイケデリックサウンドが魅力だ。
よくストーナーロックとして分類されているのを見るが、ストーナー派のストライクゾーンであることは確かだが、ストーナーど真ん中ではない。
そんなジャンル分けで片づけられるほど単純な音楽性ではなく、職人気質なミュージシャンが結集して作り上げたハードなサイケデリックロック、と思って欲しい。
このメンバーたちがこのバンドの前にどんな経歴があるのかはよく知らないが、相当の熟練者であることには間違いない。
力強いロックなヴォーカルと、破天荒なグルーヴ感、ブルーススケールを多用する濃厚な楽曲群は、南米の砂煙の舞う荒野を想起させる。
処女作にして他の追随を許さない格の違うクオリティ。超オススメである!


BLOOD OF THE SUN - Blood’s Thicker Than Love ★★★ (2020-05-11 00:52:18)

米産サイケデリック・ハードロック2018年作
昔はワリと濃いストーナー色を出す音楽をやっていたが、最近はそのテイストを残しつつハードな、ヴィンテージ臭のする音楽をやっている。
初期作と違い、ストーナーとメタリックなハードロックの丁度中間くらいの質感のギターで、異様にサイケデリックで渋みがある。
昔の作品から一貫してキーボードが良い仕事をしており、特にハモンドオルガンがメチャカッコいい。ギターとハモンドの掛け合いは相当アツい。
音ひとつひとつへの魂の込め様が違う。ギターソロや鍵盤のフレージングひとつとってみても、やたら玄人臭のする熟練の気合を感じさせる。
米産はあまり追いかけないんですが、このバンドはちょっと格が違うので追いかけてます。こういう路線では今一番カッコいいんじゃないかな。


BLOODBATH - Grand Morbid Funeral ★★★ (2021-02-22 22:23:11)

スウェーデン産デスメタル2014年作
BLOODBATHは我が家にはこの1枚のみある。20年選手の鉄板スウェディッシュデスメタルだ。一昔前なら堪能できたが、最近はこのテの激しさは苦手。
次作「The Arrow Of Satan Is Drawn(2018年)」では、激しさがほんの少し控えめになり、新たなアプローチを見せているが、ゲットしていない。
一般のデスメタルに比べて、禍々しさや激しさが上乗せされるスウェディッシュデス特有の個性が凝縮したようなサウンドが素晴らしい。
アンチクリスチャンな冒涜的な背徳感が濃厚に漂っており、その世界観が大きな魅力となっている。また、ザックリ感あるギターの禍々しさに血の感触がある。
ディレイを深めにかけたギターワークの気持ち悪さも聴きどころだ。血みどろでハイテンションなグルーヴ感が全体を支配し、もはやクタクタになるが
スウェディッシュデス路線ではかなりハイクオリティだと感じさせる音楽性だ。


BLUE OYSTER CULT - Blue Öyster Cult ★★★ (2020-08-20 23:09:54)

米国産ロック1972年作
この盤はBOCの有名作品をある程度揃えた後で、一応コレクションしとこうと思ってゲットした盤だ。
Secret Treaties(1974年)、Agents of Fortune(1976年)、Imaginos(1988年)と、この処女作が個人的名盤だ。
ボクのロックサウンドの嗜好としては、米国産よりも北欧情緒を好むので、BOCは好みから外れそうなモノだが
コミカルなホラーエンターテイメント色のあるアメリカンロックが他の米国産と一線を画し、とても心地良く聴こえる。
ちなみに世間評は微妙っぽいImaginosはアメリカンロック的でありながらメロディアスハード色を帯びて、ピアノが美しい個人的神盤だ。
生々しさとヘヴィさが同居している作品を好むオールドリスナーは、きっとメロハーバージョンBOCはダメだったんだろう。
さて、この盤は処女作であるにも関わらず、演奏の安定感に優れ、バラエティ豊かな楽曲、米国産でありながら
英国オルガンロックテイストと翳りが仄かに感じられ、この時代にしてはギターの音像がややヘヴィでエフェクトが優れていると感じる。
中期以降の作品で感じられるホラーエンターテイナーテイストは控えめだが既にこの盤で培われており、魅力あるヴォーカルや
コミカルで大胆なリフ、楽しく絡むコーラスなど、とても聴き応えがある。


BLUE OYSTER CULT - The Symbol Remains ★★★ (2021-01-03 12:38:28)

