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Frontiers / JOURNEY
失恋船長 ★★★ (2017-12-10 15:39:52)
アメリカンロックにおける一つの大きな雛型を形成したバンドといっても過言ではない彼らの代表作とも言える一枚。ジョナサン・ケインの加入によって音楽性をより洗練された高尚な域へと上り詰めた彼ら、長きに渡る経験とテクニックに裏打ちされた演奏力の高さに支えられた、細部にまで拘った音作りなど、単なる売れ線モノのロックバンドとは明らかに一線を画すもので、ワタクシも子供だった時代は、このようなソフトケイスされた音楽を目の敵にしており、インギーばりにジャーニーなんざ、オカマの聴く音楽だと、人権問題に発展するような暴言を吐いたものですが、これが、歳を経て物事の分別がつくようになったら、メチャクチャ心に染みいる音楽と変わり、愛すべきスタイルになるんだから驚きですよ。
本当に10代、20代の時にこのようなサイトがあったら、とんでもない書き込みをして、数年後に切腹ものの羞恥心を味わう事となったでしょう。発言は消せないわな。本当にゾッとします。流石にオジサンになると、2、3年前にアカンと思った作品が、急にカッコいいとブレブレな事にはなりませんが、若い頃はホントもうグッラグラでした。ホントに恥ずかしくて思い出したくもないわ。

そんな個人的に羞恥心を抱えた思い出深いアルバムですが、乾いたアメリカンロックとは違う、どこか切ない哀愁美に満ちたメロディ、重厚なコーラスハーモニーを配したサビの華やかさ、実に聴かせ方の上手いバンドでした。時には感情を剥き出しにしたハードなソロから、タメを効かせた情感たっぷりのフレージング、小技を効かせつつもロックな精神性と強く感じさせる力強いリフワークまで、テクニシャンぶりも巧みにねじ込む二ール・ショーンのギターも素晴らしいが、やはり、天性の才を感じさせるスティーブ。ペリーの歌唱が、このバンドをアメリカンロックの代表格まで押し上げているでしょう。ねっとりと絡みつくエモーショナルな歌声から、良く抜ける高音域の美しさ、甘く鼻にかかったような歌い回しだがスコーンと突き抜けますよね。その余裕綽々ぶりが本当にセクシーでカッコいい。個人的には語尾に掛けるヴィブラートに尋常じゃない上手さを感じますね。本当に素晴らしいシンガーです。多くのフォロワーも生み出したの頷ける存在でしたよ。
初期の頃にあったプログレ路線ではないが、皆が主役と言うバンド形成も、また正しい形だと思うので、彼らの功績は色んな意味でも大きいでしょう。前作『ESCAPE』と同様。メロディ派なら外す事の出来ない一枚ですね。そしてハードさも際立った作品だと思いますよ。

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