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SPIRITO DI PIETRA / DEADMAN
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2011-12-01 21:52:21)
2011年発表の1st。
まずオープニングの、アルペジオが浮遊感を演出し、そこにサブリミナル効果がありそうなキーや、脳内を無数のミクロの虫か這い回るようなノイズ、打ち込みのリズムが絡み奇妙な世界観を演出する、凝ったインストからしてかなり期待感は高まりますが…本編の方もちょっとアヴァンギャルド入った、個性派なブラックを展開してますね。
基本は多少ミニマルな部分もありつつ、パーツ自体は典型的なブラックメタルなんですが…出音にしろ展開にしろ、少しずつ変わってるのが特徴。まずドラムの音が結構個性的で、ILDJARNの一部の作品で聴けるようなスチスチドラムに近い、奇妙に抜けの良い音。この音がインダストリアルっぽい雰囲気を加味していて、ギターリフの閉塞感のある歪みとミスマッチな様でいて意外に合ってるんですよね。
ブラックらしくトレモロリフの含有率も割と高めなんですが、他のバンドのように寒々しさや邪悪さ、儚さなどにはあまり向かわず、メロディに洗脳的な雰囲気があるのが独特。ヴォーカルの歯の隙間から憎しみが漏れ出してるような叫びと、語りかけるようなガナリを使い分けるサイコ入ったパフォーマンスも相俟って、更に洗脳めいたムードが高まってます。
また、時折殺伐とした平坦リフの下でベースを生温かく蠢かせたり、人の悲鳴をサンプリングしたような、奇妙な音色のキーを入れたシンフォパートを導入してみせたり、ブラックとしては非定型的なアプローチも随処で見られますが…ポストブラック要素を入れ過ぎてブラック本来の攻撃性を失わないのが良いですね。特にラストの曲、曲の途中でなにか霊的な存在と交信するようなパートが出てくるのが面白い。そのパートのムードが濃いせいで、ポストブラックにありがちな「薄れた」感は全くないですし。
欲を言うなら、イントロであれだけ濃厚に打ち込みを用いて妖しい雰囲気を演出できてるのだから、それを本編にも取り込んで欲しかったところ。ラスト曲の濃さを思えば、このバンドならブラックの攻撃性やカルトさを薄めることなく、それが出来るように思うんですよね。
→同意