米国産HR2020年作
とりあえずこのバンドの新譜というだけで★★★は確定だ。約19年ぶりくらいかね。
ボクはアメリカンロックのようなライトで楽しいサウンドにはイマイチ没入できない。米より北欧・露派の感性を持っている。
そういうワケで、米産ロックは世間評よりは辛口になりがちだ。それでもBOCはゲットし続けているフェイバリットバンドである。
BOCには決して北の寒い雰囲気は無いが、このバンドは単にライトなアメリカンロックでは収まらない魅力があるから追いかけている。
メディアにより米のBlack Sabbath・ヘヴィメタルとして大々的に宣伝されたことで、新規ファンを得た代わりに、従前のファンからは
割と微妙な評価を受けていたと感じるIMAGINOS (1988年)は、決して売りに走った、消費されるだけの産業音楽の類とは全く異なり
ホラーとポップを見事に融合させた感のあるAGENTS OF FORTUNE (1976年)を更に進化させ、メロディアスハード風味をスパイスさせた名盤だった。
アメリカンロック風味を仄かに残しつつ、ピアノ導入により北欧情緒といっても過言ではない冷たさと叙情を盛り込みながらも、決してポップで
ユーモラスなテイストが失われていない。活動初期からネタを温めて完成に至った集大成・コンセプトアルバムで、ウチの蔵CD群5本の指に入れてもいいと思う超神盤だ。
そんなモンスター盤に匹敵する作品を新作発表の際には期待するんだが、一定のクオリティは当然あるものの、アメリカンロック色を強める作品はなかなかボクとしては
受け入れ難く、BOCの盤をゲットする度にIMAGINOSの素晴らしさを再確認してしまう。
前作CURSE OF THE HIDDEN MIRROR (2001年)は、期待する音楽性とは全くかけ離れた盤だったが、良い意味で期待を裏切られた感のある名盤だった。
ロックの原点回帰といった作風かつ、巧みなコードワークで聴かせる感じがボクのツボを刺激した感じだ。ボクにとってはここに挙げた3作品がBOCの名盤である。
今作は、前作の従前と全く異なる舵取りから、どのような音楽性になっているのかが大きなポイントだったが、ワリとIMAGINOS時代に近く、IMAGINOSで感じる冷たさが
若干失われ、アメリカンロック要素にちょっと寄った感じだ。また、前作に比べると、繊細なコードワークといった魅力は若干薄れた感は否めないところがある。
名盤発表後のHEAVEN FORBID (1998年)ゲット時に感じた喪失感こそ無いが、今作が過去の名盤に肩を並べられる盤かというと、ちょっと微妙な感じではある。
ヴォーカルの独特なユーモアは健在、アメリカンロックの醍醐味、IMAGINOSに近いドラマチックさが詰まっており、物足りなさは円熟した貫禄で補っていると感じさせる。
この盤は、楽曲が耳に馴染むと、また評価が変わるかも知れないが、発売日にゲットし今日まで楽しんだレビューとしては及第点以上といった感じだ。
それだけ旧作に思い入れがあるから、仕方がないな。


BOLT THROWER - The IVth Crusade ★★★ (2020-05-11 02:32:18)

UK産オールドスクールデス1992年作。
ココのイカレポンチスレで多く語られている化石デスメタルバンドだ。
ボクはBolt Throwerに愛を感じているので、アルバムコンプリートしているが、最もクオリティの高い盤はコレじゃないかと思う。
とはいえ、このバンドには展開下手というスキルがあるので、どの盤にも強力な代表曲になり得るキラーチューンがない。
それでも起伏のある楽曲が聴きたい人は、録音とドラムがポンコツサウンドなIn Battle There Is No Law!を聴くといい。割と多彩なギターソロが聴ける。
また、2nd、3ndはこれでもかというくらいダウンチューニングした重低音がアツい。4thは前ほどダウンチューニングにせず猛々しさを前面に出した。
どの盤も全く同じというワケではなく、一応進化はしているのだ。ただ、劇的に進化した盤というと、このTHE IVTH CRUSADEなのだ。
録音状態の向上と共にダウンチューニングをやめることで低音部分の音質が向上しており、Bolt Throwerの優れた持ち味である硬派なギターの音はこの作品以降で聴ける。
まあ、これ以降の作品はどれも展開下手で目立って優れた楽曲というのはなかなか思い浮かばないが、とにかくギターの音、特に刻まずドゥーミーなパートの音は味わい深い。
この盤以降は、もうジャケと世界観で好みが決まる。ボクは騎士団ジャケが非常に美しいこの盤がナンバーワンで、その次には・・・
夕日に向かって、一体何と戦っているのか気になる「・・・For Victory」、ついにアーミーな天空騎士団が登場した「Honour Valour Pride」あたりが好みだ。


BROTHERS OF METAL - Emblas Saga ★★★ (2020-08-02 22:52:21)

スウェーデン産ヴァイキング・パワーメタル2020年作
Prophecy of Ragnarök(2017年作)が結構なお気に入り作品で、今作は結構楽しみにしていた。
バンド名はManowarの名曲が由来だろう。Manowarの世界観にドップリと浸かってしまったメンバーによるハイレベルなサウンドだ。
普段聴いているサウンドと比べると、ギターバッキングなどに深みをあまり感じないメタリックなサウンドだが好きなんだから仕方がない。
前作の延長上のサウンドで、ファイティングスピリットを感じるアツいサウンドだ。今作では海上で大蛇のような竜と戦っている優秀なジャケだ。
最大の魅力はウォーメタル的な迫力であるのは間違いないが、前作以上に女声ヴォーカルの卓越した歌唱力を前面に出した、非戦闘時の休憩的な曲が
ホント美しくて素晴らしい。女声シンガーとしては相当ハイレベルにあるヘヴンリーヴォイスの持ち主だ。
また、トリプルギターの絡み合いは、疾走曲よりも、こういうミドルのサウンドでとても際立っているね。
仰々しいオーケストラヒットや、拳を振り上げたくなる男声コーラスは今作でも健在だ。前作でも感じたが、全員の演奏力と楽曲のクオリティが高い。
インナーにあるメンバー8人がコスプレを施した写真を見ると、このヴァイキングな世界観に浸りきってて全員仲良しなんだろうなあと思う。
こういうバンドはこの先メンバーチェンジせずに家族的なイメージを持続させながら頑張ってほしいと思う。エンターテイメント作品としては
今年のナンバーワン作品になりそうだ。メタル初心者から上級者まで万人に猛プッシュしたい鉄板作品だ!


