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Destiny / SAXON
火薬バカ一代 ★★★ (2015-04-30 23:58:21)
80年代後半に発表されたSAXONのアルバムは、どれもNWOBHM終焉後のイギリスで試行錯誤を重ねたバンドの苦闘の跡がクッキリと刻まれていますが、この'88年発表の10thもまさしくそんな感じ。
ただ本作は、クリストファー・クロスのカヴァー曲①や、煌びやかでキャッチーな③、SAXON版“JUMP”と評したくなる⑧といった、あからさまにヒット狙いの楽曲が「らしくない」と議論を呼ぶ一方、そうした楽曲がダイハードなSAXONファンすら説伏する確かなクオリティを有していた為、「困惑しつつも愛さずにはいられない」という、SAXONのカタログの中でもかなり特異な立ち位置を獲得することに成功した1枚であり、彼らのアルバム全てを揃えてるわけじゃなく、気に入った作品のみを摘み食い的に購入しているような自分にとっちゃ、名曲の宝庫であります。
憂いを帯びた⑤はSAXONの新たな魅力が発現したアルバムのハイライト・ナンバーですし、ポップ/ポッパー/ポッペストとか言いながらも、実はB面サイドは、“ジェリコのラッパ”のタイトルに相応しいスツーカの急降下爆撃を思わす⑨を筆頭に、G主導で駆け抜けるヘヴィ・メタリックな楽曲がズラリ。何よりも、それらを硬軟自在に歌いこなすビフ・バイフォードのシンガーとしての熟達振りに耳奪われずにはいられませんて。
全体的に洗練を感じさせる仕上がりであり、「バイカーズ・ロックの面影は遠くへ去りにけり」ではありますが、英国産正統派メタル好きなら聴いて損なし/捨て曲なしの名盤。遂に国内盤の再発も掛かりましたので、是非に。
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