この曲を聴け! 

Maranatha / FUNERAL MIST
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2009-03-09 21:39:00)
2009年発表の2nd。

二年くらい前から新作が出る事を噂されてたんですが、それから何の音沙汰もなくて半ば諦めてたんですが…突如新作発表のニュースが飛び込んできた時はほんと衝撃でした。ちなみに、二年くらい前の噂ではMARDUKのEmilがドラムを担当すると言われてましたが、現在はArioch独りの編成で、今作のドラムはセッションドラマーを起用したそうです。

まずFUNERAL MIST最大のウリであるAriochのヴォーカルですが、もう素晴らしいなんて言葉じゃたりないくらい素晴らしいですね…邪悪好きには垂涎・落涙ものですよ、これ…。世界の全ての「穢れ」を一身に背負った預言者が、苦悶しながら何かを訴えているような声。タイトル曲の「Anathema Maranatha」のタイトルを叫ぶ部分なんて、あまりに「穢れ」が強すぎて、人間の形を保てなくなった者の咆哮を聴いているような凄絶さが…。

どこかのサイトでAriochの素顔を見たらかなりのイケメンで驚いたんですが、この作品の彼の声を聴く限り、肉が爛れてゾンビ化した人間が歌ってるようにしか聞こえません(笑)。悪意に満ちた邪悪ながなりだけでなく、咳き込む寸前の声や吸い込み系の声を出したり、表現方法をかなり追及し、実践している感じ。それだけでなく、声に掛けるエフェクトやミックスにも物凄く拘ってそうな印象があります。HR/HMに限らず、ここまで表現力のあるヴォーカリストっていないですよ…しかもその表現力の全てが邪悪さに向けられてるという。

作風は、確かにミディアムが増えたものの、宗教性・神秘性を感じさせる邪悪極まりないファストブラックなのは変わりません。音質はフレーズやヴォーカルがよりくっきり聴こえるようにはなってますが、全ての音が殺意を持って襲いかかってくるような迫力は変わってないですね。SEを上手く使い、宗教的なムードを強めているのも一緒。

ただ、不満も無いわけではないですね…。アルバムの盛り上がる所でやけに長いSEを挿入したり、約12分の大作が邪悪一色でなく、ロック的リズムを導入したものだったり、実験的な要素が多少空回りしている印象。加えて、前作の「Qui tollis peccata mundi…Agnus Dei」「death and darkness, funeral mist, desolation」「Tibi soli peccavi」辺りで聞かれたキャッチー(かつ超エグい)なヴォーカルラインが減ってる気も。ヴォーカルの歌い方、聴かせ方自体には何の文句もないですけどね。

…とはいえ、そんなものは些細なことに過ぎず、期待を裏切らない作品だと思います。私は1stを聴いたときはその邪悪さに衝撃を受け、今でもブラックメタルのアルバムベスト3に入るし、神格化レベルで好きなんですが、そういうリスナーの期待を裏切らない作品を出してくれるバンドって稀有だと思う。もしブラックにほんの少しでも興味があるなら1stと纏めて買う事を勧めます。
そしてブラック界生え抜きの表現力を持つヴォーカリストである、Arioch様の妙技をとくと味わうがいい!!(笑)

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