この曲も含めWAITING FOR THE ROARアルバムは完全にT・マニング が仕切っている。Synやオーケストラの導入による壮大なまでの 音作りは「これがFASTWAYのやることか?」と当時思った記憶が あるがやはり曲のよさに救われた。しかしE・クラークの戦術転換 もあたることなく彼らはLAメタルの渦の中に巻き込まれていく ことになる。ただ彼らにエールを送った少数派もいた事実は 見逃せない。
前作発表後にリズム隊が脱退、元MOTORHEADのフィル“アニマル"テイラーらが参加するとの噂があったものの、結局、キーボード奏者を含んだデイブ・キングの元バンド・メイトを迎えて制作された'86年発表の3rd。 プロデューサーはZENO等を手掛けたテリー・マニング。 本作の主導権はこのプロデューサーが握っていると言っても過言ではなく、アルバム収録曲の大多数の作曲に関わっており、バンドの中心的存在であったはずのエディ“ファスト"クラークは作曲には一切タッチしていない。 愁いを含んだメロディが美しい「THE WORLD WAITS FOR YOU」、きらびやかなシンセサイザーのサウンドがポップな「KILL ME WITH YOUR HEART」、いかにも'80年代的な哀愁ポップ・サウンドの「TIRED OF YOUR LOVE」、もの悲しいメロディのバラード「CHANGE」、デイヴの歌唱が素晴らしいダイナミックなタイトル曲「WAITING FOR THE ROAR」、シンセサイザーのサウンドがきらびやかな「GIRL」といった良い曲もあるが、シンセサイザーの大々的な導入やオーケストラの起用など、巷で隆盛を誇っていた産業ロックのようなきらびやかな装飾がなされており、バンドの持ち味であったロウ・パワーが失われてしまった感がある。 本来であれば見事にハマったであろうジャニス・ジョプリンの名曲「MOVE OVER」の生々しさに欠けるカヴァーが、バンドとサウンド・プロダクションとのミスマッチを表しているように思う。