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Paracletus / DEATHSPELL OMEGA
netal ★★★ (2015-01-24 22:24:33)
三部作の最終作。アルバムタイトルはギリシャ語で「聖霊」の意とのこと。

10曲43分という短さは意外であるが、曲間が繋がっていたり歌詞カードの歌詞が歌っている順になっていなかったりと、
アルバム1枚で一つの作品として聴かせる意図が感じられ、そういう意味では確かに大作志向とも言える。
内容に関しては、4thで見せた予測困難なリズム&リフワークを継承しつつ、『Kénôse』の人の理性を犯すような背徳性と混沌とを上手くミックスしたものとなっていて、
歌詞にもあるが、神格を帯びた存在が破滅の存在に変わっていくような不条理がアルバム全体から迸っている。
曲展開の唐突さが僅かに残ってしまったのは残念であるが、
前作で不満の素であった静パートの多さは改善され、『Kénôse』のような神秘性の発露に回帰したのは個人的に嬉しいところである。

やはりと言うべきか、今作も歌詞は難解。大意は、
「信者達は、救済を求めて聖霊を呼ぶ(①)。
しかし、地に堕ち苦しむ聖霊は人々を守護する事ができず、人々は恐怖に怯え続ける(②)。
地に堕ちたと言えど、聖霊の神格は不変で、苦痛を抱き叛逆を決した聖霊が破滅を齎す(③)ので、再び人々は救済を祈り、神格は分裂しようとする(④)。
かくして人々は真実を語らぬ神により錯覚を起こし、信仰を持ち救済を望む者と荒廃の中に生き続ける者とに分かれていく(⑤)。
信者達による再びの救済を求めて呼ばれた(⑥)聖霊は、神格を持ちながら、荒廃を望む者となっていた(⑦)。
その最中で荒廃を強いられた者の心には世界の破綻の火種が燻っていく(⑧)。
遂には荒廃に耐えられぬ者達の叛逆により神の秩序は崩壊する(⑨)。
結局、世界から信仰を持つ者がいなくなり、世界は神にとっての『地獄』となるのであった(⑩)。」
『Kénôse』で言及された神性放棄と深い関連がありそう。

三部作のフィナーレとして相応しいアルバム。
内容も歌詞もマンネリに全く陥る事無く、かつクオリティを保ったまま三部作を完結させた彼らの凄みを余すことなく味わえる作品である。

気に入り度…93/100

おすすめ…Abscission

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