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Firepower / JUDAS PRIEST
失恋船長 ★ (2018-03-16 16:08:41)
動画サイトなどで先行配信されたタイトルトラックの『Firepower』を聴いた時から嫌な予感がしていた。その過去の財産を当てにした作風と、近代的なサウンドメイクによる奥行きのなさ、前作『REDEEMER OF SOULS』の時から、リフワークなどで顕著に感じられる、所謂、英国的な翳りと深みの欠如が相当気になる楽曲だった。『REDEEMER OF SOULS』はアルバム全体が70年代的スタイルに重きを置いていたので、古めかしい作風と近代的シャープな音像のリフと言うのも、新旧のサウンドを両立させたと好意的に受け止める事が個人的には出来たが、今回のような80年代的な、しかもJP自らが作り上げた純度100%のHM/HRサウンドとなると話が別です。その違和感を拭えないサウンドメイクと、過去の流用、その二点と折り合いをつけれるかが最大のポイントだろう。
そういう疑念も持たない方であれば、JPらしいメタルナンバーが揃った名盤として楽しめるでしょうね。ただ、一たび、違和感を覚えたらかなり苦しいでしょうね。ある意味、セルフパロディと揶揄されても仕方のない作風だからです。
これはモダンへヴィネス時代とはわけが違い、自らのフィールドでの出来事だけに、余計に始末がわるい。この路線なら、シャリシャリとした音のギターは違和感がエグイ。そしてセルフパロディ感を強める凡庸なリフワーク、この程度のアイデアは王者たるJPには相応しくないと思えるからです。
個人的には、この手の作風をズッと聴いてきました。世間から何時まで、そんな古いものを聴いていると冷笑された90年代の中期、そして2000年の幕開けと、わき見を振らずに楽しんできました。故に、JPをお手本としたバンドを当たり前に聴き続けていたので、本家がカチアゲのはたき込み相撲では、厳しい一枚と感じずにはいられません。正直、過去のアイデアを盛り込んだ作風はロブ復帰の第一弾でやったので二番煎じ感がハンパないですよ。
かつてシーンを牽引し隆盛を極めた多くのバンドが終焉を迎えつつあります。JPもカウントダウンでしょう。LIVEではクラシックソングのオンパレード、新しいアルバムから3曲程度のセットリストでしょう。それならば、もう少し実験的な音で攻めるのもアーティストとして重要な事のように感じられる。どうか今作がスタジオラスト作にならぬように祈りますね。映画ダイハードシリーズみたいに回を重ねる度に中身が薄くなるようでは困ります。
JPの看板は重いです。それほど、多くのアーティトに影響をもたらし、今なおフォロワーを生み出しています。
グレンの病気による離脱、パーキンソン病ではギターは弾けなくなるでしょう。なんだか寂しい気持ちになるアルバムでした。それだけに昔のフィーリングを生かしつつも、英国的な威厳をたっぷりと見せつけた④は素晴らしい出来栄えだった。抑え気味のドラムもJPサウンドですよ。と辛らつな論調になりましたが、ワタクシが過度の期待を膨らませただけです。
彼らは自ら作り上げたスタイルとアイデアを再提示したのです。重厚なるHM/HRの系譜、それらをすべて受け止め、往年の姿へと無事に帰還を果たしました。前作よりも派手さが増量したのも、この音を待ち望んでいたファンにとっては喜ばしい事でしょう。
多くのファンの気持ちを満たすべく最大公約数の作風に仕上げた王道HM/HRサウンドの前に戯言は無用でしょう。
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