この曲を聴け! 

Starless and Bible Black / KING CRIMSON
yzm ★★ (2007-01-31 03:26:00)
たとえば、男が一人、身動き一つせず、無言で椅子に腰掛けているとする。この一般的には退屈としか言いようがない情景に惹きつけられ、いつまでも見飽きない場面に出会うことが現実に一つある。椅子にすわっているその男が、処刑が目前に迫った死刑囚だとしたら。死という瞬間の興味を惹かれることも確かだが、刑の執行を待ち受けている囚人の沈黙の凄さにすべてが賭けられており、その場面から多くの出来事を語っているように見える。キングクリムゾンの音楽を聴くたびに、その死刑囚の姿を見ているような気がしてならない。
上記は、このアルバムの広瀬陽一氏のライナーから抜粋したものだが、正に言い得て妙である。
僕が初めてキングクリムゾンに接したのは「宮殿」からであり、この頃から、彼らの音楽を聴いて感じていたのは、終わりのない苦悩や苦痛、絶望の底からジワジワと湧き出てくるような憤怒のような情念でした。ここから絶望の底を這いずり回り、たどり着いたのは星一つ見えない暗黒の世界であり、最後には発狂。精神的な傷をひたすらえぐり続けられているような感覚を聴き手に強制するかのような音楽性は、このバンドにしか出せないものだと思っています。人間の闇を表現手段とする音楽は数あれど、自分の内面の感情にリアルに訴えかけてくるのは、自分にとってキングクリムゾンだけなのです。また、この絶望的な感覚が妙に心地よくて仕方ないのも事実なのです。
このアルバムだけでなく、「太陽と戦慄」、「レッド」も超オススメです。
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