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Geliebte des Regens / NARGAROTH
死暗 ★★ (2007-01-20 01:05:00)
豪華デジパック四面開きからして自信の表れなんでしょうか。前作の路線を更に突き進めた4th。
デジパックは爽やかな作りなのですが、収められた楽曲群は只管暗いです。
ミサンスロピックブラックメタルの王道中の王道的な作品です。
6曲だけで73分、イントロを除いてどれも10分以上の大作揃いで、ファストなシーンは全く無く、全編スロー~ミドルに進行します。
#2,5は17分以上の曲である上に、その2つは題名も中身もほぼ同じ。同じ曲を34分以上も聴かされます。
相変わらずジリジリとノイジーなんですが、前作Rx Part IIと比べると音質的には音圧も減り、多少ながらも聴き易くなりました。
路線は前作を踏襲した形なのですが、ミサンスロピックな空気を持つ曲が主体となり、Burzumのテイストがグッと増した感じです。
前作同様トレモロリフが目立つ構成で、そして、とにかく長いです。かなりの長さの曲を一つのリフで相当引っ張るので物凄く単調に
なった印象を受けます。ひとつのリフが、そのままひとつの曲になってしまっていると言っても過言ではないです。
一曲の中での展開は最小限に抑えとにかく単調さに重きを置いた作風です。曲間もSEで繋がってますので休む事無く延々と垂れ流されます。
Voは喚き散らす絶叫ではなく、楽器の一部と化したゆっくりと吐き出されるがなり声で、これが曲調と良くマッチしています。
前作はまだ攻撃的な要素が各々の面で見られたんですが、今回は全編渡って只々落ち込んで行く印象を受けます。
繰り返される練られたリフを聴けば聴く程にミサンスロピックな世界に浸かっていきます。進化の集大成此処に在りと言った感じでしょうか。
長大な一曲一曲の中、単調な曲展開とリフワーク、そこにこだまするボーカル、これだけで冗長を紙一重で回避して進行していくという感じです。
曲間の自然音のSEも楽曲と良くマッチし、鈍空な風景を視覚的に訴えます。NargarothはどのアルバムでもSEの使い方には長けていると思います。
それから、このアルバムは曲構成も興味深いです。前述の通りこの作品にはほぼ同じ曲が#2,5に二つ収められていて、後者の方が音質が悪く展開と
アレンジが少しばかり付け加えられています。#2,#3,#4と進むにつれ、リフの輪郭が少しはっきりとしない籠り気味の音質となって来るんですが、
ここで先ほど聴いた曲がより悲哀感を増して#5で帰って来ます。#2を聴いて想起した何かが、時を経てより閑散と寂れてしまった感覚に陥ります。
一つのアルバムに同じ曲を2曲入れている事に最初は疑問だったんですが、こういう聴かせ方があるものだと思うと納得してしまいました。
万人受けは決して望めないスタイルであることは言うまでも無いですが、ディプレッシブな路線に理解のある方にはオススメです。
と言うよりも、一般的に言われるディプレッシブブラックというものとは少し感触が異なる部分(より叙情的な雰囲気が強い)
もありますので、こういう系統に飽き飽きしている方にも少しは新鮮に感じられるのではないかと思います。
個人的にはこのアルバムは、ディプレッシブではなく、ミサンスロピックという言葉がぴったりだと思います。
胸を熱くさせる様なメロウさがあるわけでもなく、特別キャッチーとも言い難いリフの応酬だけ、と言った感じ
の掴み所のはっきりしない作品なんですが、何度聴いても飽きないし長時間でもダレない、不思議なアルバムです。
このアルバムで今まで培ってきた一つのリフで延々持っていくスタイルを完全に確立した感もありますし、高く評価したいです。
比較は不可能ですが、より形態を極めたという点では今までの作品を凌駕していると言っても全く良い名盤だと思います。
四面デジパックにされているだけのことはあるし、Kanwulf自身も相当自信を持っているアルバムなんじゃないでしょうか。
→同意