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Solid Ball of Rock / SAXON
火薬バカ一代 ★★ (2018-01-10 23:48:31)
湾岸戦争がメタル・バブルに暗い影を落とし、グランジ/オルタナティブ・ロック勢の台頭により、80年代型HR/HMの黄金時代に終止符が打たれた’91年。未だ暗中模索の時期を過ごしていたSAXONはこの10thアルバムを発表しました。
思い切ってメロハー路線にフルスイングした前作『DESTINY』(’89年)は流石にやり過ぎと思ったのか、今回はKeyによる装飾は控えめに、再びGの存在を前面に押し出して、幾分かでも本来のSAXONらしいサウンドへ軌道修正を図ろうとした跡が伺える仕上がり。
但し、こぢんまりとした音作りはあまりメタルっぽくはなく、ハード・ドライヴィンな疾走ナンバーから、BON JOVIばりのポップ・メタル・チューンまで並んだ本編は、バラエティ豊か…と言うよりも、当時のSAXONの「どっちへ向かって進めばいいのやら」という迷いが、そのまんま音に表れてしまっている感がありあり。『DESTINY』が異色の名盤足り得たのは、方向性はどうあれ全力でやり切ったからこそであり、それに比べると本作におけるバンドの姿勢は些か中途半端と言わざるを得ないわけで。
…ってな具合にどうしても苦言が先立つアルバムではありますが(デビュー10周年を記念する作品でもありますし)、それでも実は1曲1曲を取り出してみると然程悪くないんですよ、これが。土煙立ててブッ飛ばす疾走ナンバー②⑥や、英国産メタルらしい湿気ったメロディラインにグッとくる④みたいな楽曲がカッコイイのは当然のこととして、ゴッドに「まるでBON JOVI」と評されたシングル③とかも個人的には悪くない出来だと思う次第。
真っ先にチェックすべき作品でなくとも、見掛けたら押さえておいて損はない1枚ですよ。

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