BROTHERS OF METAL - Emblas Saga - Njord ★★★ (2020-08-02 22:59:10)

女声ヴォーカルをクローズアップしたくなるバンドだが、ダミ声の男声ヴォーカルの歌唱から始まる曲だ。
3人のヴォーカルの歌唱力の高さ、ギターソロのテクニック、盛り上がる曲展開、ファイティングスピリットが前面に出た迫力ある楽曲など
聴きどころ満載な、この盤のキラーチューンだ。


BROTHERS OF METAL - Emblas Saga - One ★★★ (2020-08-02 23:05:03)

どうやったらこんな超ハイトーンが出るの?と言いたくなるほど卓越した歌唱力の女声ヴォーカルにビックリするが
汚い声のダミ声男性陣とのコーラスワークがどうしてこんなに美しく聴こえるのか。そこが不思議でならない。
ゆったりとしたテンポで聴かせる曲だが、サビ部分の印象的なメロディーとコーラスが素晴らしい。


BROTHERS OF METAL - Prophecy of Ragnarök ★★★ (2020-05-13 20:42:56)

スウェーデン産ヴァイキング・パワーメタル2017年作
Manowarがモーレツに好きなんだろ、と言いたいコスプレ&メイクがツボの8人組によるど真ん中パワーメタル。
ステキなバンド名もさることながら、各メンバーには座右の銘がついており、全員のキャラが立ってて素晴らしい。
メインの女声ヴォーカル(Voice of the Valkyries)&男声デスヴォイス(Battle Cries)&サブキャラ的男声ヴォーカル(Tongue of the God)
という3名のヴォーカルはそれぞれ個性的かつ高い歌唱力があり、非常にファイティング。特に女性ヴォーカルはハイトーンが美しく相当上手い。
トリプルギター(Guitar of Lightning、Guitar of Justice、Guitar of Steel)の演奏技術も高く、パワフルかつ華麗だ。
ちなみにベースはMighty Bass of Thunderous Glory、ドラムはAnvil and War Drumsという座右の銘を持つ。
PVを観るとわかると思うが、ヴァイキングな世界観が大好きということが物凄く伝わってきて全員仲良くて楽しそう。ユーモアも持ち合わせている。
ボクはこういうバンドに弱い。PV見た瞬間にゲットしてしまった。こういうバンド結構いると思うが、このバンドはコスプレも楽曲も演奏もレベルが高い。
拳を振り上げたくなるような男臭いコーラスが激アツで、血が滾り、大自然を駆け、甲冑を身に纏って戦いたくなる。
ストレートなパワーメタルで聴きやすい上、何か力が湧いてきそうな元気な気分になるので、朝の通勤途中の車で聴くには持ってこいのサウンドだ。


BROTHERS OF METAL - Prophecy of Ragnarök - The Mead Song ★★★ (2020-08-02 23:32:40)

この盤のキラーチューン。女声ヴォーカルのみならず、男声ヴォーカルの歌唱力がスゴイということがよくわかる。
力の入るシャウトがアツい。そして、なんといっても楽しい雰囲気がいいんだよ。


CADAVER - Edder & Bile ★★★ (2021-02-19 00:05:17)

ノルウェー産デスメタル2020年作
実に16年ぶり・・とはいえ、「...IN PAINS」(1992年)購入当時以来、存在自体忘れていたバンド。16年前の作品も全く知らない。
「...IN PAINS」時代は、ウッドベースを取り入れた異色ユニットに興味を持ち愛聴していた。Carcassのビルスティアーに一目置かれたバンドでもあり
ゴアテイストなコンセプトを感じさせる世界観だったが、そのワリに攻撃力が無く当時のデスメタル群と比較してもB級以下の扱いで止むを得ない感はあった。
ゴアリーなデスメタルかつB級というと、同時期のバンドではCancerあたりを思い浮かぶが、そこまでのゴアテイストすら感じられなかった中途半端な作風。
とはいえ、地味な音響とは裏腹に、その編成と楽曲からは何か新しいサウンドを期待させるモノがあったと記憶している。
我が家のコンテナのどこかに収納されていると思うが、もはや20年以上聴いていない。その後バンド名を変えて活動していたことは、この記事を書く前に
ネット情報で調べて知ったが、今現在まで活動して作品を出していることにとても興味を持ち、試聴した内容が想像以上のクオリティでゲットしてみた。
どうやらオリジナルメンバーは1人で、メンバーは一新されているようだ。ジャケのチープなガイコツオブジェのB級テイストで、中身が大丈夫なのか心配になるが
基本オールドスタイルのゴアリーなデスメタル路線に、更に攻撃力を増すブラストを織り交ぜた、極上のデスメタルだ。
録音状態が非常に素晴らしいと感じる。硬めの音質のドラムが心地よく、抉るようなギターが突き刺さる。「...IN PAINS」時代に新しい作品を作ってくれると
期待させた空気は、この作品で聴かれる独創的な楽曲やアレンジに発揮され、現実のものとなったなぁ、と感じている。
当時感じた物足りなさは一切無い。円熟したとても聴き応えのある作品に拍手を贈りたくなる。古学校死フリークは必聴盤だ。


CADAVER - The Age of the Offended ★★ (2023-10-09 02:43:40)

