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Metallica / METALLICA
失恋船長 ★★ (2017-01-04 19:36:30)
時代は1991年、シアトル勢に呼応するようにメタリカが普遍的スタイルへと回帰する歴史の潮目となった通称ブラックアルバム。スラッシュメタルの帝王として、また、その高潔なメタルに対する姿勢と清い音楽性で上り詰めていた彼らがシーンに放ったのは、16分で刻む高速なコード進行で突っ込んでくる、スピーディーなナンバーと完全に決別。その代わりヘヴィなリズムを際立たせたグルーブを強調、そして今まで以上にジェイムズの歌への比重も大きくなり、彼のシンガーとしての成長がなければ今作の成功も無かったでしょう、④⑧などその魅力が顕著に表れています。表現力も増し力強く歌い込めるパフォーマンスと、それを生かしたキャッチーな歌メロ、そしてスピードに重点を置かなくとも、重心低く突破してくるヘヴィグルーブの強靭な響きに新たなる可能性と方向性を示唆、まさに歴史の転換点を迎える一枚として世に放たれました。
リリース時、10代だったワタクシには、走らないメタリカなど受け入れられず、今もって今作以降は別のバンドとして捉えています。本当に名前で音源に触れるととんでもない目に合う事を心底味わいましたね。
メタリカの魅力と言えば、スピーディーなスラッシュナンバーだが、それよりも独特のスリルと伴った場面展開、けっしてテクニカルなバンドとは言い難いが、彼ら特有のガタビシ音を立てて急降下する旧式のジェットコースターのような一寸先の危険を保証しないスリルが最大の持ち味だった。そのスピードとスリルが混然一体となり突っ込んでくる様に彼ら流の様式があり、それらが最大の魅力だった。ラーズのスパスパスパパーンってドラミングも無いしね。

しかし今作リリースはメタルバブルの終焉を告げるのに相応しい作品である事に異論は全くない。バンド結成時、彼らのようなバンドが立てるステージはなく、ガレージを借り上半身裸でLIVEを敢行、派手な衣装も、煌びやかな照明も無い、まさにパンクな精神性が結実したようなピュアメタルバンドだった。自らの手で時代を切り開き、そして導き出したリアルな応えが普遍的ロックサウンドへの回帰だったと言う事でしょう。クリフ・バートンが存命だったら、今作はどのような方向になったのかと考えると複雑な思いが頭をもたげるが、多くのフォロワーを常に生みだしシーンの先頭へと自力で駆け上がった彼らの成功は子供だったワタクシにはエポックメイキングな出来事として深く刻まれました。

今作の持つ歴史的価値と意義の大きさは頭では分かっているが心がついていかない。

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