この曲を聴け! 

Fireworks / ANGRA
ギターの国から2002.遺言 ★★ (2004-07-02 02:11:00)
個人的にはこのアルバム、SHAMANの1stを聴くまでは評価はそこまで良くはなかった。しかしSHAMANの1stを聴いてやっと彼らがこのアルバムで表現したかったことが分かってきた。ゴリゴリの典型的なスピードメタルではなく、彼らが影響を受けた音楽の全てをファクターとした博学多彩な音を作り上げようとしている点がこの2つのアルバムには共通していると思う。
一方キコやラファエルの書いた曲は直球で流麗なギタープレイをフィーチャーした、それまでのANGRA路線を貫いたものが多い事がこのアルバムで主張したい事柄を曖昧にしている。
それとやっぱり1曲目のインパクトが前作・前々作に比べて弱い気がする。しかし一曲一曲を曲単位で聴いてみるとやはりいい曲は存在する。
中でも「Lisbon」は掛け値なしの名曲だと僕は思っている。
実は僕は大学のときに無銭旅行でリスボンに行ったことがあるので余計にこの曲に対する思い入れが強いのです。大西洋に面した魚臭い港町。7つの丘に囲まれ、坂道と狭い道が迷路のように入り組んだ町並みは一人旅をする僕をとても感傷的な気分にさせてくれた。この町に住んでいる人たちも隣の国のスペインと比べて見ると元気がなく、まるでかつて大航海時代に世界の大海原を勇往邁進に駆け抜けた頃の幻影を、今も夢の中で追い続けている老人のような街だった。
そんな街の急勾配な坂を歩いている時に道端で楽団風のおじさん達が演奏していたのがファドだった。なんとも言えない哀愁の旋律に胸の中が熱くなってなんだか目が潤んだのを覚えている。しばらく彼らの演奏をそこで聴いていたが、これ以上聴いていると涙が止まらなくなりそうだったので、しばらく聴いてその場を後にした。
そんな思い出がこの曲を聴いていると今でも胸に込み上げてきます。
個人的な体験談をうだうだ語ってしましましたが、このアルバムでこのバンドに音楽的な確執が生まれたのはここに収められた楽曲の一つ一つが語っている。
今思えばANGRAはこの時点で分裂して然るべき状況にあり、むしろ分裂して正解だったと思う。それはその後のバンドの復活劇と充実度が物語っている。もしあのまま解散しないでもう一枚アルバムでも作っていたなら・・・おそらくANGRA史上唯一の駄作として歴史に泥を塗ることになったのかもしれない。

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