ノルウェー産デスメタル2023年作
なんだか様変わりしたな・・と思ってましたが、同郷TNTのギタリスト加入が原因ですか。このギターは誰だっけと思ってたが。
元々、真性で危険な感じこそしない反面、暴虐性がウリ(にしようとしてそうでもなかった)のバンド。
バンド名すら忘れそうになった頃に突如リリースされた前作EDDER & BILE (2020年)で、適度なゴア要素と暴虐性を備えた鉄板B級デスに。
オールドスタイルを残しつつ、ブラストを交えつつもシンプルな突進B級ズトボコ感、コレがこのバンドの大きな魅力だ・・・が
随分とカジュアル化した印象、TNTらしさが加わったかというと、ボクの印象では、アクの強いギタリストが加わった(笑)という感じ。
そもそも昔はダブルベースを取り入れたり、何か他のデスメタルとの差異化をしたい意思が割と強く感じられるバンドでもあるので
飛び道具のようなギターがやりたい放題やってる、オールドスタイルからなんでもアリのカジュアル化はワリと納得な感じです。
硬めの音質で演奏されるリズム隊の無骨なズトボコ感は、最低限残されているが、コレは維持していって欲しいな。
ギターが目立つ分、リズム隊の魅力が全面に出た前作の方がボクの好みではある。
しかし、やりたい放題楽しくやってる感が伝わってくる今作は、コレはコレでアリかなと。


CANCER - To the Gory End ★★★ (2020-08-21 00:59:34)

英国産オールドスクールデスメタル1990年作
ワリとデスメタルにハマり始めた初期にゲットした作品だが、当時は有名な鉄板デスメタルに激ハマりしていたこともあり
そんなに沢山は聴かなかった盤だが、適度なゴア要素を含んだ作品としては、AutopsyやObituaryと肩を並べることができる名盤だ。
↑の書き込みで知ったが、そうですか、この盤はB誌で4点という酷評の洗礼を受けていたのか。当時はタワレコでバイト代つぎ込んで
デスメタルを買い漁っていた時期で、ジャケ買いした作品だ。このアタマをザックリ肉切り包丁でカチ割られている男性の絵と
目が合ってしまったんだよね。当時としてはこんなにシンプルで現実味を帯びた残酷なジャケは珍しかった。
演奏に安定感もあるし、楽曲もしっかりとしている、仄かなゴア要素を含む硬派なギターの音、タイトで乾いた質感のドラム、起伏のある展開
凄みよりも無機質なやるせなさを感じるデスヴォイス、テンポの緩急、この時代のデスメタル特有の気持ち悪いギターソロなど
ワリとオールドスクールデスに求めるハードルをクリアしている優秀な作品だ。


CAULDRON BLACK RAM - Slaver ★★★ (2021-11-07 00:28:03)

オーストラリア産デスメタル2020年作
鼻詰まりのようなズルズルとしたギター、手数多くバリエーション豊かなドラム、コモり気味の吐き出すようなヴォーカルが素敵なマニア向けデスメタル。
ギターソロのようなメロディアス要素は殆ど排除され、単なる変拍子に留まらない、拍が取りにくい独特のテンポチェンジを多様するリフを基本として
構築的に楽曲を組み立てている。その作風は昔から変わらない。決して一般受けしそうにない唯一無二の個性派で、ボクのデスメタルランキングではかなり
上位に位置するバンドだ。高音域のギターが殆ど登場しないので、かなり地味な印象を受けるかも知れない。その上、過去作品よりも更に地味な印象を受ける楽曲。
湿度の高い重低音ギターのノイズによるリフをメインとしているが、慣れないうちは、低音で何やらグシャグシャとノイズを掻き鳴らし、バタバタとドラムが鳴り
吐き捨てヴォーカルが唸るその音楽性に、何じゃコリャ?と思うかも知れない。しかしコレがハマってしまうと、彼らの描くダーティーな海賊ワールドの虜になる。
この不思議なリズム感で演奏がジャストで合うことに凄さを感じる。地味に聴こえるワリにどの作品もかなり卓越した高度な演奏だと思わせる。
オールドスタイルのデスメタル寄りであっても、その作風は、類似するバンドというものが思い浮かばない個性派だ。濃いアングラ臭とB級っぽさを漂わせるのもイイ。
今までの作品は、ワリとアルバム前半にキラーチューンがあったが、今作はどちらかというと目立つキラーチューンは無く、後半になるにつれて激しくなっていく。
判りやすさでは2ndだが、彼らのやりたい放題を堪能したいなら、前作と今作だ。今作は一風変わった濃いデスメタルを求めるリスナーにオススメしたい1枚だ。


CAULDRON BLACK RAM - Slubberdegullion ★★★ (2020-05-13 01:18:24)

オーストラリア産デスメタル2010年作
「宝探しメタル」という謎ジャンルで登場した処女作Skulduggeryに相当ハマり追い続けている異色デスメタルバンドの2作目。
今作もその異色の世界観を引き継いでおり、他では聴けないB級路線(但し演奏は抜群にうまい)の魅力を備えた作品に仕上がっている。
この音からイメージされるのは、ジョニーデップのようなカッコいい海賊ではなく、ダサいチンピラ風情の海賊で、
変拍子を多用する独特なステップを刻むリフが、何故か宝探しをしているように思えるからホントに不思議だ。
派手さのない適度な歪みを持つ音質と吐き捨てるような独特なヴォーカル、海賊船で暮らすチンピラを思わせるエフェクトが優秀だ。
演奏技術は相当高く、ものすごーく地味に聴こえるサウンドの中には様々なアレンジが加えられており、相当聴き応えがある。
アタックの強い硬質の音なのにグシャっとした水っぽい質感のあるギターはボクのドストライクな音である。
また、ドラムの多彩なリフ回しも相当カッコいい。聴き手を若干選ぶかも知れないが、異色デスメタルバンドではボクはかなり好きなバンドだ。


CAULDRON BLACK RAM - Slubberdegullion - Black Market Trade of Whore and Blade ★★★ (2020-10-19 18:56:33)

