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Angel of Retribution / JUDAS PRIEST
fuwatoro ★★ (2005-03-30 16:04:00)
10年以上前、King Crimsonがダブルトリオで復活したときのことを思い出した。
彼等も、いろんな時期の要素を巧く取り入れ、更に新しいアイディアを混ぜ合わせて、とてもパワフルな曲を作っていた。
80年代の4人に2人増えただけのメンバー。ダブルトリオというアイディアもそれほど巧く機能したわけではない。
だけど、私には“昔の焼き直し"とか“守りに入った"とかの否定的な印象は全く無かった。
同じ意味で、Judas Priestの新作も、これまでのどのアルバムにも引けをとらない、最高のアルバムだ、と胸張って言える。
昔のいろんな要素があることに、喜びはしても落胆することは全く無い。創造力が衰えたとも思わない。
新しい何かに充ちているし。それに何より、メチャクチャカッコいいし。
新しいものが生まれるとき、そこには作ってる当事者でさえ把握しきれない“創造の秘密"のようなものがあると思う。
もし仮に「このリフとこのリフを並べれば、必ずこんなメタルが出来上がる」なんて作ったとしても、その狙い通りの曲になるとは限らない。いや、ならないことの方が多いだろう。
また、「なぜ、こんなカッコいいソロを思いついたんだろう」っていくら考えても正解にはたどりつけない、本人でさえ。
“ケミストリー"って言葉では、表しきれない、何か得体の知れない力が働いて、新しい魅力が産まれるんだと思う。
今回、グレンやロブたちも、「自分たちは何が得意か」……これを昔の自分たちのアルバムから再確認したはず。“自分たちらしさ"と向き合って、いろいろ考えたはず。
それが直接表れてる(ように思える)ところも、今回のアルバムにはある。それを指して、「自分たちのパロディ」って言うことは簡単。
でも、そんなのは、作られた曲の表面的な部分。彼らもわかっててサービスしてるだけ。
大事なことは、そうやって昔を再確認したことが、新しい何かが産まれるきっかけになった、ということ。
今回のアルバムの曲が創造される、その秘密の……彼らでさえ把握しきれない、創造の秘密の、重要な要素だったということ。
そうして産まれた、その新しい何か、新しくてカッコいい何かは、このアルバムの、どの曲にも表れている。
ここにピンと来さえすれば、あとの表面的な“~風"の部分は、ニンマリ喜ぶだけでいい。アイドルが私たちにだけ見せてくれる“ウィンク"みたいなもんだ。
5月の武道館では、ニンマリとでは済まない衝撃を受けるだろう。
何度聴いても、カッコ良さは薄れない。それどころか、日に日に、その輝きは増す。
今までメタルはおろかロックを聴いたことのない友人が、このアルバムをすごく気に入っていた。
「初心者だから」と皮肉るか、「初心者をも取り込む」と喜ぶか……両方正しいとは思うけど、個人的には後者を支持する。
願わくば、友人のような感覚を、たくさんの人が持ってくれますように。

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