アコースティカルな『TEN INVITATIONS FROM THE MINSTRESS OF MR. E』、ジャジーな『SWING SHIFT』に続く、 ルーツ・ミュージック三部作のトリを飾る作品として「ブルーズ」をテーマに制作、'99年にリリースされた リック・エメット6枚目のソロ・アルバム。(ちなみに国内盤が発売された最後の作品でもある) オール・インストだった『TEN~』や、本格的なジャズ作だった『SWING~』に対し、今回は歌入り、 しかもアップテンポの④⑩を収録するなど、よりハードな作風ということで、前2作に比べグッと取っ付き易い内容に 仕上がっていると言える本作だが、飽くまで直球勝負の「ブルーズ」であり、「ブルージーなHR」というわけではないので、 その渋さゆえ、地味(退屈)に感じてしまう若いメタル・ファンも多いかもしれんなぁ、と。 ただ、エメット師匠がノリノリでプレイしている姿が目に浮かぶような本編には、楽しげな雰囲気が充満していて、 何より、彼の説得力と表現力に満ち溢れたVoとGのお陰で、最後まで退屈することなく聴き通す事が出来る。 特に、TRIUMPH時代の名曲“LITTLE BOY BLUES"を彷彿とさせる、師匠の哀メロ職人としての腕前がスパークしまくった、 絶品のバラード・ナンバー⑥⑩におけるエモーショナルな泣きっぷりは強烈極まりなく、 この2曲を聴くためだけにでも、本作は購入する価値が大いにあるというもの。 派手さ皆無の落ち着いた作風ゆえ、逆にリック・エメットという希代の名ギタリストの実力がハッキリと確認できる1枚かと。