砂利が擦れるような金属音のエフェクトから、塩気と水分多めドロドロズルズルの重低音ギターリフがフェードインする。
その途端、海賊をテーマにしたデスメタルというレアな世界観にどっぷりとハマれる。
単に変拍子で展開するのではなく、ワンテンポではない緩急のあるタメを利かせたリズムを刻む楽曲は、このバンドオンリーワンな個性。
そんなアヴァンギャルドなタイム感のある、オールドスクールデステイストを含むリフが複雑怪奇に展開するこの感じが最高だ。
こういう個性派に巡り合う機会はなかなか無い。特にこの曲は海賊テイストズルズル古学校デスサウンドの魅力がふんだんに詰まっている。


CAULDRON BLACK RAM - Stalagmire ★★★ (2020-05-13 01:34:03)

オーストラリア産デスメタル2014年作
ジャケの印象は変わったが、過去2作品の宝探しメタル的な世界観はこの作品にも引き継がれており、納得のクオリティにある。
聴き手を選ぶとは思うが、独特なノリの変拍子を多用するリフは、この作品でも健在。更に楽曲はバラエティに富み、相当カッコいい。
こういうノリのリフを刻むバンドはあまり他では聴いたことがナイ。地味に聴こえるが、アヴァンギャルドなデスメタルが好みなら必聴盤だ。
バカバカしいB級世界観の魅力は前作に譲るが、楽曲に関してはこちらの方が深い(前作もスゴイんだが)。


CELESTIIAL - Where Life Springs Eternal ★★★ (2021-01-03 02:16:14)

米国産フューネラルドゥーム2010年作
発表から10年経ったが、たまーにこの音が欲しくなって聴いている。かなりドローン寄りのドゥームだ。
崖に水が滴り落ちる滝のジャケ、ケースを開くと、植物の実写。ジャケデザインからは明るめの大自然をイメージさせるが
サウンドの方がかなり濃い鈍重垂れ流しドゥームだ。ヴォーカルはカオティックに絶叫しているが深めのエフェクトで他の音と一体化している。
コードのテンション部分の倍音を強調させ、ロングトーンノイズにゆるやかな揺らぎをもたせることで独特の浮遊感を創っているが
かなり深めのリバーブを使用し、水を感じさせるサウンドスケープを織り交ぜることで、まるで水琴窟にいるかのような感覚になるという
一風変わったオンリーワンなサウンドだ。万人にはオススメできない上級者向けだが、ハマれば没入感は高め。
次作を期待しつつも、10年経ってしまったので、もう活動していないのかも知れないね。


CHAR - Fret to Fret ★★★ (2022-08-16 03:20:16)

国産ロック2021年作
若い頃のボクはバンドマンだった癖にステージパフォーマンスには全く興味がなく、ライブ活動は嫌い。
客としてのライブ参戦においても、どうにも性に合わない出不精なんですが、CHARのライブはマメに行っている。
今年は体調を崩してずっと自宅療養しているんですが、それでも体にムチ打ってライブ行ってきました。
それくらいCHARは好きなギタリストだ。この盤は何故か一時期品薄状態で、結局ライブ直前にゲットした作品だ。
彼の作品はPink Cloud時代が最も好きだが、この盤はその頃のロックサウンドの空気が蘇る、ライトに楽しめる好盤だ。
彼の白髪交じりのルックスを見ると、更に歳を取ったなー・・と思ってしまうが、昔から変わらず熱いロックであり、且つ
清涼感溢れる大人のサウンドを提供してくれる。ギター愛をとことん追求した曲作りや演奏への生真面目さが伝わってくるところと
コミカルにならない範囲でのユーモアを持ち合わせていることと、ロックサウンドを愛していることが感じられるところは
いつの時代においても素晴らしいと感じさせる。この盤に突出した目新しい要素があるワケではないが、熟練の卓越したギターワークは健在。
長くファンを続けていると、彼のヘタウマヴォーカルと特有のギターワークによる安定感があれば、それでいいんですよね。
ライブ参戦以降はマイカーサウンドはずっとコレです。


CHRISTIAN DEATH - Only Theatre of Pain ★★★ (2020-06-12 23:52:21)

米産ゴシックロック1982年作
ポストパンク的サウンドの元祖とも言えるバンドで、リリース年からもボクは随分と後追い世代なんですが、相当好きな作品。
この処女作のリマスター版(米国盤2011年)を所持しており、コンテナ行きにならず手に届く場所に常備している。
創始者のRozz Williamsは結構早くにこのバンドを去り、実験音楽やパフォーマンス路線に鞍替えしている。
そういうアート志向が元々あり、それが音に反映された先進的なスタイルが素晴らしかっただけに、Rozzが脱退した初期以外の作品は全く興味がナイ。
旧来のパンクロックの軽快さと同時に翳りのある作風、斬新なリフ構成、浮遊感のあるノイズやエフェクト、気怠く魅力的なヴォーカルなど
よくあるシューゲイザーとは全く異なるアプローチでそういった要素を盛り込んでいる作風は、1982年作品としてはかなり先進的で独創的だ。
録音自体はややローファイな印象は受けるかも知れないが、コレが味わいとして感じられるからスゴい。今聴いても38年前の作品とは到底思えない神盤だ。
ゴシックロックとか、アートパンクとか、デスロックとか、色々な言い方がされていたようで、その言葉がとてもしっくりくるサウンドだ。
きっとこのバンドのフォロアー的なバンドも多くいるんだろう。そっち方面は掘り下げて追いかけなかったので、あまり詳しくは知らないが
若い頃はDead Kennedysのジェロビアフラあたりの路線を追いかけていた時期もあるので、こういうポストパンク的な音も結構好きだったりする。


CHTHE'ILIST - Le Dernier Crépuscule (2020-08-25 01:07:59)

