この曲を聴け! 

Hoagascht / LUNAR AURORA
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2012-04-26 20:31:20)
2012年発表の9th。

…なんかもう、こうして彼らの新作が手元にあるというだけで嬉し過ぎてちょっと泣きそうです(笑)。個人的に神格化するレベルだった前作「Andacht」リリース後、活動休止が伝えられ、新作はもう出してくれないのかと半ば諦めかけてましたが…FUNERAL MISTの時といい、希望は持ってみるものですね。5年近い空白を経はしましたが、遂に新アルバムを発表してくれました。

何気にこのバンド、空間演出に非常に長けたシンフォニックブラックという根幹は残しつつ、作品ごとにスタイルを変える傾向がありますが、今作も前作から引き継いだ部分と、変わった部分が分かれる感じですね。ブラックの中でも頭一つ抜けた神秘性を感じさせる魔性のトレモロ、情景どころか聴き手の魂までも黒く塗り潰さんとする重厚なリフ、アンビエント要素を交えた情景描写、威厳を感じさせるドイツ語での表現力に満ちたがなりなどは、前作と共通する部分ですね。

また、変わった点としては、前作では物理的な圧迫感すら感じたリフの重さは少し控えめになり(と言っても十分過ぎるくらい厚みはある)、代わりにドラムのそれぞれの音やヴォーカルの位置などにも気を配った、よりアンビエンス重視になった音像、時々サイケデリックな禍々しさを演出するギターやキーボードのフレーズ、スロー・ミドルパート多めになり、全体的に抑え目になったテンポ設定等が挙げられますね。

印象としては、より情景描写的になった感じですが、これが前作から引き継いだ要素としっかり合っていて、前作に匹敵するくらい素晴らしい仕上がり。ジャケットにはフクロウが描かれてますが、一般的なブラックメタルバンドが聴き手に夜の情景を想起させる…くらいだとすると、この作品は精神が闇夜を飛翔する猛禽のそれに変貌していく錯覚を覚えるくらいに、非常に描写力に優れたものになってると思う。この描写力の高さは、イラストレーター/グラフィックデザイナーも務める中心人物、Aran氏の感性に拠る所が大きいのかもしれません。

前作が余りにも素晴らしかったので、相当の期待を持って聴きましたが、それを裏切らない、本当に良いアルバムだと思う。前作の「Andacht」とこの作品は、シンフォニックブラックに於ける一つの到達点足りえるのではないか…そんなことすら思ってしまいました。ブラックメタルが好きであろうとなかろうと、これは是非聴いておいてほしい作品。カルトな支持を得るに留まるには余りにも勿体なさ過ぎるバンドです。

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