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RIOT
KOZY (2002-06-06 23:58:00)

RIOTの歴代ヴォーカリストは、意外なほどに過小評価されている気がしてならない。
RIOTには、時代毎に味のあるヴォーカリストが存在していた。DEEP PURPLEやRAINBOWに匹敵すると言っても過言じゃないだろう。その都度ファンの間では賛否両論が起こってるが、どのヴォーカリストも魅力的だった。そしてバンドとしても、それぞれのヴォーカルの適正に合った楽曲を作り出していたと思う。
初代ヴォーカリストのガイ・スペランザは素晴らしくエモーショナルなヴォーカリストだった。線の細さはあるものの、伸びやかなハイトーンと憂いを含んだ独特の歌声は、「魂の歌唱」とでも言おうか。初期のライヴ・アルバム「RIOT LIVE」におけるガイの渾身のヴォーカルを聴けば、それも納得のはずだ。それに初期の名作との誉れ高い「FIRE DOWN UNDER」を聴いて欲しい。押しと引きをわきまえ、その上さらに切れ味の増したヴォーカルを、全篇に渡って堪能することが出来る。現在に渡って脈々と受け継がれているRIOTの世界は、この人無くして具現化する事は出来なかっただろう。
その後を継いだのが、2代目ヴォーカリストであるレット・フォリスターだ。この人は何故か非難されている事が多い。だが本当のところはどうだろう?これこそまさに過小評価だと思う。確かにHIGH VOLTAGE版「RESTLESS BREED」に収められているライヴ・テイクを聴くと、ガイ時代の曲は巧く歌えていない。ヴォーカルがレットに変わった時点で、RIOTは「切ないハイトーン」という武器を失っている。だがその代わり彼が持ち込んだのは、ラフでパワフルなロックのノリとブルージーで深みのある雰囲気だった。それがRIOTの持つ哀愁や切れ味鋭い演奏とあいまって、いい意味での「ミスマッチな空気」を生み出していた。レット・フォリスターはもう亡くなっているのだが、存命なら年齢相応の、渋い作品を出していたに違いない。
そしてしばしの休息の後、満を持して再登場した際のヴォーカリストが、唯一正当な評価を受けているトニー・ムーアである。彼の登場に度肝を抜かれた人も多いだろう(笑)。かくゆう俺も、その驚異的なハイトーンと、パワフル且つテクニカルな歌唱にぶっ飛ばされた一人である。この人がヴォーカルを取っていた「THUNDERSTEEL」「THE PRIVILEGE OF POWER」の2作品は、HMの魅力を完璧に盛り込んだ超名作だ。ある意味「カラフルなヴォーカリスト」と言えるかもしれない。
そしてその後加入したのが、現ヴォーカリストであるマイク・ディメオである。彼のヴォーカルは、敢えて例えるなら「ガイ・スペランザ+レット・フォリスター」と言えるかも・・・。テクニック的にはトニー・ムーアには劣るし、ハイトーンも若干線が細い。しかしながら素晴らしくエモーショナルだし、枯れた感じの味わいのあるヴォーカルを聴かせてくれる。「INISHMORE」での彼のヴォーカルは、スピード・ナンバーでもスロー・ナンバーでも感情のこもった素晴らしいものだった。現在のRIOTの音楽性は、彼の美点を最大限に生かしたものと言えるだろう。ただし「SONS OF SOCIETY」を除いては・・・。
こんな感じに変化しているバンドというのも、案外珍しいのではないかなぁ。カラーの違ったヴォーカリストの個性が、土台であるRIOTの元々の持ち味と巧く融合し、時代毎に「おぉっ!」と思わせる名作を生み出していた。今後もRIOTには、迷う事無く道を進んで欲しい。ただし、今まではヴォーカリストの個性に特化され過ぎた部分があった気もしなくもない。次のアルバムは、そこからもう少し踏み込んだ、さらに世界が広がったものを期待したい。

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