>ローランDEATHさん

コレかっこいいね。ドゥーミーでゴアリーなのに聴きやすくていい。ゲロリバースまでいかない丁度いいヴォーカルだ。
アトモスフェアなムードだから、きちんとお掃除された詰まりのナイ下水道という感じがいいね。


CHTHE'ILIST - Le Dernier Crépuscule (2020-08-26 01:08:49)

>ローランDEATHさん

日本の相場が7000円くらいだったね。アマゾンは6000円台か。
カナダのアマゾンは110カナダドルでかなり高い。
ちょっと探してみたけど欧州だとイタリアで22ユーロ、Bandcampで11ドル、このあたりが最安値かな。
送料込みでも海外で買った方が安いね。デジタルで買うとまず聴かないからなぁ・・。


CIRITH UNGOL - Dark Parade ★★★ (2023-11-02 21:09:46)

米産カルトメタル2023年作
MetalBlade作品は、全体的な作品クオリティを大きく底上げする録音である反面、素材に様々な加工を加え本来持っていた無骨さに潜む魅力を
削いでしまいがち、というところを常々感じるので、あまり好んでゲットしない。
また、米国産というのは、必要以上に過激さを上乗せしたり、いかにも商業的に成功しそうな完成度に加工されている感から
個々の作品だけを見ればハイクオリティと感じても、似たようなハイクオリティバンドが横並びで乱立している感が否めない上
本来バンド自身が志向しているサウンドなんだろうか・・と思うこともしばしば。こういうサウンドは意外に早めに飽きがくる。
このバンドも前作からMetalBlade録音になった米国産ということで、危機感を持ちつつも、突出した個性とコンポジション能力の高さから
追い続けている。初期作品の衝撃的ポンコツサウンドが話題になりがちだが、他にはない無骨な金切声ヴォーカルスタイルと楽曲の素晴らしさが
ウリなのであって、恐らく今の時代に敢えてこの盤をチョイスする年配メタラーは、そこに魅力を感じているハズだ。
無骨なシケシケギターの魅力は、残念ながらMetalBlade録音による最適化で、その面影を若干残しつつ、消滅しかけてはいる。
個性的なヴォーカルは、これまたMetalBlade録音により最適な残響エフェクトが施され全体的な音楽に馴染むように加工されているね。
そういう大衆向けに敷居を下げるレーベル側の努力が散見されるものの、このヴォーカルの個性はアクが強すぎて、毒気は消えることなく残っているね。
前作Forever Black(2020年)は、元来持っていた毒気やバタバタ感とMetalBlade録音が融合した完成度の高さで一押しではあるものの
一方で過去作品から維持してきた楽曲の素晴らしさという点では、若干一本調子な印象を持ったのも確かだ。本作ではそこが解消されている
というのがボクの一聴した感想である。ミドルテンポのドゥーミーなキザミで聴かせる箇所がボクのツボに入る、というのもあるだろうが。
大剣を抱きつつ片膝をつくバリウム飲み過ぎのような肌の白い戦士が描かれるジャケも、エピックファンタジーを感じさせてグッドだ。


CIRITH UNGOL - Dark Parade ★★★ (2023-11-07 00:03:34)

このバンドに心酔しちゃうとカルト集団に入信してしまうのでは?
コレを聴いてしまうと、洗脳されてしまうのでは?
なんてことは99.9%無いと思うので予防線を張る必要もないと思うよ。
ただ、ボクはカルトバンドにしか見えないw

まーたKamikoがマニアックな変なコト書いてる・・と健全なリスナーにバッシングされるかもだが(汗)。
まあ、作品鑑賞のスタンスや見方、思想の持ち方こそ自由ですので
健全なリスナーは「変な人」の戯言と思ってスルーして下さい。

昨今、神秘化された魔法や悪魔的要素を含む、音楽・映画・ゲームが随分幅をきかせていることに気持ち悪さを
ボクは感じている。こういうネタは、健全なサブカルチャーが多い中で、隠れて楽しむモノであるべきで、昔はそうだった。
昔はそのテのサブカルチャーは一部のマニアにウケて、稀に、まさに「カルト化」した人気を博すワケです。
ただ、近年はそういう一部のマニア向けということはなくなり、悪魔崇拝といった悪習が大衆化しているなと。
その筆頭は、トールキンの『指輪物語』の焼き直し『ロードオブザリング』だなぁと思っている。
トールキンの死後、この指輪物語から、映画や小説『ロードオブザリング』ブームが巻き起こるワケですが
ワリと「魔法」と「悪魔」にクローズアップされた描き方がされているというのがボクの感想で
更に、後期作品は徐々に「陰鬱」な雰囲気が全面に出てきたな、と思っている。
悪魔を祓うという正義の物語であっても、その演出から、悪魔崇拝に神秘性を感じ魅了された人は多いワケです。
まず、この現象をどう思うか、コレをサブカルチャーによる洗脳・扇動だと思うか思わないか、です。
また、現実に悪魔崇拝というカルトが存在して、暗躍しているということを信じるか、信じないか、です。
実際にロードオブザリングに対しては、宗教論争や批判が起こっている。

このバンドと全く関係ない、と思われるかもしれないが、Cirith Ungolが描く世界観は、トールキンの作品からの
引用が多い。また、このバンド名は、トールキンの小説に出てくるキリス・ウンゴル峠から貰っている。
恐らくバンドメンバーたちは純粋にトールキンのファンであって、そのファンタジーを題材にしているんでしょうが
トールキン死後、そのSFファンタジーが悪魔崇拝文化普及に改編されて広められた感をボクは感じている以上
この題材だと、カルト臭を感じてしまうワケです。

