この曲を聴け!
Killers / IRON MAIDEN
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-03-11 19:51:00)
上に書いたことの補足になりますが。
1stと2ndの楽曲は、レコーディングに際して新しく書かれた曲ではなく、バンドの結成当初からレコードデヴューまでの間に書かれ、数年に渡ってすでにライヴで演奏されていた曲を収録したそうです(例外的に、Murder in the Rue Morgueは2ndリリースに際して書かれた新曲だそうです)。
これは私の推測ですが、どうもハリス先生は1stの時には自信作というか、これからのIron Maidenの方向性に合ったベストと思われる曲を入れ、残りのクズ曲……、いえいえ、微妙に方向性のずれる曲をこちらに回したのではないのでしょうか?
実際、1980年の2月、すなわち1stの発売の二ヶ月前にリリースされたコンピレーションアルバムにWrathchildが提供されています。またPurgatoryに至っては76年ころに書かれた曲で、デビュー当時すでに、「昔の」曲ということでライヴのレパートリーから外されていたそうです。(このあたりの詳細はiron maiden commentaryという海外の有名なファンサイトに詳しく載っています。またここは、各曲の背景や元ネタとなった映画や文学についてくわしく振れられており、たいへん勉強になります。興味のある方はどうぞ行って見てください。)
つまり、これらの曲を1stに収録することが可能だったわけで、出来から見て収録されて当然の曲をあえて外したのは、これらがハリス先生の考える「これがIron Maidenだ!」というヴィジョンから少しズレたところにあったからではないのでしょうか。そう考えるとWrathchildやInnocent Exile、Drifterのようなタイプの曲がその後消失した理由もわかりやすくなります。つまり今作はIron Meiden誕生前夜、いくつかあった彼らの音楽的発展の可能性のなかで、後に捨て去られた部分を保存している作品というわけです。
というわけで、ブルース加入後の3rdが今日に続くIron Meidenの実質的なデビュー作であり、1stはそこへつながる彼らの原点だとすると、この2ndはさらに原点以前という位置づけがふさわしく、新旧さまざまな音楽的エレメントが混在するカオティックな作風といえるでしょう。若き日のバンド(というよりスティーヴ・ハリス)の自らのスタイルを確立するための試行錯誤の足跡がうかがえるという資料的な側面からすれば、たいへん興味深い作品といえるかもしれません。
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