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Rise To Glory -8118- / LOUDNESS
失恋船長 ★★ (2018-02-03 21:59:40)
レコーディング前から次はワールドワイドなリリースになると噂をされた最新作。それまでもずっと昔のファン心理をくすぐるような原点回帰を促すタイトルやニュースはあったが、蓋を開ければさして回帰をしておらず、いつものラウドネスだったのだが、今回ばかりは、レコード会社もアメリカじゃなくドイツ、ここが一番大きいポイントで、所謂トレンド至上主義のアメリカンマーケット主導ではなく、欧州規模の会社が導いているというのが、ファンにとっては追い風となるニュースでした。その前にリリースされた初期のセルフリメイク作『Samsara Flight ~輪廻飛翔~』での大いなる復調ぶりも、更なる風を吹かせる要因ともなり(各メディアも猛プッシ)、Spiritual Canoe以来やってこなかった発売日にアルバムを購入というミーハー根性を久しぶりに出しました。といってもダウンロード盤なんですけどね。
SEの次から、往年のスタイルを想起させる楽曲とサウンドメイクに驚き、昨今のへヴィネス路線を残しつつも、ナチュラルなトーンも生かした高崎ギターは、魅力的なメロディやリフを奏でる事に専念。彼の中で、どこまで湧き出るインド神を押さえ挑んだのかは分かりませんが、今作は数十年ぶりといっても良いほどメロディックなフレーズを構築する事に着手。
勿論、それは安易な初期への邂逅などではなく、On the Prowlリリース時に明らかにギターへのアプローチを変えた高崎。その後、訪れるパンテラ化で一気に変貌しすぎた為に、語られなくなったが、随分と『On the Prowl』で生まれ変わったモノだ。今作は、その『On the Prowl』次にリリースされたようなスタンダードな作風であり、まさに今を生き抜く正統派HM/HRバンドとしての帰還となった事が最大の聴きどころだろう。
所謂、ここには多くのファンが待ち望みガチなIN THE MIRRORパート2もSDIもCRAZY DOCTORもない。ノリノリのパーティロックもない。それらの派手な即効性の高いナンバーも待ち望んだファンにとっては、肩透かしなのかも知れませんが、そんな昔の看板を担ぎ出さなくとも、日本が世界に誇るへヴィメタルのパイオニアとしての自負がサウンドとなり表れ、今のラウドネスとしての存在感をアピールする事に成功。
勿論、時代性を飲み込んだモダン化やインドサウンドへの傾倒、その型にハマらないフリーフォームな発想とサイケな世界観、今まで積み上げてきた、時代性との折り合いをつけての原点回帰志向へと舵を切れた事が、今作における圧倒的な信頼への基盤となっている。
実質的オープニングの②における往年の魅力を発散したサウンドの旨味。予想外のフェードアウトも印象的なアグレッションだが、乗り易いグルーブとメロディが印象的な③。昔からあるパターンのラウドネス節を堪能できるクラシックな④、二井原実先輩の歌声も映えますね、無理に張り上げないのが逆に好印象です。へヴィな山下のベースも印象的だしアコギの入れ方も素敵なへヴィでメロウなラウドネスらしい魅力に富んだ⑤、複雑な事やごっついへヴィな音像に拘らなくともメロディの良さがイキイキとしてますよね。メロウな⑥など、新機軸的な立ち位置と古典的な色が共存しており、今までの迷い道も全く無駄にしておらず、ここでも二井原実先輩の歌声は実に魅力的です。鈴木のドラミングが映えるアグレッシブな⑦、2000年以降のラウドネスな魅力に包まれていますね。エキゾチックなインストナンバーの⑧、これがあるから今アルバムは無理を感じないんですよね。曲も短めで丁度よく聴かせてくれます。上手いバンドだね。
後半の開始を告げるアッパーな⑨。タッピングから始まるってのも懐かしいね。懐かしい雰囲気と2000年以降の彼らの魅力が上手く結実しており無理を感じないのも好印象。クラシックなへヴィメタルの魅力を内包した、お約束なラウンドネスソングとも言える⑩。メロディックな歌メロが充実感を与えるへヴィなミドルナンバー⑪。ダークなへヴィバラード⑫、ここで聴ける二井原実先輩の歌は、ソウルなフィーリングがギラリと光りを放っていますね。力強くも哀愁漂うへヴィなミドルナンバーの持つ凄みと説得力にゾクゾクとさせられます。
自らが育んだへヴィメタルの象徴ともいえる原点への帰還。しかしそれは安易な着想ではない、浮遊感のあるメロディにインド的フレーズ、それらをスパイスにモダン化も無視することなく、起承転結のハッキリとした構築美に、かつての姿をダブらせ、豊富なアイデアを正統性というスタイルで纏め上げた方向性にまずは安堵します。
そりゃそうよ。急に今まではなかった事で、THUNDER IN THE EASTのパロディみたいなもんやられたらね。
思い起こせば、初期の3枚から激剣霊化の流れや、インド3部作などを除くと、アルバム毎に音楽性が変わっていた彼ら、HM/HRというフィールドの中なのか否かという意見はあれど、実験的なスタイルへの挑戦を捨てずに進んできた高崎晃の信念とは。
その答えは次のアルバムの方向性に委ねられそうですが、ようやく本分とも言えるフィールドへの帰還に、彼らの世界進出の後押しになるような作風だった事が嬉しいですね。
でも10年は前にやって欲しいかったけどさぁ。
→同意