また、普段ダークサイド音楽を蒐集している立場から言わせてもらうと、「ロック音楽という視点」に限れば
悪魔崇拝の発信拠点ルーツは英国であり、第2に米国(ワシントン)
次いでフィンランド以北、スラブ地域のような寒冷地、ある時期から突然増えたオーストラリアetc・・・。
ジャケフェチの立場から書かせてもらえば、初期作品から今作までデザインを手掛けるアーティストの
出身と「受賞歴」なんかを知っていると、(この人自身が悪いと言っているのではない)
このバンドの背後の人間関係には、そういう悪魔崇拝信者がいるのかも、という疑惑は拭えない。
ここらへんの屁理屈は、どうにも一口では言い表せない。

まあ、大衆化した映画のような威力があるとは思えないので、別に普通に楽しめばいい盤です。


CIRITH UNGOL - Forever Black ★★★ (2020-07-06 09:52:27)

米産カルトメタル2020年作
初期のポンコツ感満載の作品はB級愛を持っていないと愛聴できない作品だったが、その大きな原因は奥行きの無い録音状態がチープさを際立たせていたことだ。
ドタバタ感のあるドラム、モコモコと浮き出たようなベース、加えて低音をカットしたかのようなシケたギター、金切り声が奇抜なヴォーカルスタイルなど
強烈な個性と本来改善すべき課題が紙一重な状態で存在していた。もし、個性を掻き消す形で難点を克服する作品を作ったとしたら、凡作になっていただろう。
ポンコツ感が話題になりがちなバンドではあっても、元々楽曲の構成には目を見張るものがあり、総合的に見てB級愛を感じつつもどこか捨て置けない光るものを
常に宿していた作品を作り続けていた。特にメタルサウンドのトレンドとも言える疾走感やヘヴィネスに偏ることのない作風は、とても惹きつけられるモノがある。
今作は過去のそういう個性を消滅させることなく、録音状態を最善の方法で改善している。過去作のシケてペラい音質の難点をクリアし得る必要最小限の厚みを補填。
よりナマ音に近い音質を保ち、浅めのエフェクトで済ませることで、初期から感じるポンコツ感の残り香を最適な状態で残し、唯一無二の個性へと昇華している。
ギターサウンドは薄めの歪みで残響音が少なめな状態でとても乾燥した質感があるものの、かなり粘り気のあるギターワークで聴かせる。
バラード調の曲でほんの一部歌っているのはご愛敬、金切り声が特有のヴォーカルスタイルも初期から変わらず健在だ。騒々しくも豪胆で奇抜な個性を放っている。
ミドルテンポ主体の楽曲で、ブレイクの入れ方やテンポの緩急のつけ方は、もはや職人芸とも言える。元来ある楽曲の良さは、録音状態の課題をクリアしたことで
より深く味わうことができる。とりあえず、初期作品から聴き続けているリスナーは、この頑固にスタイルを堅持しつつ進化したサウンドに凄みを感じると同時に
完成形でありながらも、特有な濃厚な個性、異様な存在感に、B級愛が失われることがナイ、ということに気付かされるだろう。
少なくともボクは、このバンドは、理想的な形で進化したと感じている。もはやこのバンドスタイルは他のバンドには真似のできない深ーい味わいがあるね。


CIRITH UNGOL - Forever Black - Stormbringer ★★★ (2020-07-06 10:24:54)

導入部分はアコギとクリーンヴォーカルという、このバンドにしては珍しいバラード調の楽曲だが
しっとりと聴かせるのかと思いきや、血管が浮いてきそうなほどの、絶叫に近いヴォーカルが心を込めて歌い上げる。
ラストに近づくと、もはや音程など関係ナシのヤケクソな絶叫で、バラード調の演奏をバックに全身全霊で魂を込める。
ここまでやってくれる潔さに、心地よい倦怠感を覚え、B級愛が芽生えてくるのだ。


CIRITH UNGOL - Forever Black - The Frost Monstreme ★★★ (2020-07-06 10:10:34)

過去にポンコツ感で度肝を抜いた迷曲Frost and Fireと同じ旋律が登場する。
ギターの手癖なのかワザとなのかわからないが、この旋律が登場した途端に懐古の情が湧き、グッと惹きつけられる。
疾走感を排除したヘヴィネスを重視した楽曲で、このバンドの音楽性の魅力が詰まっているね。


CIRITH UNGOL - King of the Dead ★★★ (2020-05-07 22:52:04)

某誌で酷評を受けたFrost and Fireは、軽音楽部に入りたてのバンドマンのようなポンコツ感と、ダサくクドい楽曲などから
酷評を受けても致し方ないネタアルバムでしたが、2作目で楽曲クオリティが大きく向上、演奏技術も安定している。
ゆったりとしたテンポで聴かせる正統派HM路線が好感触で、癖の強いヴォーカルが味わいと思えるから、ボクは相当好きな作品。
バンドのポテンシャルは決して悪くなく、粗悪な録音状態で随分と損をしていると思う。しかもローファイな感じが味わいに繋がってるとは言い難い。
そういうワケで、このバンドは作品をリリースするたびに録音状態と演奏がクオリティアップしていくので、後期作品をオススメするが、
ボクは内容もさることながら、ジャケにかなりこだわるジャケフェチなので、生涯5本の指には入ると思われるステキなジャケデザインと
前作のポンコツ臭の残り香が漂っていることから、この作品の存在感が圧倒的過ぎてナンバーワンである。
CDで既に所有しているが、来月のボーナスが出たら、Cirth Ungolの今年リリースの新譜と共に、LPを買おうと思っている!


