この曲を聴け! 

No Morrow Shall Dawn / THY LIGHT
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2014-10-04 00:54:44)
2013年発表の1st。

Pest Productions発、ブラジル産の鬱ブラックというプロフィール、そして一曲目のピアノメインのインスト「Suici.De.Spair」の、まるで自分の人生が勝手に美しい物語に置き換えられて完結させられるかの如き、致命的なまでにメロウな雰囲気から本編にも期待したんですが…期待以上なんですが、この作品。この手って掴みのインストが一番ムードがあったりする残念なことが少なくないですが、この作品は最初にここまで期待値を上げておいて、それ以上のものを提供してくれるという真逆のことをやっていて素晴らしいです。

鬱ブラックやシューゲイザーブラックって、全体の雰囲気や溢れ出る感情を聴かせるものも多いですが、このバンドは楽曲やフレーズで聴かそうという志向が非常に強いのが特徴ですね。例えば、2曲目「Wanderer of Solitude」は2本のアコギが可憐に絡むイントロから、ドゥーミーに引き摺るリフに、人々が黄昏の海に還っていく情景を思わせる、人類自体のエンディングテーマのような終末的メロウさを感じさせるメロディが乗る、儚く物悲しくもどこか破滅めいた雰囲気の本編へと展開する楽曲。

続く3曲目「No Morrow Shall Dawn」は特徴的なリズムと、連動する厚みのあるギターリフで聴き手を催眠状態に陥らせた上で、アンビエントなパートを経て魂を引き込むかのようなトレモロが渦巻く後半部で止めを刺す構成が非常にドラマティック。ラストの「The Bridge」は、アトモスフェリックな中にギターノイズが異物感を醸し出す導入部から何かを予感させますが、本編も精神が現世を少しずつ離れていくような雰囲気の中でメロウなメロディが応酬される、締めに相応しい雰囲気の曲。

…とこんな風に、どの曲を聴いても何かしら情景が浮かんできて、それに引き込まれてしまうんですよね。キーボードやギターの音色選び、儚く繊細で聴き手の印象に残るようなメロディなど、この手としても非常にセンスの高い作品だと思うんですよね。繊細なのに全体を通じて厭世的というか、現世を離れたがっているような浮世離れしたムードがあったり、ヴォーカルの叫びのロングトーンがかなり悲痛な響きだったりして、決して甘い作品とは言えないのも良いです。これは鬱系の中でもお勧めの逸品ですね。

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