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Somewhere Far Beyond / BLIND GUARDIAN
絶叫者ヨハネ ★★ (2005-12-24 16:40:00)
いわずと知れた超名作。比類なき完成度を誇るだけでなく、この一枚の中にへヴィメタルのすべてが込められたHMの代名詞的作品。Voも楽曲も世界観や音の響きの印象まで、何から何まで完全無欠のHMサウンド、そのうえ明確すぎるほどのオリジナリティも備わっているという文句の言いようのないアルバムです。

このバンドについてはいまだにジャーマンメタル云々と言われてますが、私から見ればこれは完璧な正統派メタル。少なくともこのアルバムに関してはそうです。「Defender of the Faith」の時のJudas Priestがスラッシュメタルを通過し、ドイツという土壌の中で進化するとまさしくこういう音になる感じです。爽快さを通り越してほとんど激烈なまでの疾走感といい、スラッシュに近いニュアンスの刻みといい、全編を支配するダークで神秘的な「闇」を感じさせる雰囲気といい、スタイル的な類似点こそ認められるもの音楽から受ける基本的な印象がHelloween系とはまるで異なります。よってHelloweenやその分派の産業ロック的に過剰にライトアップされた明るさやあざといまでにキャッチーなメロディがどうも苦手、という硬派なスピリットの方も気勢をそがれることはないでしょう(今となっては以外に聞こえますが、この頃の彼らがフェスなどでよくSepalturaやKreaterと共演していたという事実を考えると、日本はともかく本国では当時どういう界隈のバンドと見られていたかが、それとなくわかります。)。

このアルバムは人がHMに求めるもののすべてを備えており、正統派からスラッシュに至る80年代HMのエッセンスを結集したような音と断言してしまってかまいません。つまり、

Judas Priestの威厳と重厚さ
Iron Maidenの構成力とドラマ性
Slayer やかってのSepulturaばりの突進力とアグレッション
絶頂期のQueensrhycheに通じるコンセプチュアルで深遠な世界観

を兼ね備えたサウンドです。さすがに一つ一つのエレメントではそれを本分とするバンドに見劣りしますが、各々が最高のバランスで結合しているため、トータルで圧倒的な完成度が生れています。極端に細分化が進み、デスやメロスピ、シンフォメタルなど本来のHMの部分的要素だけを特化させたようなスタイルがもてはやされる中にあって、このバンドのようにオールマイティな音をだせるバンドは本当に貴重です。そしてそのうえで、彼らのオリジナリティといえる

荘厳にしてキャッチーなクワイアと、激しさと気高さを兼ね備えた「歪んだ美声」のVo
独特の滑らかな音色で奏でられる、流麗にして構築美あふれるギターオーケストレーション
ケルティック・ミュージックや中世音楽の要素に加え、クラシックやゲームミュージックの影響を感じさせる、他に類を見ない独創的なメロディとハーモニー
と融合させたもの、といえばまず間違いないでしょう。曲の構造的な部分に関してだいたい伝統的HMのスタイルを踏襲している(単純ではないがそんなに複雑でもない)のですが、メロディやハーモニーやコードなど音の響きをに関わる部分がきわめて独創的なので結果的に非常に個性的な音に聞こえます。

今になってみれば、80年台HMの遺産を最も純粋な形で受け継ぎ、それを究極まで発展させたのは結局このバンドのこのアルバムだったような気がします。ある意味この音は「メロディ・ドラマ・攻撃性」の三要素の融合を追及する伝統的なHMスタイルの最終発展形といってよく、その最高の成果であると同時に最後の一ページを飾る作品と言い切ってしまってよいと思います。本作のリリースからすでに十年以上経ちますが、私が聴いたかぎり同路線でこれを超える作品はいまだ現れていないようです(そんなにメタルばっかり聴いているわけではないので断言できませんが)。確かにこれ以上同じ方向を追求しても、よくて同一レベルのものの再生産、悪くなると「奇形化」や「パロディ」になってしまいます。
当のブラガ自身、次作以降からプログレッシヴ・ドラマティック路線に転じるわけですが、これは単に同じことを繰り返したくなかったというだけではなく、今作までで正統派メタルの枠内でやれることはすべてやり尽してしまったという感覚があったからだとも思えます。
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