この曲を聴け! 

BOREDOMS
昆布 ★★ (2006-01-09 00:20:00)
アイ 僕は歌詞の意味を知りたいと思ったことがない。歌詞を自分で書くこともない。言語と自分の感覚とに、ズレを感じたから。
言葉はあてにならへんなと思うから。親が大本教の熱心な信者で、僕自身もそうだったんですよ。
モブ いつまで?
アイ 大学まで。祝詞奏上も毎日やってた。200~300畳のところで何千人もが声をあげて神言を奏上する。祝詞の倍音が増幅され、
それに包まれる。その音響が快感やったんやろうね。
モブ 祝詞が音楽になる?
アイ 奏上する言葉は難しくて意味は分からないんだけど、音響として聞くと、意味の一番深い部分を理解できたと思うんですよ。
音響は、言葉の意味を含んでいるはずだし。通り一遍の理解ができない、いくらでも深読みできる「意味」ですね。
介護入門もそうなんですよ。介護の、その先にある本質を見いだせる余地がある。言葉ってそういうものでしょ。
モブ 小説への懐疑が自分にはあった。小説らしい小説を書くことに意義を見いだせない。絶えず新しいことにかかわるのが小説ではないのかと
思っていたから。音楽でも、最初はスラッシュメタルやハードコアパンクが好きだった。90年にアイさんたちのボアダムズを見て、めちゃくちゃ
衝撃受けたんです。ロックは終わったとも思ってしまった。歌詞も……。
アイ 言わんといて。今考えたらかなりやばいよね。
モブ いや、言葉そのものより、言葉を発する態度に耳がいく。既製の音楽的な文脈を超然と無視していたじゃないですか。
そもそもどっちがA面かがまず分からないなんてレコードもあった。曲名なんかどうでもいいって思ってつけている。
曲という概念をまず馬鹿にしている。
アイ いや、自分では普通だと思ってたんだよ。ブラックサバスやモーターヘッドの、「ここは最高や」という部分を切り張りして陳列する感じでやっていた。
自分では接続がいいと思っていたんやけど、それがたぶん、分かってなかったんだろうな。
モブ 同時にめちゃくちゃがんばって曲作ってる印象もあった。
アイ 3秒ぐらいのフレーズを、2週間ぐらい練習してやったりしてましたよね。
モブ 音楽に対する愛ですよ。
アイ 厳密でいたかった。自分の脳に対して嘘をつきたくなかった。細かいことなんですけど、ブレークの間にスティックのかする音がほしいとか、
曲の始まる瞬間に服がこすれる音がほしかったり。演奏する方にはどう説明してもわからへん。
だけど、文章を書く人もそうでしょ。自分の内面の、とりとめない、よく分からへん感じ方、それをあえて、面倒くさいけど言葉にして追っかける。
人に分かる範囲でチューニングして提示するってことでしょう。
モブ 音楽をやってるつもりじゃないとおっしゃってもいた。
アイ だって自分を音楽家といえないですよ。楽器もできなければ楽譜も読めないし。コード感とかリズム感がない。
中学の時ベースギターを買って、4弦やったら弾けるやろうって。甘かったですね。全然弾けない。
弦じゃなくて針金はったり、弦をゆるゆるにしたり、トンカチでたたいたり。水の中につけてみたりとか。そんなことばかりしてましたよ。
モブ あははは。でも、構築的な音楽を超絶的なテクニックでやっている人たちにも、アイさんのファン、いっぱいいる。
アイさんの絵も、ものすごく深い影響をいろんな人に与えている。絵はどんなときに描くんですか?
アイ 絵は描かないし、描けないですよ。この前もニューヨークのギャラリーで展覧会があったとき、絵を描くスプレー缶やインクとか用意されていて。
スタッフも大勢おって。そんなん聞いてへんのに、金かかってるから後に引かれへん、みたいな。
ものすごいでっかい紙に絵を描いたけど、そんなん初めてですよ。後ろから突き刺すような視線があって、めちゃめちゃ困りましたよ。
モブ 描けないって?作品は残ってるじゃないですか?
アイ 描こうと思ってたら描かれへん。とりあえず描いたやつをほおっておいて、上下ひっくり返したりとか、忘れたりとかして、そこからまた始める。
たまたまおもしろくなる瞬間をたぐり寄せるんです。自分の意図からはずしたことをあえてやっていけば、突然おもしろくなる瞬間がある。
モブ 音楽家でもなければ画家でもない。「何者でもない」という地平で活動していると、圧迫を受けませんか。
僕もそうだけど、アーティストとか作家とかいうと、世間は納得する。すべて階層化され記号化され、序列もついていて、部品みたいに扱われてる。
それが嫌なんですよね。何者かになれと脅迫されているみたい。
アイ 自分探しする若い人って多いけど、そういうの、外部世界にある肩書を自分にあてはめることではない。
自分の内面の中にある本質をいかに出していくかってことなんじゃないかな。
モブ 自分で肩書を考える、作り出すってことですかね。
アイ 本質的な意味で自分が何者なんやってことを把握するのは重要だと思うよ。それが人生の目的といってもいい。
肩書なんて、コスチュームプレーと同じなんだから。楽しめばいいんよ

↑モブノリオとアイの対談の内容です。
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