この曲を聴け! 

月光のスティグマ / 中山七里
Usher-to-the-ETHER(2014-12-25 11:24:41)
今週の頭に発表された新刊。

ここ最近、「アポロンの嘲笑」「テミスの剣」と立て続けにリリースが続いてますが…もしかして最近不調なんでしょうか。あらすじ自体は、主人公に特別な好意を抱くミステリアスな双子姉妹(ヒロイン)、災害による姉妹の片割れの死と別離、災害前日に殺害された主人公の兄、時を経て全く違う立場で再開する主人公とヒロイン…と、エンターテイメントとしてのお膳立てがバッチリ整ってる感じで、如何にも面白そうなのですが…。

読後の印象としては、災害の描写や、主人公が調査に苦慮する描写を読んでいるうちに、いつのまにか話が終わってしまった感じで、いまひとつ話に没頭出来なかったんですよね…。クライマックスのシーンも脇役キャラの殺害の描写が、緊張感を生んでいるというよりはただただ胸糞が悪くなる感じで、カタルシスが余り感じられないし…。「岬洋介シリーズ」「御子柴シリーズ」「静おばあちゃん」での、ページを捲る手が止まらなくなるような、飛翔感さえ感じるような読み味は、一体何処へ行ってしまったのでしょう。

「アポロンの嘲笑」での原発批判、「テミスの剣」での冤罪批判の余りにもくどい描写が、こういったエンタメ作品にまで侵食してしまったような印象があります。もしかしたら作者自身は、ただのエンタメでなく、批評精神を伴った「考えさせられる」「読み応えのある」作品を作りたいという意図で、わざと読み味を変えてるのかもしれませんが…。以前の作品の読み味が好きでそれを期待して買い続けてる人としては、この方向性はとても歓迎できるものではないですね…。

→同意