ANGELICAへの参加や、現在はソロ・シンガーとしての活動でも知られるジェローム・マッツァ(Vo)が、FATEのトーベン・エネヴォルドセン(G)らをゲストに招いて立ち上げたプロジェクト、PINNACLE POINTの2ndアルバム(’18年発表)。 ソロ作ではANGELICA時代を思わすメロハー・サウンドを披露してくれていましたが、本作において追求されているのは、彼が愛して止まない黄金時代のKANSAS――具体的に言えば『永遠の序曲』『暗黒への曳航』『モノリスの謎』辺り――を彷彿とさせる、職人の拘りとポップな大衆性が絶妙なバランスで融合を遂げたプログレ・ハード・サウンド。スティーヴ・ウォルシュばりに熱唱する自身のVoを生かしつつ、リード楽器として曲展開を牽引するバイオリンの存在(シンセ等で代用せずわざわざ専任奏者を立てる姿勢も良し)といい、6分越えの大作が収録曲の半数を占めるも、大仰さや重厚さよりフットワークの軽やかさの方が印象に残る作風といい、全編に噎せ返る程のKANSAS愛迸る仕上がりとなっています。バイオリン導入だけに留まらず、KANSASっぽさ醸成に大きく貢献するKey(ピアノ)の流麗な活躍ぶりにも「マニアだねぇ」と思わずニッコリですよ。 特に、適度にポップ、適度にプログレッシブな曲調に胸躍る③、疾走感溢れる爽やかな曲調に凝ったアレンジが編み込まれた⑥、涼しげな哀愁を纏ってドラマティックに盛り上がっていく⑦、名曲“ON THE OTHER SIDE”を思わす泣きのバラード⑧なんて、70年代後半KANSASの未発表曲と言われたら信じてしまうような完成度を誇っています。 もうちょい話題になってもいいのでは?と思わずにいられない1枚ですね。