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A World Through Dead Eyes / KROHM
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2010-03-19 21:47:00)
2004年発表の1st。
上の方たちが仰っているように、鬱ブラックでも秀逸なアルバムですね。

このジャンルの中ではかなりメロディ志向が強く、歪んだアルペジオやトレモロリフにより奏でられる、不吉さ、鬱、哀しみ…など、様々なマイナス感情を想起させるメロディを、ひたすら紡いでゆく作風は、鬱・絶望系の音楽が好きなら必聴と言えると思います。
よく聴くと、実はベースラインも結構メロウだったりしますし。

耳を聾するのではなく、脳に染み込むようなギターノイズ、空間系のキーボード、時々疾走を効果的に挟みつつ、基本ミディアムスローで叩かれるリズムなど、メロディを聴かせるお膳立てもバッチリ。ヴォーカルも、時折「血の叫び」とでも言いたくなるような壮絶な叫びを聴かせながらも、まだ「かっこいい」の領域で留まっている、行き過ぎない高音がなりで、鬱系の中では割と聞きやすいほうだと思います。

…あとこのアルバム、何気に展開が上手いですよね。
それまでは只管に暗く湿った鬱世界を描いておきながら、ラス曲が始まると同時に最期の灯火を燃やすかのように感情的なメロディで疾走、そして魂が失われていくのを暗示する様な神秘的なキーボード…鬱ブラながら、カタルシスが得られるアルバムと言えるかと。

よくドラマや小説、ゲームか何かだと、(作中で)人が死ぬ事によって感動的なシーンを演出したり、物語を盛り上げたりといった手法は良く使われますが…このアルバムが描いているのは、そういうドラマ性とは無縁な、孤独感と厭世感を抱えたまま、ただただ冷たいだけの死であると思う。
でもこの冷たさこそが、本当に心を打つんですよ…。

まあ鬱ブラック好きならマストですね。
00年代以降のアメリカの鬱ブラックのクオリティってやっぱり凄いものがあると思う。

→同意