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UROBOROS / DIR EN GREY
寝坊メタル ★★ (2008-11-12 21:23:00)
前作「THE MARROW OF A BONE」から2年ぶりとなる7thアルバムです。
今作のタイトル「UROBOROS」ですが、これは永続性、循環性、完全性、無限性などを意味しており、
数々の宗教において、自らの尾を噛んだ蛇や竜として描かれ、終末や破壊と再生を象徴する存在とされてきました。
また、スイスの心理学者カール・ユングによれば人間精神の元型の象徴でもあるそうです。
今作はまさにそのような世界観を元とするもので、全編に渡って宗教的で重厚な雰囲気に包まれ、
聴き手の精神に直接訴えかけるようなサウンドが構築されています。
また、宗教的な雰囲気は、西洋的な部分からヒンドゥー、仏教的なオリエンタルな部分までも感じさせており、
こういったところは、他を否定せず取り入れてゆく多神教たる日本人故に成せる業でしょうか。
また、Vo.京による詞(詩といったほうが適切かもしれません)は今まで以上に難解で哲学的なものを感じさせ、
そのヴォーカルワークは、素直で優しささえ感じてしまう歌唱から、冷酷さや狂気を感じさせる歌唱まで様々。
憎悪に満ちた歪んだグロウルから、本当に狂ったようなシャウトまで使いこなしており、本当に腕を上げています。
「痛み」を表現するならばこれ以上にない歌い手でしょう。
今作は、全13曲収録ですが、まるで終わりの始まりを告げるような①から、終末へのその過程、
そして終末の時とその哀しみ、絶望を描き、エンディングの生命を感じさせる⑬へ展開しており、
まさに「破壊と再生」を体現するように複雑に各楽曲が流れていきます。
周到に考えつくされた配置であり、一曲抜いただけ、もしくは少し並べ替えただけで、
大きくバランスを崩し、一気に崩壊してしまいそうな繊細な内容ですが、それゆえに美しいのではないでしょうか。
他には絶対出来ないような、圧倒的な独自の世界観を築き上げた文句のつけようが無い大傑作です。
前々作「Withering to death.」でも独自のセンスと世界観が光っていましたが、
それすら薄っぺらい作品に思えてしまうほどの濃厚さで、一聴で満足できてしまうような作品では決してありません。
また、暴力的な前作と比べればメロディアスなところも目立ちますが、やはり総体的にはメロディアスというには抵抗があり、
どちらかというと世界観に魅せられるような作品であって、この作品の賛否はこの世界観を受け入れられるかどうかではないでしょうか。

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