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Anderson, Bruford, Wakeman, Howe / YES
Kere ★★ (2008-10-13 10:45:00)
黄金期Yesの音と言われているが、そんなことはない。
黄金期Yesは、ギターが骨格、キーボードがサポートという図式だった。しかし本作では、キーボードの音数が多く、音量も大きい(ギターの音数・音量は相対的に少なく、小さい)。
さらにデジタルシンセの進歩により、音も以前より格段にカラフルに(派手に)なっている。キーボードの華やかな音とその弾き手のウェイクマン氏のフレーズは、ロック畑からみれば軟弱なものに聴こえるかもしれない。
また、ベースのスクワイア氏の音がないのもYesっぽさを薄める要因となっている。
Yes黄金期において、ヴォーカル・ギター・キーボードは「構築」の役割を果たし、ベースが「破壊」の役割を果たしていた。つまり、ベース以外のパートが丹念にフレーズを刻んで世界を構築しながらも、あの暴力的な音で上下に駆け巡るベース音がその世界を叩き壊し、Yesサウンドが生ぬるい調和に落ち着かないよう徹底的にシバキあげていた。だが、本作で聞かれるトニーレヴィン氏のベースは、むしろ構築に資するフレーズジングと音になっている。
本アルバムを70年代Yesだと思って聴いてはならない。そうすれば上記の点が心地よいものとして聴こえてくるはずだ。
個人的には、本作の白眉は、徹底して甘美な雰囲気で、徹底して構築にこだわった「Quartet」だと思っている。本作のこれ以外の曲のなかに見出せる、険しい雰囲気や「破壊」は、結局中途半端に終わっている感が否めない。