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Das Seelenbrechen / IHSAHN
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2013-10-18 00:52:07)
2013年発表の5th。
アナウンスでは10月21日に発売になってましたが、何故か店頭に並んでいたので速攻で購入しました。アルバムタイトルの意味は「魂の破壊」もしくは「精神の崩壊」などになるのでしょうか。何れにしても、タイトル通りの作品だと思います。

…これは、今までのIhsahnが演ってきた音楽、それを総括する作品と言えるのではないでしょうか…。EMPERORの4thに始まり、4枚のソロアルバムで演ってきたプログレッシブでインテリジェントなエクストリームメタル路線と、PECCATUMが活動停止間際に辿り着いた美しく深遠でダークなアヴァンギャルド・ゴシック・ロック路線を合わせ、高めたかのような作風。

アルバム前半は、後期PECCATUMに通じる深遠で情景的なフレーズを垣間見せたり、より前衛的な色を増してはいるものの、概ね前作までの延長線上にあるエクストリームメタル路線ですが…不安を煽り立てるようなドラムにドローンめいた音、Ihsahnの哲学者が苦悩の余り発狂したような絶叫が絡み、光の差さないどころか光を吸収するような闇を演出する「tacit 2」から、急激にアンビエント・アヴァンギャルドな色を濃くしていくという構成になってますね。

アルバム前半に対する感想は「素晴らしい」なんですが、後半は良くも悪くも「凄まじい」という感じですね。今までのIhsahnからすると信じられないほどメロディ志向が薄く、代わりに音像・情景・実験性が濃い音で、時にはメタルの様式すら放棄しているくらいなんですが、その分神秘性は異様なまでに高く、暗黒空間の空虚さを実体的なものとして体験出来てしまうかのよう。…人に畏怖を与える音、という意味では、EMPERORの初期作品以上かもしれません。メタルとしてのポピュラリティは正直高くないと思いますが、そうまでして暗黒な音を追求しているIhsahnは本当に尊敬しますね…。

ちなみにデジパック盤ボーナストラック「entropie」「hel」は後半の流れを汲むアンビエント作品なんですが、これら曲のタイトルと音像は本当に秀逸だと思う。如何にも恐ろしげな音ではなくて、人の体温の感じられないような、幾何的な音とも言える感じですが…アルバムタイトルとも合わせて、壊れた魂の、人間としての知覚や意識を完全に失い、数学的法則の一部になった末路…みたいな印象があって、心が冷えるような怖さを感じてしまいます。Ihsahnらしい意味深さだと思う。

メタル作品としては、アンビエンス重視な部分にくどさを全く感じないと言えば嘘になりますが、それによって感情を揺さぶられたのもまた事実。Ihsahnって、エゼキエルやスウェーデンボルグ、ブレイクらと同じくらい「見える人」なんじゃないでしょうか…。この作品を聴いて、そんな事を思いました(笑)。

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