CIRITH UNGOL - Paradise Lost ★★★ (2020-05-08 01:48:36)

ボクは愛着や個性などトータルではKing of the Deadが最も好きだが、純粋に楽曲内容では、他の人たちが書き込んでるように、こちらの方がクオリティが高い。
録音状態は少しずつ向上しつつも、低音が薄目の録音は変わらず。過去作はそれがチープさの大きな要因なんですが、この盤はその録音状態が丁度良い。
ジャケが示す通り、Manowar的な世界観がより前面に出て、あの癖のあるヴォーカルがその世界にフィットしているから素晴らしい。
ミドルテンポメインの正統派エピックメタル、Manowar的世界観なジャケ、クオリティ高い楽曲、チープな録音がマッチ、これだけ揃ったら
もうB級のダメバンドではなく、この路線の注目バンド最右翼ですよ!


COBRA SPELL - Anthems of the Night ★★★ (2022-05-12 21:03:19)

オランダ産ハードロック2022年作
80年代HR愛が込められたScorpions似ノスタルジックバンドによるEP第2弾。ギタリストSonia Anubisのファンなので
センターで楽し気に歌うAlexxという男が羨ましけしからん。まあ、それは置いといて、40年前くらいのあの空気が蘇る好盤だ。
まあ、前作Love Venomの額縁に入れて飾りたくなるジャケインパクトと、哀愁の深さを思えば、今作は無難な作品とも言えるが
このバンドは応援しているのでストライクゾーンは広め。問題ない。サイトのショップで帽子とアクセサリーまで買ってしまった。
YouTubeのチャンネルでは、結構頻繁に動画をアップしてくれるので、楽しくバンド活動していることがヒシヒシ伝わってくる。
相変わらずSoniaの基本スケールを重視したお手本ギターがイイ。変にトリッキーなことをしない、理に叶ったコードワークは
80年代サウンドの基本形を堅持し、それがむしろ個性となっているね。もうね、このバンドはこのスタイルのままでいい。


COBRA SPELL - Love Venom ★★★ (2021-09-20 21:33:15)

オランダ産ハードロック2020年作
バンドのメンバーは多国籍で、バンドが運営するショップがオランダにある。17分程度の4曲入りEPだが、ボクがゲットした時期は発売から間もないワリに
あまり流通しておらず50ドルが相場といった感じだった。ボクはオランダのショップで会員になって8ドル程度でゲットできたが、現在はショップでもSOLD OUT。
随分前にドゥームバンドBURNNING WITCHの盤を探している時に、たまたまBURNNING WITCHESというレディスバンドを発見したのが最初。
そこで存在感を発揮していたSonia Anubisというキュートなギタリストにボクは一目置いている。とある動画ではPossessedのTシャツを着て楽しそうに
ギターを演奏していたが、この人が80年代ロックシーンにドップリとハマったんだろうということは、一連の動画を鑑賞するとヒシヒシと伝わってくる。
超絶技巧ではないが、この人の演奏スタイルは、80年代の輝かしい時代の空気を現代に蘇らせる味わいがある。おまけに物凄く楽しそうにギターを演奏する。
現在はCryptaというデスメタルバンドで活躍しており、恐らくそちらがメインバンドなんでしょうが、80年代黄金期ロックサウンドを蘇らせるために
Sonia Anubisを中心に有志が結集したこのレディスバンドCOBRA SPELLは相当クオリティが高い。80年代ロックサウンドあるあるを存分に堪能できる。
ただ単に80年代ロックのモノマネに留まらず、楽曲がホントカッコよくて、演奏には貫禄すら感じられる。ホント、ヨダレが出そうである。
Come On Tonight、Poison Bite、Love Venom、Shake Meという4曲が収録されるが、このいかにもレディスハードロックバンドっぽい曲名がウケる。
また、このバンドロゴは80年代らしさを表現するために相当練られたらしい。ゴールデンな光沢にコブラのアタマというデザインのロゴのクオリティも高い。
なんといってもジャケがまたツボだ。OMENを彷彿させるアナコンダ級にデカいコブラが、ガラスを突き破り、裸体の女性に襲い掛かろうとしている。
一体どんなシチュエーションなのかさっぱりわからない、いかにも80年代っぽいジャケクオリティに悶絶する。
80年代黄金期と一口に言っても、どのバンドが近いかというと、SCORPIONSあたりのテイストが近い気がする。当時の空気が蘇るこのノスタルジックな感触は
当時のハードロックにハマったおっさん達には是非体験して欲しい。


COCK AND BALL TORTURE - Opus(sy) VI ★★ (2020-08-24 03:05:49)

ドイツ産ポルノゴアグラインド2000年作
エロでゴアなサウンドが米国とメキシコを中心に増殖し始めた時代、いくつか漁ってみたもののエロい想像力を掻き立てられないポンコツばかりだった。
ドイツ産のCBTは、そんなポンコツポルノゴアに比べると格上感があった。演奏がしっかりしてて、適度なゴア要素とグルーヴ感があるんだよね。
次作でついに和製SM音源をダイレクトに曲間に挿入するという荒技を使って一握りのポルノゴアフリークに注目されたと思うが、そういう手法ではなく
肝心のグラインドコアサウンドの楽曲中でエロを表現しないと面白くないと思うんだよ。結局CBTはこの盤をゲットするのみだった。
この作品は当時としては結構珍しかったストレートかつ一線を越えたエロネタで激しくゴアリーに聴かせるサウンドとしてとても印象に残っている。
その後、この盤を超えたと思わせる作品が無く、単調に感じられる作品群だったことが残念。強烈な個性派だっただけに頑張ってほしかったな。