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魑魅魍魎 / 陰陽座
Usher-to-the-ETHER ★★ (2008-09-10 22:03:00)
個人的な印象としては「凄く順当なアルバム」。
前作では「メタルであること」に固執するあまり、妖怪っぽさや歌メロの豊穣さが
いつもより減退していた感がありましたが、今回は前作のメタリックでヘヴィな音質や
演奏などの良い所は残しておきつつも、そうした要素をクリアしたような作風になってますね。
「魃」なんかは歌謡メタルとして他に追随できるものがいないくらいかっこいいですし、
「道正寺蛇ノ獄」のような大作もあるし、完成度でいったら過去最高かもしれません。
…ただ、どうしても苦言を呈したくなるんですが…
この作品全体を通じて、良い意味だけではない「安定感」があるんですよね。
このアルバムを聴いて、「この歌メロ良いな」「このリフは痺れる」「この展開は絶妙」とかは
思っても、「おおおお!!!何じゃこりゃ!!」みたいな、心底から驚愕・感動させてくれる部分が
無くて、殆どが予定調和のまま進んでいって、最終的に「うん、良い作品だね」みたいな感じ。
今までの、「妖花忍法帖」「星の宿り」の余りにも儚いメロディや、「邪魅の抱擁」「睡」の
ストレートなかっこよさ、「輪入道」のような演歌とメタルの融合というサプライズなどは
聴き込むまでもなく、感動して一人で聴いているのが勿体無くなり、こういう素晴らしい音楽が
あることを誰かに伝えたくて、いてもたってもいられなくなるような興奮を覚えたものですが、
今作にそこまで感動できるものがあるかといえば、正直首を傾げざるを得ないと思う。
アルバム全体としても、妖怪をテーマに据えてるのにも関わらず、歌詞以外からは
初期の二枚より妖怪らしさが感じられなかったり、どうも突き抜けた所がないという印象。
瞬火さん、ツアーでファンと触れ合って、作品作って売って…っていうサイクルに満足して、
ハングリー精神を失ってしまったのでなければいいけど…。
ただ、陰陽座って、前々作で音質の貧弱さを指摘された時も、前作でメロディの弱さを
指摘された時も次の作品ではそれをしっかり克服してきているし、着実に良くなってる
バンドだと思うんですよね。それだけに、次の作品ではこのマンネリ感を払拭し、
リスナーを心底震え上がらせてくれるような、突き抜けたアルバムを期待したい所。
いっそメンバーには陰陽座以外にも何かアウトプットを持って欲しい気もします。

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