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Dream Theater / DREAM THEATER
SIGM@TURE(2017-10-16 12:44:45)
 非難轟々だろうと思ってたら意外に高評価多かった。今からめちゃくちゃ酷評するけど、このアルバム好きな人はゴメンナサイ。

 Dream Theaterのセルフタイトルアルバム。内容としては様々な作風に挑戦しており、バラエティに富んでいる。特に、ギターのJohn PetrucciがPeripheryの"Periphery Ⅱ: This Time It's Personal"にゲスト参加した影響か、Djentの影響を受けたトラック(一番分かりやすいのは"The Enemy Inside")が出現した。また、Mike Portnoy在籍時は執拗に繰り返されたリズムチェンジは、かなり回数が抑えられているため、これで楽曲はかなり分かりやすく、ポップにはなっている。

 しかし、流石に見過ごすことが出来ないのは、曲がポップなのに歌メロが印象に残らない点である。何故かは分からないが、James LaBrieの歌がよく聴こえてきて、かつかなり歌自体は上手く、伸び伸びと歌えているはずなのに、全くそれに魅力が感じられない。その点は特に"The Looking Glass"などの明らかにポップな作りの曲で顕著に現れている。

 筆者はどちらかと言えば"Images and Words"はさほど好きではないのだが、やはりポップな雰囲気となるとあの時期と比較してしまうのは仕方ない気がする。何だかんだであの時期のバランス感覚は凄まじいものがあるし。

 テクニック方面に関しては、まずリズムチェンジの減少、そして、ユニゾンパート及び、ギターとキーボードの疑似ツインリードも回数が減り気味。特に、インスト"Enigma Machine"はいやにアッサリしているように思う。明らかにテクニカル方面のインストにも関わらず、だ。これなら、同じインストでも"Hell's Kitchen"や"Eve"のような、しっとりと聴かせるインストが入っていた方が(多少曲順は前後するだろうが)良いだろうし、もし同様の路線でやるとするなら、"Stream of Consciousness"とまでは行かなくとも、もう少しガッツリとしたインストがあった方が良かった。

 そして、その締まらない状態で「バラエティに富んだ」楽曲の数々。正直に言うと、全然まとまっていない。荘厳な感じでスタートするつもりだったと思しき"False Awakening Suite"からしてだいぶチープな感じだし、続く"The Enemy Inside"は曲単体では佳作だが浮いている。"The Looking Glass"はリフはいい感じなのに歌メロが弱いせいでポップソングとしても中途半端で、"Enigma Machine"もボロクソ書いた割には嫌いじゃないが不完全燃焼気味で締まらない。

 "The Bigger Picture"は普通に良曲、だがやはりこちらも歌メロは微妙。"Behind the Veil"は悪くはないが、歌メロが軽快な割りに終始リフが重すぎてヘヴィなのかポップなのかというチグハグ感が凄い。"Surrender to Reason"は、ようやく癒しのバラードか、と思いきやまたヘヴィなリフが出てきて台無し。しかもそのフォローは一切なくやはりヘヴィパートだけ浮いている。次の佳曲"Along for the Ride"一曲だけで良かった。

 そして、個人的に一番ショックだったのは、"Illumination Theory"の不発。何だかんだ言っても、今までのDream Theaterの長尺曲はやはり完成度が高かった。しかし、この曲は個人的に初めての長尺ハズレ曲である。

 別にMike Portnoyに戻って来て欲しい訳でも、セルフタイトルがこれなのが気に食わない訳でもないが、本作は私には受け入れ難かった。「これを良く思わない人は聴き込み不足」って書いてあるレビューを見るが、むしろこれを書くために割りと何度も聴き込んだので、私には合わなかったのだと思う。

 それでもサウンド自体はまぁ、ベテランバンドだけあって良好だし、そう言う意味での完成度は高いのだが、メロディアスサイドのいつものDTを薄めただけという印象なのが残念。

 あと、本作を酷評しているレビューで度々指摘されていたドラムのミックスの悪さだが、私はあまり気にならなかった。Mike Manginiのドラミングが面白くないというのも割りと見たが、前作は良作だと感じたし、次作もそれ程悪くはなかったので、本作が気に食わないのは純粋にソングライティングの問題だろうと思う。
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