この曲を聴け! 

Real Illusions: Reflections / STEVE VAI
neil ★★ (2005-12-14 21:50:00)
↑に書かれている皆さんの感想が、どれも凄くツボを得ていて、痒いところに手が届いたような気持ち良さと少々の悔しさを覚え(笑)僕も大いにこのアルバムへの賛辞の言葉を書き連ねてやろう!と思ったのですが、頭の中のコトバの在庫が見当たらない・・・なんとももどかしい限りです。もうほんとに、どこから書いて良いのか、どこから評価して良いのかもわからない。感想のとっかかりを求めてヘッドフォンを嵌めても、あっというまに「分析してやろう」とか「言葉に置き換えてやろう」とかいう邪念は押し流されてしまう。音の鳴っている時間がとにかく気持ちよくって、最後の曲が終わった瞬間、もの凄い疲労感に襲われるんですが、もう一回聴きたくなり、一曲目オープニングのタッピングを耳が求めてる・・・・って、世間ではこういうの「中毒」っていうと思うんですけど(汗) 海とかプールで泳いだ後って、こんなカンジになります。遊び終わって陸地に上がるとカラダがいつも以上にずっしりしていて、妙に寒気がする。水の温度のほうが温かく感じられ、心地よい浮遊感が恋しくなって、また水の中に・・・みたいな。
他でもないVaiの作品ですから(笑)、単にパワーコードやジャズのコードをジャカジャカと連ねられてるような「わかりやすさ」はありません。一回聴いただけでは、まず耳コピは不可能でしょう(笑)。その上で、どの曲も重厚で丁寧に、太くきらびやかなメロディをもって構成されているので、無秩序かつ無制約なワケワカランチン曲も聴き当たりませんでした。プログレみたいな難解さは皆無ですよね。加えて、クラシック音楽みたいなかんじでもない。ヴァイのヴォーカルもたくさん入ってるので、インストがダメな方にも大丈夫かと。
・・・でも、なんでしょうね。個人的には、Flex-AbleやTheUltraZoneのようにハチャメチャ感満載のアルバムとは違うタイプだと思いますし、とっつきやすい分、「個性と紙一重のデタラメさ&めちゃくちゃさ」を感じることも無い。全てが冷静に構成されてるし、精密に完成されているから、ハデハデでトゲトゲしいイメージも持ち得ない。じゃあ退屈でなんてことないアルバムなのか、落ち着いた気分で聴けるのではないかというと、今でも震えがくるほどドラマティックでエモーショナルな世界観に浸ることができる。
「二度と同じ道を歩かない」ことが心情なVaiと、そのアルバムたち。感性のガンコさを取り払えば、それら全てが、全く違う競技のチャンピオン達であることがわかります。その上で、彼らをちゃんと「一人の人間の創造物」としてしっかり繋ぎとめている、Vaiの個性とも言うべき「Vaiらしい」部分。僕にとってそれは、音響効果とか、音色のニュアンスとか、ヘンな奏法とか、ふしぎなコード展開とか、トリッキーな変拍子とか、その曲を構成するいろいろな要素に感じられることが多かったのですが、このアルバムでは、曲そのもの(というよりアルバム全体?)が、もはやVaiの「個性」であり、それが直にリスナーの感性を刺激してくるので、「この人またやってるよ~」的なニヤニヤ笑いを通り越して「・・・なんだこれは」となってしまうのかも。
思い起こしてみると、アーティストの好みって、彼らのパーツに求めることが多い気がします。「このフレーズ!」とか「このヴィブラートのかけかた!」とか、「このチョーキング」とか。このアルバムでVaiの個性は、認識できないレベルまで「極小」していき、逆に作品全体に広がる「極大」なものへと、還元されていったのかもしれない・・・そうなってくると、もう「神」ですし、カミサマは「礼拝中にムラムラきちゃったらどうしようもないからさ!」なんてことは言わない筈なので(笑)、僕の誇大妄想的な解釈なのですが・・・・まぁ、Nevermindということでひとつ。
→同意