故リチャード・ハリスの代表作といったら『ハリー・ポッター』シリーズじゃなくて、まず『ワイルド・ギース』であり、あるいは『殺し屋ハリー/華麗なる挑戦』や『ジャガーノート』でしょ!と飲み屋でクダ巻いては鬱陶しがられる今日この頃。70年代英国製アクション映画の顔でもあった御大はシンガーとしての活躍でも知られており、本作はジミー・ウェッブ&レッキング・クルーの全面協力を得て制作、'68年に発表した1stアルバムとなります。 基本は、ビッグ・バンドを従えたリチャード・ハリスが朗々と歌い上げる殆どフランク・シナトラの世界みたいなボーカル・アルバムなのですが、本作を今もって特別な作品足らしめているのが英米において大ヒットを記録、後に様々なアーティストによってカヴァーされることとなる名曲“MACARTHUR PARK”の存在。クラシカルなチェンバロや、シンフォニックなアレンジを施してドラマティックに展開される7分後超えのこの大作に加え、本編各所にプレリュード/インターリュード/ポストリュードを仕込み、曲単位ではなくアルバム全体の流れにも気を配った構成等からは、70年代に隆盛を極めるプログレッシブ・ロックの先駆け的風情も漂ってくるも仕上がりとなっています。 全体としてロック色はそこまで強くなくとも、軽快に躍動する③、女性スキャットをフィーチュアしてRENAISSANCE辺りに通じる魅力を放つ⑧辺りを筆頭に、哀愁のメロディをダンディに歌い上げる、俳優業の片手間仕事とは一線を画すリチャード・ハリスの包容力に満ちた歌声にうっとりしてたら、アルバム1枚聴き終えるのなんてあっという間ですよ。 出来れば2nd『THE YARD WENT ON FOREVER...』の国内盤CD化も是非お願いしたいところであります。
『ワイルドギース』に『ジャガーノート』に『カサンドラクロス』…70年代イギリス製アクション映画には欠かせない俳優だった(晩年は『ハリーポッター』シリーズの初代ダンブルドア校長役で知られる)故リチャード・ハリス。プログレ・バンドのBEGGERS OPERAやドナ・サマー、グレン・キャンベルなんかもカヴァーした名曲“MACARTHUR PARK”を聴いてこの人のシンガーとしてのキャリアに興味を持ったところ、折よく過去のカタログがリイシューされたので、とりあえず購入したのが'71年発表の本3rdソロ・アルバム。 既成曲のカヴァーや書下ろしの新曲が入り混じる本作で聴けるサウンドは、もちろんHR/HMとは相当距離があるポピュラー・ミュージック。ただ、離婚により息子と離れ離れになってしまった父親の「我が子への想い」をコンセプトに据え、詩情豊かに綴られるストーリー仕立ての構成と、ハリスの包容力を感じさせるジェントリーな歌声が組み合わさることで、アルバムはプログレッシブ・ロック作品にも通じるドラマ性とメリハリを獲得。特に、哀愁に満ちたヴァースからサビにかけての劇的な曲展開が胸を打つ“PROPOSAL”、躍動感溢れるテンポ・チェンジが効果的な“LIKE FATHER, LIKE SON”や“THIS IS MY LIFE”、エルヴィス・プレスリーもカヴァーしたヒット・シングル“MY BOY”といった、ハリスのトム・ジョーンズばりの(それこそ『007』の主題歌を歌ったらハマリそうな)熱唱が炸裂する楽曲は、息苦しい程の盛り上がりを呈していて実に感動的ですよ。 右から左へは聞き流させない、ROBBY VALENTINE、MEATLOAFあたりがイケル方なら間違いなく楽しめる1枚ではないでしょうか。