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V / VOW WOW

こねこ王子 ★★ (2007-12-28 03:05:00)
「V」(1987年9月5日発表)
脱退した佐野賢二の後任ベーシストに、誰もが驚いた世界のトップ・プレイヤー、N・マーレイを迎え、制作された4作目。「DON'T LEAVE ME NOW」では、元KING CRIMSON、ROXY MUSIC、U.K.、ASIAと名だたるバンドを渡り歩いてきたJ・ウエットンがプロデュースと作詞、コーラスを手掛けている。(ベースも弾いたという話も聞いたように思うが実際は不明)
ファンの間でも評価の高いアルバムで「Ⅲ」と双璧の人気を誇る。この2作の違いを簡単に言うならば「ヘヴィ・メタル」サイドの最高傑作が「Ⅲ」、「ハード・ロック」サイドの最高傑作が「V」ということだろう。音像からして、ハイがきつくメタリックな「Ⅲ」、ウエットで深いエコーが掛った「V」と、両者は全く異なる印象を与える。「V」は文字通り「正統派ブリティッシュ・ハード・ロック」と呼ぶに相応しい。(もう少し派手な装飾がされれば「1987WHITESNAKE」に近くなるような感じもする)
客観的に楽曲の水準を比較すれば、間違い無く「Ⅲ」のほうが上だと思う。しかし、若干、散漫な印象を与える「Ⅲ」に対して、「V」は各曲が絶妙に配置されたコンセプト・アルバムという感覚に近いのではないだろうか。「V」の重厚感や質感、圧倒的な量感はVOW WOWというバンドの素晴らしさの一面を鮮やかに切り取っていると言えるだろう。
新見の重量感のあるドラムから始まるヘヴィな「DON'T TELL ME LIES」から、不当に過少評価されている名曲「SOMEWHERE IN THE NIGHT」に続く。この曲での人見元基の歌唱は凄まじい迫力を誇り、曲の終盤での転調は正に鳥肌物。(その感覚はライヴで生に聴いた時のほうが凄かった)続く「THE GIRL IN RED」は彼らのキャッチーな側面を表した佳曲なのだがサビの練り込みが少し足りないと感じる。「BREAK OUT」は捨て曲だが、この位置には必要だろう。「CRY NO MORE」も「ありがち」な曲。「SAME TOWN」も面白い曲だが、サビの無理矢理なコーラスに違和感を感じなくもない。「BORN TO DIE」も楽曲自体は並レベルだが、人見の歌唱と山本恭司のギター(当時、厚見がインタビューで「僕が聴いてきた中で、恭司君の最高のギター・ソロ」と語っていた)で聴かせる。「WAITED FOR A LIFETIME」は正にロック・シンフォニー。山本のソロ「ELECTRIC CINEMA」の世界観を彼ららしく再現している。そして名曲「DON'T LEAVE ME NOW」が炸裂し、人見の神憑り的なシャウトに深い感動を味わっている内に、これまたVOW WOWらしい何とも微妙な「WAR MAN」でアルバムは幕を閉じる。
このように各曲を個別に分析すると、捨て曲や微妙な曲が多いのは事実だが、(あくまでVOW WOWとして)「V」というパッケージになり、アルバムを通して聴くと全く印象が異なってくるから不思議である。其々の曲が相乗効果をもたらし、当時、音楽雑誌等で彼らを形容する時に頻繁に使われた「独特の雰囲気に包まれ、マジックに掛ったような」気分になるのである。
VOW WOWが、名実共に「世界水準」に到達した記念碑的作品であり、日本ロック史上の数多有る作品の中でも突出した完成度を誇る最高傑作と言える。