この曲を聴け! 

Road Salt One / PAIN OF SALVATION
2Y1Y1Z2 ★★ (2010-06-12 17:40:00)
The Perfect Element Pt.3の前半となる今作。
メンバーの写真を前面に押し出したジャケットから「らしくなさ」を感じてはいましたが、その変化は楽曲にも顕著に表れています。
まず、ヘヴィメタル然とした重厚なギターワークは見る影を潜め、ガレージロック的なクランチサウンドが殆どです。
鮮烈なギターソロやユニゾンも皆無に等しく、プログレメタル特有の華やかさを求める方にはかなり退屈に感じるかも…
The AnimalsやKinksに近いものがあるかもしれません。
1.No WayはBeの楽曲から陰鬱さを覗いたような趣の曲。歴代のオープニングナンバーと比べてインパクトが弱い…と言わざるを得ないかも。
三分足らずの長さである2.She Likes To Hideは、今までの彼らなら劇的なインストパートに繋げた筈のところを、そのまま何の意匠もなく終わらせてしまう。
この曲は正直ショックでした。「プログレメタルの極北」としての音楽性をPoSに期待するリスナーは、このアウトロで不安にさせられることでしょう。
しかし、続く3.Sistersが素晴らしい出来。イントロのピアノから期待を煽られるままに展開していく悲愴なコーラスワークは素晴らしいの一言… 12:5での経験が生かされていると思います。ルー・リードのソロ作品に近いかな?
ただ… これ以降の楽曲群は「○○風」としか形容しようのない、もどかしい曲が殆どで… 何度も聴きたくなるような凝った曲とは言い難いです。
先行EPとして事前発表された8.Linoleumはキラーチューンと言えるようなダイナミズムを持った曲。リズムのアクセント付けが面白いです。ライブで化ける曲でしょう。
11.Road Saltはタイトルトラックというだけあって、コンセプトの中では重要な曲なのでしょう。オルガンが美しいです。
大曲である12.Innocenceは… 前作のEnter Rainのような呪術的なヴァイブを称えた重々しい曲。聴いていて愉快になることは決してないでしょうが、展開は面白いです。
全体として、バンドのパワーバランスがボーカル>楽器というふうに傾いてしまっていて、歌モノが多数を占める結果になってしまいました。ダニエルが優れたボーカリストであることは明白ですが、シャウトと囁きで50分間もたせるのはさすがに無理があるなと…
かつての彼等の楽曲が持つ、陰鬱さに内含された美しさは、練られたインストゥルメンタルの構成美に依拠するものであることを痛感させられました。
秀逸なメロディの構築の中でこそダニエルの歌唱も活きるのだと…
殆どの楽曲が必要最低限の要素だけで終わってしまっていて、楽曲そのものの方向性が見えない事も痛いです。
疑問符が浮かぶようなアウトロの曲も少なくありませんし、作曲を事務的にこなしているような印象を受けてしまったことも事実。
一枚通して聴くことが前提のコンセプトアルバムにおいて、「悪くないけど、もっと何かあるのでは?」という所感を持ち続けるのは正直つらいです…
まだ歌詞とコンセプトの考察までには達していないので一概には評価できませんが、個々の楽曲のクオリティには大きく隔たりがあるように感じました。
Part Twoが発表されたときには、この作品の位置付けも判然とすることでしょう。その頃には曲の評価も変わってくるかも…
あとは、来日公演を切実に望みます!
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