この曲を聴け! 

マグマ / 稲葉浩志

名無し ★★★ (2017-01-07 23:38:39)
まずサウンドに関してはB'zに比べるとだいぶドライで雑味のある音像なので、B'zから聴き始めた人には衝撃が強いのでは。
ジャンルも相当多彩で、ジャズ、ボサノヴァ、ブルース、ドリームポップ的な楽曲までも登場する。ギターヒーローがいないことによりギターが全面に出て来ない曲も多い。ロックナンバーにしても音作りやプレイにはラフな雰囲気が漂い、この音楽性はやがて「Singing Bird」以降のライブバンドにより熟成されてゆく。
プライベートも折り込んだ内から沸き立つ詞世界は時に陰鬱に、時に稲葉浩志なりの情熱を持って響いてくる。暗い暗いダークだと言われがちだが、実際には「這い上がる」ようなニュアンスの歌詞も多く、さながら地底から地上に向けて噴出するマグマのような熱量を感じさせる。普段元気な人間がさらに頑張ろうとするよりも、落ちたところから這い上がるほうが遥かに膨大なエネルギーを必要とするものだが、そのエネルギーが凝縮されているのだ。
言葉を扱う人間が作る楽曲は、いわゆる作曲家やトラックメイカーなど楽曲製作に特化した人間が作った楽曲に比べ、曲が生まれる時点で歌詞に比重が置かれているためか耳に入ったときの染み方が全然違ってくる。稲葉浩志の世界観を体感するのには最適な作品。
稲葉浩志のソロ作品はアルバム、あるいはシングルであっても作品ごとにまるで毛色が違ったものになる。サウンド面でも別のアーティストかというくらいの差がある。しかし先述したように「Singing Bird」以降のバンドメンバーで確立された現在のソロアーティスト・稲葉浩志の音楽性は、このアルバムが原点であることは間違いない。彼のソロ活動を語る上で絶対的に外してはならないマスト盤。