この曲を聴け! 

Paradise Theatre / STYX
火薬バカ一代 ★★★ (2010-11-16 21:59:58)
AOR/産業ロックに基盤を置きつつも、ロックンロールにブルーズ、プログレ、ニュー・ウェーヴからポップス、果てはレゲエに至るまで、多様なサウンドを絶妙なセンスで組み合わせ作り上げられた、'81年発表の記念すべき10thアルバム。
流石、300万枚以上を売り上げ、全米チャート№1の座とトリプル・プラチナム・ディスクを獲得する等、自他・名実共に認めるSTYXの代表作だけあって、ポップでキャッチーでスウィートなメロディ、明るくともどこかセンチメンタルな雰囲気に包まれた楽曲の数々、アメリカのミュージック・シーンの移り変わりを、シカゴに実在した劇場「パラダイス・シアター」の栄枯盛衰に重ねて綴るドラマティックなコンセプト、まるで優れたミュージカルを見ているかのような、流麗にしてダイナミックな本編の構成、そしてゴージャスで洗練されたアレンジとが高いレベルでまとめ上げられた本作は、これまでSTYXの辿ってきた音楽的変遷(とその成果)の集大成とでも言うべき内容を誇っており、完成度の高さは無類。
ズバ抜けた超名曲の類こそ見当たらないものの、それはトータル(流れ)で勝負する作風ゆえだし、また華々しい②、叙情バラード⑤、重厚且つブルージーな⑨、劇的にエンディングを飾る⑪辺りは、そこらのバンドが逆立ちしたって書けない名曲なわけですが。
前作『CORNERSTONE』以上に大胆に取り入れられたホーン・セクションや、HR/HMとは距離を感じさせるモダン(当時)なアレンジは好悪が分かれるところなれど、ともあれ、メロディ愛好家なら聴かずに済ます手はない、AOR/産業ロック史に燦然と輝く名盤の一つですよ。

→同意