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Heartwork / CARCASS
mokusatu ★★ (2006-11-29 03:04:00)
「迫力」「暴力」といった要素で聴かせる音でなく、どちらかと言えば繊細かつ病的なデス・メタルであると思います。曲構成は「突進」「騒乱」といった感覚は排除、ミドルテンポの導入などにより落ち着いており、メタリックで整然と構築されてます(様式に則っていると言えばいいのか)。
Bill Steer(G.)のリフは前作から格段に進歩していると思います。音の運び方がいちいち分かりにくく盛り上がらない、グラインド・コアやりすぎて気が触れたようなリフばかりで、これが非常に繊細で醜く、気高い。私はこのリフの音を追うのが死ぬほど好きでして、濁流の蠢きのような③「NO LOVE LOST」、疾走する旋律が押しなべて病的な⑦「ARBEIT MACHT FLEISCH」、複雑な構成が絶望の帝王のような貫禄しか醸し出さない⑧「BLIND BLEEDING THE BLIND」(何故ここまで盛り上がりませんか)は個人的大名曲ですが、これが土台です。
対してMichael Amott(G.)は、前作収録「INCARNATED SOLVENT ABUSE」でも発揮されたとても掴み易い疾走感+旋律の美しさを大幅に盛り込んでおり、おそらく④「HEARTWORK」⑥「THIS MORTAL COIL」に強くある、言葉に変え難い高揚感を持つ流血と疾走のツイン・リード・パートは、この人によってもたらされたのではないかと私は考えてます。
この2人の対比です。そういうヨーロピアン・デス・メタルです。ゴアを通過しないと出来ない稀有な(そして歴史的な)アルバムだという事を、なによりKen Owenのもたり気味ドラムが語っている気がします。このドラムがスラッシュ/デス的なビートを「上手く叩けなかった」事は、奇跡的に重要である気が脳にまどろんでますが、どうでしょう。

誰の琴線にも触れようとしなかったバンドのこのアルバムの日本盤帯文句は「あなたの琴線に触れる」で御座いましたね。93年発表4thアルバム。

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