この曲を聴け! 

Angel of Retribution / JUDAS PRIEST

YOSI(実家) ★★ (2006-09-18 15:03:00)
ついに、ついに書き込みます。徹底的なリッパー擁護、ロブ復帰反対派だた僕が一年以上聴き込んでの、現状の感想です。
本作は「劇的な復活作ではあるが、バンドの思惑で最高傑作にはあえてしなかった作品」と感じます。多くの人の感想を見ると、「バンドらしさと威厳とHMオーラに圧倒される作品」という感じであり、それには全くの賛成です。しかし、「疾走曲やHM然とした曲が意外に少ない」という意見も多いです。そうなった原因は、バンドがロブ復帰に対して、これぞ復活!という衝撃をファンに与えなければならない。しかし、これを「復活作にして最終作」としてはならない。つまり、バンドの創造力は衰えずとも、体力、具体的にはロブの喉は消耗していく。だからこそ今のうちにハードにメタルしている作品をとの意見もあろうが、バンドとしては復活作はガツンとメタルしていて、そこから年齢的に落ち着いて、失速していくようなキャリアの締めくくりは断固として避けたい。だから、本作はHMのオーラはみなぎるが、楽曲自体を冷静に聴くと落ち着いたロックンロール的なものが多くなっており、曲の完成度において一切の手抜きはないが、方向性においては、PRIESTの決め技たる「疾走しながら激しくドラマティックに展開する曲」なんてのは、アイデアを今後に取ってある、いずれ来る最終作を輝かせるために。これを悪くいえば打算的と、しかしよくいえばバンドにまだまだ余力と底があるということでしょう。
曲自体をいえば、本作のHM然とした1、5、8などは正直、良いんだけどこの方向性ならリッパー時代のほうがリフのキレ、リズムの練り、歌の迫力があったと感じます。特に5、8は「JUGULATOR」や「BLOODSUCKERS」の流れを汲む曲であり、「PAINKILLER」などからはかなり離れた曲であり、「リッパー時代を薄めたがゆえに分かりやすくなって結果評価されやすくなった」と感じで、曲は良いけど複雑な気分です。大作10も同じく、良いんだけどこれが受けるなら「CATHEDRALSPIRES」あたりが全くの同傾向で元祖なのに、と。2の軽快さはロブならではであり、7の妖艶さもリッパーには出せない味ですが。しかし本作で最も僕が評価したいのは「Worth Fighting For」、これは超名曲。BON JOVIをも思い起こしますが、何、BON JOVIがこれほどの曲を作ったことがありますかって、ファンの方ごめんなさい。これほど売れそうな、しかもHMの威厳も持ち合わせたクールな曲はそうそうありません。この曲のアイデアを持っていたのなら、リッパーでなくロブを選んだのもいたしかたなしです。これはBON JOVIが出したんじゃないから全米No.1ヒットにならなかっただけで、本当はそのくらいの曲です。
そして、コンセプトといわれる次作もまたおそらく、「典型的なHM」を望むファンからはちと違う、ストレートな疾走より深遠で複雑で多様な音になるような気がします。そしてそれは次作もまた最終作にはならないということでしょう。徹頭徹尾のHMを望むファンは最終作をお待ち下さい。おそらく締めくくりはそうでしょう。そして僕がなぜロブ復帰に複雑だったのかと、ようやく自分でわかったのは、「終焉に向けて準備していくバンドの姿を見るのが寂しい。たとえいつか必ず訪れるとしても」、「リッパー時代はバンド全体がかりそめとしても、若返って無謀なまでの実験と冒険ができた」、「しかし、ロブを戻して時間もまた正常に戻った今は、いずれ来る終焉の日に対して、自身のキャリアを総括していかねばならない」、「本作も次作も最終作でないが、その最終作を最高作として輝かせるためのいわば準備となる作品だ」というのを嫌というほど感じるがゆえに複雑な思いなのだと